オリジナル曲「月光」 作品解説
はじめに
はじめまして。DTMer兼ボカロPのさくらイレブンと申します。
1/19にユーザー企画「ゆっくりボカロ投稿祭2024夜」が開催され、オリジナル曲「月光」という曲をリリースしました。
今回のnoteは、「月光」という曲について作者自ら解説するという、ちょっと恥ずかしい感じでやっていきます。
個人的な考えとして、「作品は世にでた時点で作者の手を離れており、解釈はリスナー様それぞれに委ねられるべきかな」と思っております。
また、私の作品は鮮度重視でネタバレに弱い構成が多いので、なんだか活字にするのを躊躇っていました。あと、私は本質的に根暗で話がグチグチしてるので良いことないだろうな、とも。
なのでnoteは一生書かないと思っていたのですが、月光は「小説みたい」とか「2~3周して考察してます」など、とてもありがたいお言葉を頂きましたので、私の考えを文庫本の巻末コメントみたいな気分で書いてみようと思います。音楽的な話はほぼ無しです。テンション上がってるので、「ですます」調じゃなくて、「である」調です(汗。
ネタバレ要素を非常に多く含みますので、作品を未視聴で興味がある方は、先に観て頂く方がいいかもしれません。宣伝です(^▽^;)
「月光」ミュージックビデオ
Youtube:https://youtu.be/3ioOaOQ_jEU
ニコニコ動画:https://www.nicovideo.jp/watch/sm43288167
「月光」の構成 (以下ネタバレ有)
「月光」は、冒頭から物語のクライマックスシーンで始まり、視聴者に「なぜ、こんなことになったのか?」という疑問と探求心を頂いていただく所からスタート。イラストに映る制服の少女の右手は血が滴り、主人公の視界は赤く滲み追われている。そんな猟奇的でショッキングなシーンが何故起きたのか、それを走馬灯のように邂逅していき、少女との出会いを主人公が語る1番からスタートする。
構成の大きな特徴の一つが、「歌わない」ということだと思う。主人公の「語り」とコーラス・オーケストラによって作品は進んでいく。わたし的には「これってポエトリーリーディングっていうのかな?」くらいの感じで作っており、正確には何なのかわかっていないので、「語り」と言っている。
作品の時系列はバラバラにすることも考えたが、難解すぎるストーリーは曲・シナリオ・知名度で相当の魅力を発揮しないとお付き合い頂けないと考え、シンプルにした。
具体的には、冒頭:クライマックスシーン、1番:出会い・興味・事件・疑惑、1番サビ:再びクライマックスの続き、2番:不調・疑惑2・事件・接近、2番サビ:クライマックス(主人公の心情)、ラスサビ:どんでん返し、という流れで、時系列は「1番→2番→冒頭→1番サビ→2番サビ→ラスサビ」とほぼリスナーの視聴通りとしている。それでもクライマックスを冒頭に持ってきた理由は、この作品の生命線はミステリーやサスペンスのように「なんでだろう?」という興味であるからだ。興味を持ってもらわないと始まらない。その意味でもこのイラストと冒頭が作品の全てを握っていたと考える。
ミスリード
主人公の語りによって話は進むが、語りには色んなものが混ざっている。大きく分けると、「日付」「事実」「情景描写」「心理描写」の4点である。この4点はとても大事で、「なぜ?」を探求するリスナーにリアリティを与えながらミスリードを生み出すことが出来る(と思ってる)。具体的に言うと、今回「連続殺人鬼だと思っていた少女」→「殺人鬼ではない」というリスナーのミスリードを狙った所だ。その点で重要だったのが、「情景描写」と「心理描写」だ。
赤い水道水、事件前夜の塾の帰り?、ぞっとする瞳、赤く染まって見えた君、警察に君を思い出したが黙ってしまう。これらは主人公の考えや目線であり、それを各シーンの事実の前後につけることで冒頭シーンの印象も加わって、「少女=殺人鬼」「ホラー描写」とリスナーが読むように意識した。
どんでん返し
逆に「主人公=ただの善良な脇役」→「人狼で連続殺人犯」というどんでん返しは、「日付」と「事実」に焦点を当てた。実は気づかれたリスナー様がいらっしゃったのだが、それぞれの日付は2022年(原案制作時)の月齢を表している。せっかくなので、以下に列挙する。
2022年
新月:4月1日(金) →出会い
満月:5月16日(月) →赤い水道水の前日。5月19日、女生徒1名失踪。
満月:7月14日(木) →通り魔の事件前日
新月:7月29日(金)
上弦:9月4日(日) →主人公、寝苦しくて身体が熱い
満月:10月10日(月) →夜道ですれ違う。紅く染まって見えた。
満月:11月8日(火) →皆既月食。主人公、早退。
下弦:11月16日(水)
新月:11月24日(木)
上弦:11月30日(水)
満月:12月8日(木) →クライマックスシーン
とても分かりにくい伏線として、「満月の日=主人公の体調が良く、事件が起きる日」であり、「月が欠ける日=主人公の体調が悪い」としていた。また、お気づきになられていたかもしれないが、夜道や事件現場付近で主人公は度々「少女」を見かけるが、そもそも何で主人公はいつも都合よく付近を出歩いているのか。ストーリーの進行上仕方ない、というリスナーの寛大な優しさに付け込んだ悪い手口である。
結局、少女は何者? 主人公の心理は?
仕掛けや伏線は分かったが、思わせぶりな少女は結局、何なの?。皆様の疑問が聴こえてくるが気がする。正直、結構ファンタジーで微妙な話だと思っていて、このあたりは本編でもぼかしている。端的にいうと、魔女狩りやハンターのような専門家で、人狼に進化する主人公を排除するために、潜入捜査してたような感じだ。主人公=人狼とは特定できず、夜な夜な警らしていた。この辺にリアリティを持たせるのは私には無理だと考え、ミステリアスにしておいた。
ただ、ミステリアスにした点は一応狙いもあり、主人公の未成熟な恋や憧れの対象として、物語に大きく寄与した。主人公は、多感で夢見がちで自己防衛本能の強い、そんな16歳をイメージした。多分、あまり人気ないだろうな、とも思いながら(笑)。少女がミステリアスで魅力的であってくれたお陰で、主人公が勝手に惹かれていく図式が出来上がり、恋に恋するような10代男性を描けた(気がしている)。ちょっとイマドキとリンクするか自信はないが。
個人的に主人公の心理描写は反省が多く、時系列を追うためにバランス優先してしまったと悔いている。機微な心の動きは、2番以降少なくなり、2番サビから急にメインに出てしまったと思っている。ただ、終盤は盛り返し、「恋なのか欲なのか」「無意識の罪は罪なのか」「欲にまみれた自分への失望・嫌悪」を畳みかけられたのは良かったと思う。この唐突さと自己完結感が、とてもイメージした主人公っぽい。
さて、余談ではあるが少女は主人公をどう思っていたか?これは、事実を追えば予想できそうな気がする。実は、主人公と少女は、作中で7月29日と12月8日の二日しか会話していない。
おわりに
というわけで、オリジナル曲「月光」についてのnoteでした!
ちょっと勢いで書きすぎて、よく分からない感じも多々ありますが、解説はこんな感じで良いかなーと思いましたので終わります!
この作品は、とても一生懸命作ったし、絵師様には公開停止したイラストを復活頂いて、感謝してもしきれない位の思い出深い作品です。
ただ、正直「受け入れられないだろうなぁ」と思っていました。今でも、さくらイレブンの今までの曲とおはツイがあったから聴いて頂いたんだろうな、という気持ちも半分あります。ただ、残りの半分は、「リスナー様、楽しんで頂けたのかな」という満足感であり、何だか挑戦して良かったなと思っています。
次、同じような作品を作るかと訊かれたら、答えは「微妙…」です(笑)。とりあえず、タイミング合わせて語りを入れるのが面倒くさすぎるのと、音楽媒体にこの表現は合ってるのかなー、と思う所があるからです。でも、また作る時があれば、是非また宜しくお願い申し上げます。
長文、ご覧いただきまして誠にありがとうございました。感謝。
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