小説:雷の道(日曜日)#29
窓ガラスの中の加奈子はコップを持ったまま動かなかった。
目の前の川をじっとみていた。
僕もそんな加奈子の視線の先をずっと見ていた。
川に映る光は時折通る舟にかき消された。
三艘目の舟が通り過ぎるころ加奈子は僕を見た。
ガラスに映る加奈子より現実味が増したけど、それでもまだ現実味を欠いていた。
「誰に聞いたの?」と加奈子は言った。
平坦な声だった。
僕を責めているようにも慰めているようにも聞こえた。
加奈子は僕から視線を離さなかった。
「知りたいんだ。本当の事を。何があった