見出し画像

卯の花(ウツギ)

卯の花の匂う垣根に
ほととぎす早も来鳴きて
しのびねもらす 
夏は来ぬ

さみだれのそそぐ山田に
早乙女がもすそぬらして
たまなえ植うる 
夏は来ぬ

橘の 薫るのきばの
窓近く 蛍飛びかい
おこたり諌むる 
夏は来ぬ

おうちちる 川べの宿の
門遠く くいな声して
夕月すずしき 
夏は来ぬ

さつきやみ 蛍飛びかい
くいな鳴き 卯の花咲きて
早苗植えわたす 
夏は来ぬ

『夏は来ぬ』
作詞 佐々木信綱

夏が立つと、まずはじめに目に浮かぶ歌と景色が『夏は来ぬ』。

きっとこの歌から「うのはな」という花があること、また夏の到来を知らせる花だということを、教えられた人は多いと思います。私もその一人です。

卯の花はウツギの花。枝が空洞なので「空木」とも、厄祓いに使われたことから「打つ木」とも書きます。花は白く清楚で愛らしく、そんなウツギが昔から人々に親しまれてきた花であることは、万葉歌をはじめとする歌の多さからもわかります。

卯の花を詠った歌は、万葉集には24首あり、そのほとんどが「ホトトギス」とセットになっていますが、山本健吉氏の著書を読んでいたところ、先の『夏は来ぬ』には本歌があり、それは江戸時代の歌人、加納諸平の一首だと紹介していました。

山里は卯の花垣のひまをあらみ
しのび音洩らす時鳥かな

卯の花、しのび音、ホトトギス。たしかに。数多くある歌の中から、よくぞ見つけたものだと感心しきり。

現代の都心では、卯の花もホトトギスも身近にはありませんが、こうして歌詞を眼にするだけでも、たちまち懐かしさに誘われて、歌が唇にのるのを、ちょっと面白く感じています。

こうしてこの夏も、花を追い、匂いを追い、雲を追い、過ごしていくのでしょうね。飽きもせず。今日もいちりんあなたにどうぞ。

ウノハナ 花言葉「秘密」

くいな鳴き 卯の花咲きて

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?