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この本を夜中に読んではいけません

こんにちは。こうのさきです。

現在大学1年生の私は読書が大好きで、月に10冊ほど読んでいます📚 読書の秋、そして食欲の秋ということもあり、食べ物に関連する本に興味をもち始めた今日この頃です。

そんな私が今日紹介する本はこちら。

BUTTER / 柚月麻子

そうです。この本はタイトルの通り、バターが使われた料理がたくさん登場するのです。綴られているバターの香りや旨味、そしてコクまで伝わってくる、そんな本です📖

この本は連続不審事件の被告人に迫る記者のお話です。被告人である梶井真奈子は婚活サイトで出会った男たちから金を貢がせ、そして殺した罪に問われています。かなり太っていた彼女が男たちを惹きつけていたのは、その料理の腕前と家庭的な性格だったのかも知れません。

そんな彼女に近づき、事件の真相を聞き出すために、記者である町田里佳は彼女の好きなバターを使った様々料理を作り始めます。その料理がどれも本当に美味しそうで、私の喉が動きを感じられるほどです。

それではそのバター料理を少し紹介しようと思います。この本の表現に魅せられて、バターが食べたくなること間違いなしです。


では一つ目。バター醤油ご飯。

溶けたバターが飯粒の間からあふれ出した。それは黄金色としか表現しようのない味わいだった。黄金色に輝く、信じられないほどコクのある、かすかに香ばしい豊かな波がご飯に絡みつき、里佳の体を彼方へと押し流していく。確かに落ちていく、そんな感じがする。


二つ目。たらこパスタ。

たらこの粒とバターがからんだ麺一本一本が、里佳の舌ではしゃぐように跳ねた。塩気は十分に感じられるのに、どこか余裕というか丸みを感じさせる。口の中でぷつりぷつりと千切れていくパスタの茹で加減も我ながら見事である。外ではこんなにたっぷりバターを使った料理は食べられない。


それでは三つ目。バタークリームケーキ。

真っ白な表面にリースとろうそくの形のクリームが絞ってある他は、炎に見立てた三枚のクッキーと、ピスタチオやくるみなどのナッツが数粒飾られているだけだ。雪景色のようななめらかさだが、目には見えないものの、上質な動物性脂肪に粒子が内側からみっちりと深く輝いているのが分かる。本当はこうしている今も空にまたたいているはずの、真昼の星々のようだと思う。
直前まで冷やしてあったせいか、バタークリームにはこりっとした硬さが残っていた。舌の熱で溶けていくよう甘いバターはじゅうっと広がり、身体中の旨みを感じる細胞を浮き上がらせるようだ。ふわふわした甘酸っぱいショートケーキでは、きっともう満足できないだろう。目を閉じ、舌に記憶を焼き付ける。


そして最後。バター醤油餅。

鼻に抜けていくような香ばしさとぱりぱりと壊れていく表面の歯触り、そして口の中の肉という肉をぺたんととらえて離さない餅のなめらかさ。熱いバターが砂糖と醤油を溶け合わせ、ほの甘く柔らかく形のない塊に絡みついて、輪郭をえようと泳ぎ出す。バターの脂っこさと砂糖のしゃりしゃりとした食感、醤油の強い味が一つになる。餅をかみきった歯の付け根が快感で大きく震えた。


ここまで読んでいただき、ありがとうございます。そろそろお腹が空いてきませんか? ちなみにこの本には、パウンドケーキやカトルカールといった、他にも様々なバター料理が登場します🧈

柚木麻子さんの文字だけで味や香りまで伝えてくる表現力には圧倒させられます。そしてこれらの料理が引き出す事件の真相にも。

気になった方はぜひ読んでみてください。くれぐれも夜中にはお読みにならないように...

それではまたお会いできることを願って。


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