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ギャンブル依存症

連日、一平さんのニュースが流れている。
「違法賭博を行いその借金を他人の口座から送金したらしい」
という事件だ。
彼が日本で普通の仕事をしていたら
「ただのギャンブル依存症」だったんだろうなと思った。
たまたま超有名人の通訳で表舞台に居た。それもかなり目立つ舞台に。

僕が若い頃、友達がギャンブル依存症だった。
でもそんな事はちっとも知らなかった。
彼とは転職先で知り合った同僚で仕事上とても世話になった。
頭が良くて優秀で、社員からの信頼も厚かった。
僕達はチームとなり色んな問題を一緒に解決した。
(ほとんど彼が解決してくれたんだけど)

そして当時の若い男が誰でもそうであったみたいに彼も女好きだった。
僕達はよく、朝まで飲み明かした。女の子と一緒に。
そう僕達は昼夜問わず一緒に居た。休みの日も。

何年か経ったある日、彼から借金の申し入れを受けた。会社のエレベーターの前だった。
最初は少額だったが、借金を重ねるうちに高額になってしまったという事だった。
その提示額は僕のキャパを超えていた。
深夜、とある店に出向きポーカーをしている事は知っていた。
この半年間ずっと続いていた事も。
そして朝、ハイテンションだった事も、最近元気がなくなっていた事も。
でも僕は何もしてあげられなかった。
散々世話になったのに。

しばらくして彼は会社を辞めた。
借金をどう処理したのかは、わからなかった。
その後、良くない噂が流れた。会社の切手や印紙が大量に紛失していたのだ。誰もが彼を疑った。
その少しあと、彼から電話があった。
直ぐに金を振り込んで欲しいとの内容だった。
とても切羽詰まっていた。
その額は僕が貸せるギリギリだった。
僕はその金を振り込んだ。
それ以来、音信不通となった。

一平さんの報道を見て、彼の事を思い出した。
この文章を書いている今も、当時の事をありありと思い出す。
僕達は友達だった。唯一の友達だった。
今の薄っぺらな交友関係を思うと当時の僕達の友情は確かなものだった。
それなのに僕は彼を助けてあげられなかった。

そして思うんだ。あの時、彼から連絡があったとき、お金を振り込みさえしなければ、彼はいつか、僕に連絡をくれたかもしれないと。

僕達は親友だった。誰が何と言おうと。
そして今も信頼している。僕は裏切られていない。
ギャンブル依存症は病気なんだ。あんなに優秀だった彼が蝕まれた。
誰にでも弱い心がある。それは仕方のない事だ。

取り返しはつかない。
でも戻ってきて欲しいと、切に願っている。


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