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夢切り絵【26階の宝石店】

数か月前から、切り絵がとても好きになり、自分で図案を描いては、切るというシンプルな作業をするのが日課であり、私の楽しみの一つとなっております。

線の通りにただただ切るという作業は、人によっては、退屈の極みとなってしまうこともあるように思いますが、創作の中でも、完成形がすでに分かった状態で、あとは単調な作業をするだけというのが、私は大好きなのでございます。

切ること自体は難なく出来るとしても、図案を考えることは、難儀なこともございます。

ある日、何を図案にしようかと、考えあぐねていると、ふとその日見た夢を描いてみようという気になり、些細な気まぐれから始めたことでございましたが、1か月ほど前から、見た夢をメモし、のちに切り絵にするということに夢中になっている毎日でございます。

1か月前に完成した切り絵でございますが、1番最初に作った物でございます。

詳細な記憶があるというよりは、断片的な映像でしか、覚えていない部分もありますので、抽象的な絵になっておりますが、この夢に何かしらの意味を設けるよりも、この絵を見てどんなお話なのだろうと、想像を広げることが楽しく思えるような物を作りたくて、描いたものでした。

皆さんにはどんなお話に見えるでしょうか。
ストーリーがあるとも言えず、内容が必ずしも繋がっているとは限らない夢も、多々あるのですが、出来るだけ見た夢を忠実に描くよう努めました。

あくまで私の感じたイメージで、題名を「26階の宝石店」と付けました。

メガネの女の子が私でございます。
知らない道を歩いておりますと、大きなビルが見えて参ります。
おずおずとビルの中に入っていくと、しんと静まり返っておりましたが、奥のエレベーターの扉がひとりでに開きます。

中にはエレベーターボーイの方がいらっしゃいました。
「何階へ参りますか?」と聞かれましたので
「こちらは何階まであるのですか?」と、私が聞き返すと
「26階へ参ります」と言われ、急に扉が閉まります。

私はエレベーターによって意思なく26階へ運ばれます。
エレベーターボーイの方は、背を向けていましたが、心なしか笑っているように見えました。

26階に到着すると、広いフロアがあり、あたりにはショーケースがたくさん並んでおりました。
ショーケースの中身はとてもキラキラとしていて、はっきりとは見えないのですが、どうやら宝石のような物のようでした。

そのままフロア内を歩いていくと、正面からスーツを着た男性が歩いてきます。
見覚えのない男性でしたが、その男性は急に私を指差し
「あなた、うちの商品を壊しましたね」
「私はしっかり見ていましたよ」と糾弾の言葉を吐きました。

あらぬ疑いをかけられましたが、あれよあれよという間に、傍観者やヤジを飛ばす黒い者が次々に湧き始め、あたりは騒然となりました。

私は言葉を紡ぎ出すことが出来ず、その場に立ち尽くしておりましたが、何もせぬまま、一瞬のうちに、場の空気が変わります。

スーツの男性が
「私の誤解でした」
そういう言葉が聞こえました。

その言葉を発端に、風見鶏のように動く集団意識が、空気を一新しました。
あたりの淀んだ空気と、黒い者たちは、いつの間にか消え、私はビルの外に立っておりました。

ビルを背にして歩きだそうとするところで、ふと後ろを振り返ると、スーツの男性と黒い者たちがぞろぞろと、私の後ろにぴったりとくっついてきておりました。

私はその姿を見て、RPGによくある、仲間になった人が後ろからついてくる光景を思い出し、このまま冒険に行けるのではないかと思い立ったところで、目が覚めることとなりました。

少しホラー的な要素もあった夢でしたが、不思議と目が覚めてしまうと、怖いという気持ちは無くなっているのです。
誰かからの当然の糾弾や誹謗中傷は、子供の頃に経験したいじめの記憶から引っ張り出されてきたものなのかもと、勘繰ることはやめておこうと思います。
いずれにしても、渦中の人間の行動に関係なく、興奮してしまった集団の感情が独自の生き物になってしまう様相を、思い出させる夢でもございました。

せっかくなら、冒険に行きたかったところでしたが、それはまた次の機会となりそうでございます。

夢切り絵の最初の一枚目でございましたが、見ているうちに壁画のようにも見えてきて、見て下さった方に、絵が可愛いと言ってもらえたことが嬉しく、このような感じで続けて残して参りたいと思います。
また次も見て頂けましたら、幸いでございます。

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