見出し画像

夢切り絵【悪びれないおじいさん】

前回、前々回から引き続き、見た夢を描いた切り絵の3枚目でございます。

人間は毎晩夢を見ているけれど、脳のシステム的には起きると同時に忘れてしまうようになっているという話がございますが、私もそのように思います。

起きる直前まで、はっきりとした体験かのようだったものが、目が覚めるとと同時に早急に記憶から消されていく感覚を毎朝感じております。

詳細な記憶と体感はあっという間に消えてしまうのですが、断片的な映像や絵だけが頭の中に少し残っていて、この残っている印象をもとに、絵を描いていると、聞こえた言葉や文字などをだんだん思い出してくるときもあるのですが、こういったいわば、わざわざ思い出す作業でもしないと、なかなか毎晩見ている夢を思い出すことはできないもので、忘れていくのがやはり自然なことなのだと思います。

夢を見た日はよく眠れていないと言う方もいらっしゃいますが、目覚めが悪かったのであれば、よく眠れなかったと思ってしまうことも、よく分かるのですが、私は逆に、夢を全く覚えておらず、見なかったのだと思う日は、目覚めたときに頭がすっきりと起きておらず、まだまだ眠い感じがございます。

夢が熟睡に関係しているのかどうか、覚えている覚えていないことに何の意味があるのかは、私には分かりませんが、私は比較的夢を覚えていることが多い方なのかもしれません。
今は絵を描く程度には思い出せておりますが、ある時、はたと見なくなってしまうこともあるような気が致します。

夢切り絵は、果たしていつまで出来るものなのか、誰にもわからない側面もあるように思いますが、覚えている限り、続けていきたいと思っております。

皆さんにはどんなお話に見えるでしょうか。
題名は「悪びれないおじいさん」です。

私は一人暮らしをしておりますが、母と妹とは定期的に会って、食事をしたり、よくおしゃべりをする機会がございます。
顔を見る機会が多いせいか、二人は夢にもよく登場します。

とある車に、母と妹と私の3人で乗っておりました。
家の車は少し大きめのワゴン車なのですが、それとは違い、こじんまりとした見慣れぬ車内でございました。
3人とも運転ができないはずなのですが、運転席には誰も座っておらず、その車は自動運転のように見えました。
どうやら久しぶりの旅行で、私たちは温泉旅館に向かうようです。

旅館が見えて参りますと、3人は車から降り、少しおしゃべりをしておりました。
コロナの影響があったからではなく、私たち家族は以前から気軽に旅行することはあまりないのですが、家のすぐ近くに都合良く旅館が出現しているかように感じるくらい、周囲の雰囲気が近所に似ておりました。

楽しい気分になっているところで、旅館の目の前に、突如、マンホールのような丸い塊が、浮き上がるのが見えました。
私たち以外にも、周囲に数人の人たちがいましたので、その場に居合わせたみんなの視線が丸い塊に集まります。

丸い塊は
「ボーン!」
と劈く音を立てて爆発しました。

鼓膜にくる大きな大きな音でございました。
私たち3人と周囲にいた人たちは、爆風で吹っ飛ばされ、私以外は一瞬で消し飛んだように見えました。

目を背けたくなる惨状という訳ではなく、爆発があった割にはファンタジー的で、まるで魔法のように、周囲には何も無くなりました。
急激すぎる出来事に、心が追い付いておりませんでしたが、ここはどこなのかという気持ちと、急に一人になってしまったことに、しょんぼりとしておりました。

そして気が付くとおじいさんが、私の前に立っておりました。

「わしは、つかまりたくない」
その言葉がはっきりと聞こえたことを覚えておりますが、私はこの時、このおじいさんが爆弾の犯人なのではないかと、感じました。

私はどういう顔をして良いかわからず、そのまま無言で立っていると

「わしはもう老い先短い人生じゃから、今警察につかまったら、出てくるまでに死んでしまうじゃろ」
「まだまだ人生を謳歌したいのじゃ」

私に自白をしているこのおじいさんには、見覚えがありませんでしたが、どことなく、サザエさんのお父さんの波平さんに似ていたなぁと思ったので、少し似せて描いてしまいました。

とんでもない犯罪をやってのけたおじいさんでしたが、自分から言わなければバレなかっただろうに、なぜ私に罪を告白しに来てくれたのでしょうか。

言いたいことを言い終わると、おじいさんはてくてくと去っていきました。

私は少し歩くと、たまたまお巡りさんを見つけたので
「おじいさんが爆弾を仕掛けた犯人ですよ」
ということだけ、申し訳程度に教えておきました。

爆弾騒ぎとおじいさんとお巡りさんが、同じ世界戦なのかどうかも、定かではないのですが、一応、聞いてしまったからには、おじいさんを捕まえる助力はしなくてはと、思った次第ですが、通報とは言えない程度の行動だったかもしれません。
お巡りさんのキョトンとした顔を見ながら、私はそこで目が覚めることとなりました。

おじいさんはあの後、どうなったのでしょうか。
私の告げ口は、おじいさんの運命を変えたのでしょうか。

今のところ、夢で初めて見た人物に現実で出会った経験はないのですが、現実でもう一度会いたくなると感じたおじいさんでございました。
飄々としておられましたが、とても悪い人には見えないひょうきんさがあったような気が致します。

楽しい温泉旅行だったはずですが、温泉はまた次の機会に持ち越しのようです。
急展開をむかえ、不思議なおじいさんとの出会いとなりました。
またどこかで出会うことが出来るのか、はたして。

次も見て頂けましたら、幸いでございます。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?