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21年7月新刊装丁などの話

7月に発行した小説同人誌の装丁やデザインに関する少し詳しい話です。
「B6サイズの小説同人誌でも凝った装丁つくれるよ」的な一例として書き残しておきます。

ツイートでざっくり書いてますが仕様としては以下の通り。
・表紙:レインボーペーパー 195kg
・遊び紙:ミランダ あい
・本文:コミック紙 クリーム
・特殊加工:小口染め(黒インク)
レインボーペーパーはプリントオンさんオリジナル用紙です。

どうしてこの紙を選んだかとかの話をするにはある程度アイデア出し部分を話しておかないと繋がらないので前置きから。

製本構想~印刷所決め

本のタイトルは「Like two lights in the dark」だったわけですが、この時点であった「こんな感じにしたい」という構想は以下のようなことでした。
・サイズはB6
・デザインベースカラーは黒(もしくは紺とか)
・パキッとした(メタリックな)光がほしい
・あまり具象的な素材を使いたくない(写真素材とか)

具象イメージを使いたくないのは「その方が扱いが難しそうだから」です。
あと今回のお話は場面設定も(ほぼ)シーンごとに異なる街に行っていることなどもあり、「これ」というメインビジュアルが設定し難いと思ったのもあります。

また、タイトルが英語で長めなのでいっそ文字メインのデザインにした方が整うかなと。
カリグラフィックな文字と装飾で構成される洋書のデザインが好きなので、そういう系統にしたいなと考えてました。

パキッとした光の要素については箔押しという発想もあったのですが、箔押しは(多くの印刷所では)「箔の絵柄を配置した状態で該当範囲の縦横を図って出される面積」で値段が決まるので基本的にワンポイントのデザインが前提になってきます。(タイトルだけ箔にするとか)
フレーム系のデザインとか、離れた箇所に入れたいとか思うと予算に合わない額になってしまう。なのでそういう需要のためプリントオンさんではフレームとかコーナー箔みたいなセットがあるわけですが、B5またはA5に限定されるセットのため、今回は使えません。B6がよかったので。

「結局プリントオンさんに発注してA5の値段でB6の本つくるならA5にしたらよかったんでない?ページ数も減るし。」って話にも思えますがB6が!よかったの!!!

検討段階ではしまや出版さんのピュアホワイトトナーのプランとかも視野に入れていました。星物語のインディゴとか使ってみたかった。
予算の都合と過去につくったB6の本の色味が青系だったのでもう少し雰囲気変えたくてプリントオンさんを選びました。

仕様決め

今回利用したのは新ホログラムセットです。
表紙の紙にメタリック系の特殊紙を選べるプランです。紙そのもののテクスチャが強いのでカラー印刷の下に白押さえを入れることができます。あとクリアPPが追加料金なし。

表紙イラストに透明部分をつくれば紙色が残るので、箔押しっぽく見せることもできるとセットの説明にあったのでやってみようと思いました。
個人的に使用例や解説が充実しているセットだなと感じます。それでも仕上がりイメージはなかなか掴みにくかったですが。表紙の試し刷りを依頼できる余裕(日数の)があればよかった。

表紙用紙は見本帳に収録されている用紙が多いので持っていれば役に立つと思います。
ホログラム入っている用紙と迷いましたが乱反射するキラキラ感よりは金属質な方がイメージに合う(気がした)のでレインボーペーパーに。レインボーに見えつつ地色としては銀なところに期待しました。

前述したようにこのセットで注文すれば表紙はクリアPP加工してもらえます。
そしてこの本は背幅が12mmあります。
ということでこの上に何か特殊加工を付けたい、となったときに小口染めはちょうどよかったです。(小口染めは表紙にクリアPPが必須のため)
ただし小口染めは納期の加算がそこそこ重めなので締め切りと作業時間と予算と相談する必要があります。(私みたいに本文の仕上がりに余裕がないタイプは)

表紙デザイン~原稿制作

・文字メイン
・洋書風
という方向性でしたが、洋書風と言ってもアンティーク感は出しすぎないようにしています。
レインボーペーパーの裏面は普通にコート紙系の質感なので、ヴィンテージっぽい印象は期待できません。なのである程度モダンさは意識しています。

先ずタイトルをロゴに。

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ベースにしたフォントは Calendas Plus

タイトルは抜く(印刷を)部分にしたかったので、細い文字だとつぶれたりとかある気がして(ないのかもしれないけど)ウェイトしっかりめのセリフ体にしてます。
やったこととしては全体的にスモールキャピタルにして単語ごとの文字の大きさを調整しただけ。単語にすると6個もあるので、大きさにバラつきをもたせるだけでも結構それっぽくなります。
大きさはキーワードだったり発音時に力が入るワードなどを意識しつつ決めてる。

今回の表紙データには「白押さえ用」と「カラー印刷用」の2枚のレイヤーが必要です。

【レイヤー1】白印刷

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【レイヤー2】カラー印刷

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こんな感じで2枚。
原稿自体はトリムマークなどが入る背景レイヤーがあるテンプレートを使用していますが、透明部分をわかりやすくするために消しました。

白押さえデータは黒一色で作るのですが、この場合カラー原稿も黒色メインにしたため「間違い探しか?」みたいなことになってます。これはカラーレイヤーの部分を作って白押さえにしたい部分だけレイヤー複製で作っていたのであまり難しいことはしてません。

デザイン的な話としては、概して何色も使い過ぎないようにしてますが、今回は特に色数を絞ってます。紙のポテンシャルがちょっと未知数だったので。
抜いた文字や模様も最初は白で置いていたので、白文字で残した部分も全部抜こうかと思っていましたが、仕上がりを見てみるとある程度白い部分残しておいて正解だった気がしています。

オビ

本ができあがった後土壇場で制作を決めたやつです。

白トレぺに白インク印刷で仕上げていただきました。
印刷はプリンパさん。特殊インク印刷なのに納期が短くてたまげた。
今回プリンパさん見つけてなかったらオビはなかったと思う。

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・使用用紙:クラシコトレーシング-FS 90kg

トレぺにしたのは表紙のテクスチャやデザインとの兼ね合いというのはありますが、R18マークをオビにも入れるのが面倒だったという方が大きいです。

デザインとしては特に言うことはないのですが、テキストは
・ひらがな /カタカナ / 読点:GL-築地四号
・漢字 / 句点:刻明朝

という文字によってフォントを変えるという地味に地味なことをしています。
例えば裏表紙部分に来るあらすじ

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▲完成版テキスト
▼全文築地四号

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築地四号、ひらがなカタカナがすごく好きなんですよね。
でも漢字はちょっとイメージと違くて。


だいたいこんな感じですかね。
もし「ここどうしてる?」というご質問などあったらマシュマロとかでくだされば補足します。


そんな感じでつくった新刊は現在BOOTHショップにて通販中です!
もちろん本文もがんばって書いたのでよかったら読んでください!!



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