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春夜 雑感

退屈な女より もっと哀れなのは かなしい女です。
かなしい女より もっと哀れなのは 不幸な女です。
不幸な女より もっと哀れなのは 病気の女です。
病気の女より もっと哀れなのは 捨てられた女です。
捨てられた女より もっと哀れなのは よるべない女です。
よるべない女より もっと哀れなのは 追われた女です。
追われた女より もっと哀れなのは 死んだ女です。
死んだ女より もっと哀れなのは 忘れられた女です。

鎮静剤
マリー・ローランサン
堀口大學 訳

堀口大學『月下の一群』より。今日一日の、疲れ切った頭には、詩を読むくらいがちょうどいい。なんて手にしたものの、数あるフランス訳詩の中で、どうしてこれに眼が留まったのか、自分の気持ちがわからない。

ただ、訳者あとがきにある「ただ、詩を愛するのは、少年の日より久しい僕の性癖だ。ことフランス近代詩を知るに及んで、この性癖はいよいよ深いものになった。」とあるこの箇所にばかりは、何度目であっても、今日も強い共感を覚える。

花と文学の関係性を探るこの路も、いよいよ長くて遠い路。そんなことを思うこの頃。けれど幸いなのは、それしかできぬ不器用でありながら、ローランサンがいうほどの、不幸も哀れも退屈も、ひとつも感じていないところです。

明日はどんな花に出会うだろう。期待はない。

今日もいちりんあなたにどうぞ。

モッコウバラ 花言葉「あなたにふさわしい人」

私はあなたにふさわしい。かしら


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