景色は静かに剥がれ始める
いつか あれはイタリアの野原の道を走っていて日本みたいって思ったっけ
今日 日本の道を走っていてイタリアみたいと思ったりする
同じ地球の上だから 人間が住んでいる場所だから 似ていることもあるだろう
けれども 海を越えた場所だからと思うと似ていることが不思議 不思議と思うことも不思議
見ていた景色と
撮った写真で見る景色と
違う
間に時間が挟まると違う
もう別の場所になっている
今またこの場所に行ってみれば時間は違うけれどこの場所
写真で見ているこの場所は今はもうこの場所でもなくこの時間でもない
別の物語を作っている気がする
ただ写真に撮っただけなのに
異次元旅行の心地
ただの勘違い
地上じゃない場所を訪ねてきた心地
別の地球の水の流れ
別の時間の中の空
ここでは木々が歩く
ここでは鉄塔が送電の是非を決める
ここではないここ
今の時から剥がされた今
どの場所も懐かしくどの場所も見知らず
故郷でなく異国でなく
今でも過去でも未来でもなく
もう一つの時が見つめる
大地の声雲の声
彼方から生き物の歌
雲なのか鳥なのか
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