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ふたつよいことさてないものよ


 大切にしている本を
読み返してみました。
臨床心理学者
河合隼雄さんの
「こころの処方箋」
新潮文庫です。

私はこれまで、人生に迷ったり、どん底の時は
河合隼雄さんの本を読んで何とか立ち直ってきました。
そのことについては以前も書きました。お時間あればお読みください。

今日の私はどん底ではないですがモヤモヤしてしまい、本棚からこの本を取り出しました。
何度も何度も読んだので
カバーもボロボロの大切な一冊です。

処方箋は1️⃣から55まであります。だいたい1項目4ページくらいにまとめてあり、どこから読んでも励まされたり、何かしら発見があったりする
ありがたい本です。
時には難しくてよくわからなくなり余計に考え込んだりしたこともありました。


 今日は14ページの
2️⃣ふたつよいこと さてないものよ
について書きます。

「ふたつよいことさてないものよ」というのは、ひとつよいことがあると、ひとつ悪いことがあるとも考えられる、ということだ。(中略)世の中なかなかうまくできていて、よいことずくめにならないように仕組まれている。このことを知らないために、愚痴を言ったり、文句を言ったりばかりして生きている人も居る。その人の言っている悪いことは、何かのバランスのために存在していることを見抜けていないのである。

河合隼雄「こころの処方箋」より


この本を読み始めた時の私は、子育てに悩み、そのことで夫さんに相談しても「忙しい、疲れている。そんなのわからない、ほっとけばいいよ」と言われるばかりで悶々としていました。
どうして私だけ、こんなに苦しんでいるのだろう?
こんなに毎日頑張って主婦も子育てもしているのに何故? と愚痴グチ
堂々巡りをしていたような、、。上記の先生のお言葉
"悪いことは何かのバランスのために存在している"なんて言われても全くピンと来ませんでした。


本は続きます。

人間はよいことずくめを望んでいるので、何か嫌なことがあると文句のひとつも言いたくなってくるが、
そんなときに、「ふたつよいことさてないものよ」とつぶやいて、全体の状況をよく見ると、なるほどうまく出来ている、と微笑するところまでゆかなくとも、苦笑ぐらいして、無用の腹立ちをしなくてもすむことが多い。
 この法則はまた、ふたつわるいこともさてないものよと言っていると考えられる。何かわるいこと嫌なことがあるとき、よく目をこらして見ると、それに見合う「よいこと」が存在していることが多い。

河合隼雄「こころの処方箋」より


 なるほど。
年月を経た今なら、うなづきますが、当時の私(30代後半)は最初は全くわかりませんでした。
「つぶやいても
ため息しか出ない。
誰も私の気持ちなんかわかってくれないもんね」とスネ子になっていたような、。、自己中心的で浅はかで周りが見えてないのですね。
それでもスネ子は読み進みました。

ふたつよいことがさてないもの、とわかってくると、何かよいことがあると、それとバランスする「わるい」ことの存在が前もって見えてくることが多い。それが前もって見えてくると少なくともそれを受ける覚悟ができる。人間は同じ苦痛でも覚悟したり、わけがわかっていたりすると相当にしのぎやすいものである。あるいは、前もって積極的に引き受けることによって、難を軽くすることもできるだろう。

河合隼雄「こころの処方箋」より


ここまで読んでスネ子は、「ふーん、確かに毎日よいことと わるいことの繰り返しだから。いちいち怒ってイライラしても仕方ないかも。
覚悟か、。私もソロソロ覚悟を決めないと。
2人の子供を育てるのは簡単じゃないもの。
まあ、いろいろあって当然か。」と、少し勘違いの解釈をしていた ような。その証拠になんと、この本の17ページの下の方に鉛筆で書いてあるのです。
"カクゴスルワ 9/7"

本は宝物なので私は滅多に書き込みはしません。(と思います)
しかしこの書き込み、今見ると、何とも可愛くて笑ってしまいます。


そんな情けない私も
61歳になってやっと、
河合先生がおっしゃるように、
"ふたつよいことさてないものよ"とつぶやいて
全体の状況をよく見ると、世の中ほんとにうまくできてるなと苦笑して流せるようになってきました。
もちろん、それがすぐにできないこともありますが、いかんせん。
怒ったり悩んだりするガッツも体力も無くなってきたのも事実です。

何かあっても
慌てず騒がず 感謝して、
ぼちぼちと暮らしてゆけたらいいなと思います。

ひとつよいことがあるだけで、嬉しいですから。


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