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第58話《アマデウスの章①》—批判者・評論家ではなく発明家・創造者であれ—

Prosperity does not last forever. It will come to an end one of these days.
繁栄は永続的に続くものではない。いつかは終わりを迎えるものである。
Stop clinging to your glory days, or you'll be left behind.
過去の栄光にしがみつくのはやめよ。そうでなければキミは取り残される。

「人間という生き物は同じ民族でありながらも虚栄と傲慢と権力、嫉妬などという大罪をもって自国の民族と争い自分のほうが上だ下だと優劣をつけたがる。アマゾン地区の原住民には過去・現在・未来そして比較級の存在しないコミットを残しているが、そこから学ばぬ人間は焼き尽くしてしまえ」

アマゾン流域に生息する全身ピンク色のイルカに乗りながら地球を偵察する全身純潔表す白の長髪のこの女性は衛星機に探知されぬ人でなく神のものである。顔を隠すためか、西洋で昔使われた蝶々の飾りでおおわれている。

「人という生き物は我々のような神ではないからこそお互い協調しあい、同じ目標に向かって多くの苦難や挫折を乗り越えるべきだ。争ってる暇などない」

ピンクのイルカが美しい女神に応える。
「西洋では大航海時代と呼ばれるものがありましたな。日本という島国では同じ民族であるというのに、平氏と源氏が争い、また征夷大将軍という権威に盲目な愚人どもが戦国時代という戦火で自分自身の首を絞め、そして日本に限らず第二層人間界現在も取るに足らないことでお互い優劣をつけたがることに必死であります」

「優劣をつけ強い弱い、上か下か、そんなものを争っている暇があれば、国境を越え、人種を超え、そして生物や時を超えて《平和》に会話し、新しい未来を開拓する発明家・創造者であれ」

この女神はアマデウスという。今、ネクロファンタジアで破壊神ロキの命令により第一層に密偵に遣隋使や遣唐使ならぬ小人族のルーンが交渉しにくるという光景を、3種類あるうち精霊の魔法の泉にて監視しており、すぐさまこの第二層の人間界のアマゾン流域に隠したとあるものを回収しに自ら第一層の神神の国から虹の道というダクトを通過して付き添いのイルカ【入鹿】と共にとある場所に向かっていた。アマゾン川には観光を楽しんだり自然破壊をする愚人どもにより汚れたゴミの残骸がぷかぷか流れてくる。野生動物はあちらこちらからアマデウスの気配を感じて非難轟轟の嵐である。ちなみにアマゾンはギリシア神話では「男勝りの女」として両性具有の起源である神話に登場する。

「アマデウス!!俺らの産まれ場所や住み家がどんどんなくなっていくではないか!!とっとと破壊の神、人間というものを地獄の豪炎で燃やし尽くし地獄へ送れ!!!」
「そうだそうだ!!」

もはやこの光景は陳腐なる政治の世界の光景と何一つ変わらぬものである。

アマデウスはイルカと細く蛇行するうねうねとした複雑なアマゾン川で人間が入れば猛毒をもつ植物や昆虫で即死させるものものでブロックしており、その聖域に踏み入った人間と思われるものの白骨した遺体が散らばっている。
巨大な花のラフレシアたちがいかがわしい芳香を撒き散らせながらアマデウスに問う。

「ほほほほほほ!!!まぁまぁ!!アマデウス様ったら直々にいらっしゃるとは何故でございましょうか」

ラフレシアの誘惑の言葉には耳も傾けず、アマデウスは『例の祠(れいのほこら)』へとイルカとともにまっすぐ進む。

ケタケタケタケタケタケタ

人間を追い払う野鳥の不気味な鳴き声が鬱蒼とした密林に響き渡る。

「さて」

アマデウスはイルカから飛び降りると茂みに覆い隠された岩に海の神ポセイドンのモチーフである雷の門賞のペンダントを照らすと『ダダ3』の『トリスタン・ツァラ』の「暦(こよみ)」を詠唱する。

花咲く赤い蝋の翼のついた瓶
私の暦がはずみ
無益な改良の天体の薬が
私の中枢神経の
ろうそくの明かりに溶ける
私は事務用品を好むの
たとえば小さな神々を釣りに
色彩と笑劇の恵み
まったく対等の
芳香発散する主題のために
魂と筋肉を励ます道筋に
鉤爪の島

眼の様にのびてゆらめく
痙攣したおまえの指で
炎は抱きしめようと呼び寄せる
お前はそこに毛布のなかにいるのか
正午に商店は店員たちを吐きだし
車輪が彼らを運び去る
路面電車のベルが
力強い文章を切る

風 欲望 不眠が続く地下室
嵐 神殿

そして突然ジャンプする母音
深淵の地点を見つめる視線のなか
来るべき超えるべき理解すべく生きられた
マッチ棒のように
軽やかな人体が呼び寄せる
振動と木々の
秋のあらゆる火災のなか
石油の汗

次にポセイドンの姿になったピンクのイルカはルイ・アラゴンの『文学』で執筆した『明日』を詠唱する。

春があなたに変化をもたらした
奇跡が私の詩節を区切る
突然の光線のなかで
出発の虜となった私の心は
拍子によって不滅のものと消える

セーヌ川は4月の太陽のもとで
はじめての舞踏会でセシルのように踊る
あるいはむしろ塊金を転がす

石の橋あるいはふるいほうへ
確かな魅力 町は谷

カーニバルのように陽気な河岸は
光に立ち向かう
光はその動きあるいは法則によって
あらわれた宮殿を訪れる
私は自分なりにそれを救う

ただひとつ野外学校
シレノスは私に教えなかった
この色彩の陶酔と
今日窓のバラ
オペラ座の娘たちの様に


「人魚の肉を食べると不老不死になるといい我の化身のものを探す愚人どもはみな雷神と海の怒りによって深海に沈めた。今人魚の歌声を響かせるときである」
アマデウスとポセイドンは時計まわりにゴゴゴゴゴゴゴと大きな土砂崩れと地の轟きを産みながら『例の祠』へと人形の島から連れされてきた人魚たちへの場所へと向かうのだった。
カナデの声が大鳥神社を超えて遥か彼方の新潟で孤独と闘う♭の心に『波』を同期させるのだった…

*参考文献『ダダー前衛芸術の誕生』著:マルク・ダシー 監修:藤田治彦 訳:遠藤ゆかり

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