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夢切り絵【油断は禁物】

見た夢を切り絵にしました、12枚目でございます。

身近な人に、夢を毎晩たくさん見るという方がいらっしゃいます。
眠りにつくと、夢の世界に入り、寝ている間ずっと起きているような感覚すらあるほど、五感もはっきりとしていて、起きてからも夢を覚えていると仰っていました。

私の夢切り絵を楽しそうに眺めて下さったその方は、自分が見ている夢を何かに役立てられないかと、毎日メモをしているそうです。
「私も絵が描けたらいいんだけどなぁ」と仰っていましたが、ときどき現実と夢がごっちゃになるのが困るとも、つぶやいていました。

私の場合、体感としての疲れや痛みなどは現実と同じなのですが、夢の中では色が無いように見え、匂いなども感じることは少ないです。
その方は色や匂いもしっかり感じていて、私よりもずっと、夢を鮮明に覚えておられるようでした。

夢が鮮明すぎて、現実と夢を混同してしまうほどの方は、なかなかおられないと思いますので、そういった方の表現したものや創作がどんなものになるのか、ぜひ見てみたいと思っております。

でも、創作は難しいと仰っていました。
そこまでの夢を覚えていられる人であれば、それを題材に何でも作れそうな気がしてしまいますが、絵を描いたり、文章を書いたりすることも普段はないそうで、夢日記をつけるだけで、ある程度満足しているようにも見えました。
創作をしようと思った時、アイデアを絞り出さなくても、膨大な夢の中から毎日題材を得ることが出来れば、ずっと創作を続けられるのではないかと、安易に考えてしまいますが、そんな素晴らしい才能の使い道にまだ気付いておられないだけなのかもしれません。

高校生の頃、親しい友達に絵が非常に上手な子がいました。
その子が授業中にさらさらと描くイラストや漫画を、私はいつも見せてもらうのが楽しみでしたが、時間をかけたデッサンの腕も素晴らしいものでございました。
将来は芸術家にでもなるのだろうかと、私は目をキラキラさせていましたが、本人は美術に特に興味がある訳ではないと言っていました。
漫画は描くより読むほうが好きだとも言っていました。

その子は高校を卒業後、家の近くにある親御さんがパートをしているスーパーで一緒に働くことになったそうですが、食べることが大好きだったその子は食品売り場で試食係をやれることを、とても喜んでいました。
いつしかそのスーパーで一緒に働く人に恋をし、よく恋愛話を聞かされたこともございましたが、頑張って働いて、いつか幸せな家庭を築きたいと言っていました。
あんなに絵が上手で、あんなに突出した才能を持っていると周囲には見えていても、本人の興味とはまた別で、その時のその子にとってはもっと優先すべきことがあり、人生を決めていくのは、才能の前に選択なのだと感じたことがございました。
才能を眠らせておく選択をした人は、自身の幸せを選択した人なのかもしれません。

私は、今頃になって絵を描くことが自由に出来るようになり、そこまで鮮明でもない夢の絵を描いております。
最近は「絵が上手だね」と言ってもらえることが増えて参りました。
大人になってからはずっと描けないでいたので、描き続けて積み重ねてきたものは何もないはずですが、こうして褒めてもらえる日が来るとは嬉しい限りでございます。

皆さんにはどんなお話に見えるでしょうか。
題名は「油断は禁物」です。

校舎や桜の木が見渡せる校庭の真ん中に私はおりました。
簡単に空を飛ぶことが出来て、これは夢だろうと勘づく瞬間がありました。

空中に浮くだけではなく、風を起こすことができました。
台風の目となった私に、周囲の人たちは近づくことが出来なくなり、強風に吹っ飛ばされている人もいました。

自身の風を自在に起こせる能力に、すっかり胸躍っていた私は、大方吹っ飛ばされて人が居なくなると、校舎に入ることにしました。

校舎の中には、扉がいくつもありました。
各扉の奥の部屋には、それぞれ戦うべき存在が控えており、全員を倒さなくてはならない世界観が急に頭の中に入ってきましたが、調子に乗っていた私は、きっと楽勝だろうと、自信満々に一つの扉を開け、中に入りました。

ビジネスホテルのような普通の部屋の様子とは釣り合っていない、屈強で大柄な男の人が立ち塞がっていました。
とても強そうで、本来なら戦って叶うはずはないのですが、内心ウキウキしていた私は、さっそく風を出そうとしました。

さっきみたいに風を出して台風を起こせれば、楽勝だろうと高を括っておりましたが、どんなに念じても風が出せません。
特に頑張らなくても簡単に風が起こせたのに、その力はこの短い時間に失われてしまったようでした。
男性はすぐに襲ってくる様子ではなかったのですが、私は若干後ずさりしながら、どうしたら良いか考え、とりあえず、お茶を入れることにしました。

椅子に座って頂いて「ゆっくりお茶でもいかがですか」と、冷や汗をかきながらニコニコ顔でお茶を入れました。
男性は凶暴な人ではなく、とても優しかったので、お茶を飲んでくれました。

お話でもして和やかな雰囲気を出して、友達になってもらおうとしていたのですが、私がふと目を離したすきに、開いていた椅子に見知らぬ中年の女性が現れました。

知らない方が急に現れ、戸惑っていると、ほほえみを浮かべていたその女性は男性のことを知っているようにも見えました。
とりあえずその女性にもお茶を出して、三人で談笑しようという時、私の目は覚めることとなりました。

今回は優しい人でしたので、結局戦うことはありませんでしたが、内心はひやひやしておりました。
自分の家に強盗が入ってきたときとか、屈強な人に攻撃されることがあったとしたら、ひとたまりもないと思いながらも、もし、一緒にお茶を飲んでくれる心の余裕が相手にあれば、それはなんと平和な世界かとも思います。
そんなことは夢でしかないことなのでしょうか。

また次も見て頂けましたら、幸いでございます。

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