見出し画像

24年2月新刊のいろいろ

TM24合わせのテリサイ本『シリウスの執心』制作にまつわるあれこれの備忘録です。

装丁まわり

2022年の6月につくった新刊とほぼ同じ仕様なのですが、当時はnoteにまとめなかったのでこの機に書いておきます。

仕様

▼ 前回

▼ 今回

・カバー:キュリアスIR パール 103kg
・表紙:パルルック ホワイトヘヤーライン 185kg
・本文:淡クリームキンマリ 90kg
・遊び紙:TANT KIRA K-68(ソーダ)
・カバー箔:HK073(星くず)

印刷はSTARBOOKSさん。私の中では「箔押ししたいときはここ」という感じです。前回は画面でだけ見て選びましたが、少し前に思い切って箔見本セットを購入したので今回は手元で見ながら決めました。セットだとそこそこお値段しますが個人的には手元に見本ある方がいいと思います。ちなみに今回使った星くず箔は箔見本セットBに入ってます。

表紙

内容としては星や星座はそんな関係ないのですが、このタイトルで背景が星図や星空以外っていうイメージが浮かばなかった。

素材は British Library が flickr にアップしていたこちらの画像。

The BL King’s Topographical Collection: "Hemisphaerium Coeli Australe (Boreale), in quo loca Stellarum fixarum secundum Æquatorem, per ascenciones ad annum 1730 completum, sistuntur, a J.G. Doppelmaiėro; operâ J.B. Homanni."

古地図や古書の素材がほしいときはとりあえずBritish Library のアカウント内を検索するといい。flickr 海外の博物館系のアカウントをいくつかフォローしておくのはおすすめです。
今回みたいな場合 "star chart"(星図)や "celestial globe"(天球儀)とかのワードで検索します。

合わせた素材はてんぱるさんのアルコールインク素材「ストロング」です。

印刷しない用途でしたら pixiv でも見られます。

以下メイキング

1)モノクロにしておく
2)レイヤー複製してコントラスト反転
3)インクのほうは彩度など調整
4)オーバーレイで合成。星も追加

ちなみに赤く囲った箇所にいるのがおおいぬ座で赤点がシリウスです。
タイトルや文字が被らない&アルコールインク素材の薄い箇所を重ねて白く浮かび上がるよう調整しています。

文字の下にはドロップシャドウを入れています。

カバー

今回の(前回22年6月の本に引き続き)コンセプトは商業文庫擬態本です。(まぁ商業出版の文庫本でタイトル箔押しされてる本なんてたぶんないですけど……)
表4にはあらすじとバーコードを入れています。そのため今回は ISDN もとりました。
カバーソデは作者のプロフィールとか既刊リストとか書いてあるよな〜というイメージで。

表紙

表紙はクリーム色が強い紙を選んでいます。濃い色でレトロっぽい装飾をいれてカバーをとった文庫本らしさが出るようにしました。
このあたりの素材は『ヴィクトリアン・クラシカル装飾素材集』(技術評論社)から。いくつか素材集持ってますが、この本は特によく使ってしまう気がします。

オビ

表1側:作中のセリフと作品内容に沿ったアオリ文
背:攻めが受けに振られるところから始まる話なので、メタなアオリ文でハッピーエンドアピールをしました

印刷はプリンパさん。
紙はディープマット インディゴ 100kg 、スペシャルカラーのゴールド印刷です。

表4側には商業本であるあるな感じの有識者(専門家だったり同業作家だったり)による推薦コメントを入れさせていただきました。
今回は本の頒布に先行して、7話のうち3話までを試し読みとして電子配信(epub)していたので、そこでお寄せ頂いたコメントをそれっぽくレイアウトさせていただきました。(雪華さん、りんごパイさんありがとうございました!)

一度 モフル プルーン 90kg で注文したのですが、ゴールド印刷が全然見えず大失敗でした。(プリンパさんのサイトでも印刷実例掲載されていない紙だったので想像で注文したら見事に……)
せっかくなので失敗例としてそちらの画像も載せておきます。

近くで見ると悪くはないんだけどね……
4色印刷と組み合わせだったらいい感じになる気がする。
いつかリベンジしてみたい紙


元ネタなど

この先は本を読んでくださった方向け。あとがきに入らなかった話など。
オクトラ本ではありますが、今回はオクトラ以外の作品からパクったが元ネタになった箇所がいくつかあるのでそのあたりも書き残しておきます。

アルタイルの名前

アルタイルは星の名前から、アドラーは「鷲」(ドイツ語)、エスターテは「夏」(イタリア語)という意味で、鷲座の鷲はゼウスがガニュメデス(美少年)を拐ったときの姿という神話があるのでそれが元ネタ……という話をあとがきに書きました。

もともと神話読んだり神話モチーフの絵が好きなので「ガニュメデスの誘拐」も好きな画題のひとつなんですが、その中でも私はマッツァ版が好きで。ロンドンの National Gallery に行った時には必ず足を止めてしまうんですね。

ビジュアル的にはこのイメージが頭にありつつ書いてたと言えます。(だから何だという話ではありますが。)
ルーベンスのガニュメデスもえっちだと思いますけど。

あとアルタイルは日本文化的には牽牛星(彦星)として知られる星でもあるので、「決まった相手(織姫)がいる」というイメージが彼の既婚者設定とも結びつくな〜と思ったのも由来のひとつです。

アトラスダムの双傑

これが一番バレバレな気がしますが「双璧」に対して「双傑」というワード選びは『魔道祖師』(著:墨香銅臭 訳:鄭穎馨 挿画:千二百 ダリア文庫/フロンティアワークス)からです。

サイラスがアルタイルといた頃はまだホルンブルグも健在だったので、「双璧」の騎士の話はアトラスダムでも知られていたはずで。サイラスの「天才学者」設定を、アトラスダムにおいては知性で双璧に匹敵しうる存在であっただろう解釈しました。

着ると恋が叶うドレス

カルドナが「着ると恋が叶う服」をつくる仕立て屋として名を轟かせているという設定。これは10割私の妄想なのでカルドナさんのトラベラーストーリーをまだ見ていない、というかたも安心してください。こちらの元ネタは『ヴィクトリアン・ローズ・テーラー』シリーズ(著:青木祐子 イラスト:あき コバルト文庫/集英社)という小説です。

私をイギリスかぶれにした作品のひとつ。シャーロック・ハクニール(主人公の相手役)がかわいいから読んでみてほしい。

カルドナは旅を経て再びアトラスダムでお店をやってます。お客さんの求める服を作っていたら、若い女の子の間で自然と「着ると恋が叶う服の仕立て屋」として噂が広まった設定です。

エスターテ家

「生まれた子がことごとく娘だった」という箇所。「娘が6人」という数字は『ベルサイユのばら』(作:池田理代子 中央公論社)のオスカルの家から。

うちにあったのは中央公論社の分厚いやつだったので私はこれを読んで育った。

オクトラ自体が中世ヨーロッパ的世界がモチーフなのもあり、フラットランドの貴族社会もヨーロッパ階級社会のイメージかなというのが私の中にありました。(まぁ1700年代は「中世」ではないんだが)
私がオクトラ公式に教えてほしい設定のひとつは「貴族内に階級や爵位があるのか」みたいなところですね……。いやもっと具体的に言うと「シャモート家やレイヴァース家って公侯伯子男のどこ?!」ってことなんですけど。(もしかしてどこかで言及されてるけど私が見られていないだけなのだろうか。そういうのあり得るジャンルなんだよなこのゲーム……。)
今回のお話ではシャモート家は公爵、エスターテ家は候か伯ぐらいの力関係のイメージです。

そんな感じで2月新刊『シリウスの執心』について色々と小話でした。お付き合いくださりありがとうございました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?