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羊飼いの暮らし を読んで


 ここでは無い何処かへ行きたい。幼少期から高校生時代までずっとそう思っていた私にとって、著者のジェイムズ・リーバンクスさんの気持ちや考え方は不思議でした。ノンフィクションの長い長い文庫本を頑張って読んでもまだ、私の疑問は疑問のままでした。読後一番心に残ったのはp323の
「私の靴は汚れるべきなのだ」
でした。

 そんな時でした。ある朝
テレビをつけるとチャンネルがbs NHKになっていて
「羊飼いの道をゆく フランス・セヴェンヌ地方」という番組を偶然見ました。急いで録画しました。
美しい風景と音楽に惹きつけられました。もと羊飼いのご老人は「私はセヴェンヌの歴史という鎖をつなぐ輪の一つだ」と話していました。この本のp396にも同じ表現がありました。また、
ある男性の羊飼いは
「大空のもと、のびのびと生きるロマンと情熱を持てる仕事だ。お金のためではない、僕が選んだ人生の価値だよ」と。それを見て
私は、こういう美しい自然やロマンを何となく想像して期待してこの本を読み始めたから、どれだけ読んでも感情移入ができないのだなと気がつき、恥ずかしくなりました。
 今の時代は何でもパソコンやスマホで調べればすぐ映像や画像が出てきて、確認できて、わかったような気持ちになります。
しかし、現実は多分違う。
短い時間の、美しい自然や可愛い羊達の映像を見て感動するのも悪くはないけれど、
本当の羊飼いの暮らしは決してわからない。この地球や人類にとって大切なことは分からない。
そして、ノンフィクションの本を読むことは時に忍耐が必要ですが、大切なことだと今回改めて思います。そして、リーバンクスさんがこの本を上梓されたのは、本当に尊いことなんだなと思いました。
私は、もう一度この本を最初から読みました。

 それにしても、ジェイムズ・リーバンクスさんは21歳から受験勉強を始めて、その時は手書きで文章を書けない状態だったのに努力して努力して
オックスフォードを出たのに
何故地元 イギリス湖水地方に戻ったのでしょうか。
美しいけれど厳しい自然の故郷が大好きで
家族が大好きで大切で 

羊を愛しているからなのか。


「生計を立てるためには羊飼いとは別の仕事が必要である」とこの本には書いてあります。実際 農場仲間の多くはキャンプ場を経営したり出稼ぎに出ることも多いそうです。
それでも祖父、父の、家族全員の働く姿を見ながら
自分も子供の頃から働いてきた農場の仕事を受け継いでいく。迷いとか覚悟とかは書いてありませんでした。ごく自然にそうなっている。
それがとても不思議で凄いなと私は思います。それは、きっと
祖父母から両親からたくさん愛されて育ってきたからなのでしょうね。湖水地方の厳しい自然の中で
愛する大切な家族と働くことは、著者にとっては当たり前のことで一番大事なことなのですね。

 私にとって大事なことは、今の家族と暮らすことです。子供達はもう巣立って行き
夫と二人の毎日は、平凡ですが幸せです。
ガーデニングしてピアノの練習をして。
あまり読んだことの無いジャンルの本の感想文に挑戦できたことも幸せです。
noteのおかげです。ありがとうございます。
普通の毎日がありがたいです。


#読書の秋2022
#羊飼いの暮らし  イギリス湖水地方の四季


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