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第56話≪カイ χの章 ⑬≫【scapegoate】~幻夢Ⅳ~ ―《鶍(いすか)の嘴(はし)》この世で最高刑は生きて罪を償っていくこと―
僕は真っ白なシンセサイザーを弾いている。 そして亡き母さんから譲り引き受けた歌声で僕の歌を唄う。 グリッサンド。 音程が決まっている小節、僕は鍵盤という人生の布石という音程を階段を一つずつ着実にstep by stepして次の音程に移行する。 ポルタメント。【Portament】 連続的にアナログ的に繋がった形で周波数変化させて音程を滑らかに移動する機能で、この世界の歪な段差を僕はスロープに変えてバリアフリーにする。 S&H(sample&hold)。 LFOの波形は正確には
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第54話≪カイ χの章 ⑬≫【scapegoate】 ―依存【addiction】と共依存そしてエピゴーネン【epigone】―
僕は彼女と一緒にひとつになっている時も自分の裸に見えない服を沢山纏ってた。 僕は彼女と今日会う約束をしていたけど彼女の顔色ばかり窺って怖くて携帯を握りしめたままそのまま、彼女に何度もかけようとしてもかけようとしても最後の番号を打とうとするところで、いや、だめだ、待って、と僕を僕が止める。何時間も彼女の心のことをただただ一方的に考えて一人不安を増強させて、あ、しまった、繋がってしまった。彼女の声がスピーカーから聴こえる。 「○○君、どうしたの?」 「あ、あ・・今日会う約束
第47話≪カイ χの章⑩≫【scapegoate】 ―Seeing is believing. Believing is seeing.―
「さて、今から出発だけど…」 フード付きのコートをかぶってちょび髭に黒ぶち眼鏡、それから特殊メイクとやらで画像認証技術もすり抜けていくすっかり誰かわからなくなった姿に変身した僕の方向へハルは威勢よく振り返る。 「カイ君。これはね、私からのカイ君への特別お守りメモ!全部クリアしようとしなくてもいいから少しづつ少しづつ意識してみるともっと素敵なことが起きるかもしれないと思って心にとめておいてね」 「…お守りメモ?」 「うん。大それたことはなくて、これは衣食住をしばらく共に