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ピョンヤン市内をゆく(2)~進むクルマ社会<おまけ>~

●北朝鮮ナンバープレート事情

クルマの話題が出たところで、
ちょっと(かなり)マニアックですが
クルマにはつきもののナンバープレートについて。

以前の北朝鮮のナンバープレートって
こういう手作り感いっぱい(?)のシンプルなものでしたが、

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   (1998年ごろ撮影)

今回ちょっとスタイリッシュに変化してましたよ。

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  再びタクシー登場

ちょっと中国のナンバープレートに似てるなぁとも思いますが。

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うん、ほとんど一緒ですなw <参考写真=中国のナンバープレート>

いちばんよく見かけるのが、この青いナンバープレート。
ニッポン的な感覚だと
これが一般自家用車かなぁと思ったんですが
ガイドさんいわく「公用車です」とのこと。

えええぇっ?と思いましたが、
よく聞くと「事業所が所有するクルマ」なんだそうです。
日本で言えば「社用車」ですかね。会社のクルマ。
北朝鮮は制度としてすべての企業が国有なので
いわばどの事業所も「お役所」です。
そこが所有するクルマなのでつまり「公用車」だと。
なるほど。
だからバスもタクシーもみんな青色ナンバーなのね。

また北朝鮮では自動車というものは「公器」であって
個人が所有して気ままに乗り回すもんでもないらしい。
荷物を運ぶ、人を運ぶ、など必要なときに
必要とする場所(つまり事業所)の車を使って目的を果たす。
ほんとにあくまでも道具として考えられてるみたいです。

さてナンバープレートの読み方ですが、
例えばこちらのタクシーだと

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「평양70・0630」ですね。

まず最初の2文字が登録地名。
この場合は「평양(ピョンヤン)」です。
ほかにも各道(日本で言う「県」に相当)ごとの表示があって
両江道なら「량강(両江=リャンガン)」、
平安南道は縮めて「평남(平南=ピョンナム)」などとなります。

続く数字2ケタはその車の所属。
タクシーは地域の運送事業所というところに所属なので
どの会社(?)のタクシーもすべて「70」。
実は個人タクシーも多数存在してるそうですが
それも「70」で統一されてます。

ちなみに、北朝鮮へ旅行するほとんどの日本人が
ほぼ確実にお世話になる朝鮮国際旅行社は「74」なので
その時に乗るクルマのナンバーは「평양74」のはずです。
機会があればぜひご確認を(←あるのか?ww)
後ろ4ケタは一連番号。ニッポンと同じです。

なお、大型車か小型車かという区分による
記号番号や色の違いはありません。
ただ、大型車は後ろにつけるプレートがちょっと大きめ。

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あと、車体にもわざわざ番号を直接ペイントします。
なんでなのかはわかりませんが
中国などの共産圏ではよく見られますね。

ところで、数は少ないながらも
個人所有の「自家用車」もあるそうで
それは黄色のナンバープレートになります。
ここに写ってる左の車がそれ。

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ちょうど3色のナンバープレートがうまく並びました。
右側の緑色のナンバープレートは
外国公館の公用車だそうです。

もっと近づいてキレイに撮りたいなとも思ったんですが
個人旅行なのでずっと真横にガイドがいるし、
「ナンバープレートの写真をアップで撮る」などとという
はた目にはスパイ行為(笑)にしか見えないマニア心は
彼はもちろん周囲の一般市民にはまず理解されないので
一歩踏み出すのが難しく断念。素人ですからw
まぁ、これは日本の駐車場だったとしても
クルマに近寄りナンバー撮ってる人がいたら不審だわな。

なお同じ外国公館所属でも
そこの外交官や大使館員が個人的に所有するクルマには
赤色のナンバープレートが付きます。
こんなの。

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最初の文字「외(ウェ)」は漢字で「外」。
赤や緑のナンバーはみんなコレなので
「外交」や「外務」の「外」かなぁと思ってたんですが
なぜか自家用車の黄色にもあってちょっと詳細不明。

実際、黄色や赤色、緑色はあまり街では見かけません。
青色の次によく目にするのはこれ。

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黒いナンバープレートです。
これは軍や政府関係車両に付けられるのもの。
数字だけで表示されますが、区切りパターンがいろいろ。
詳細な区別はちょっとわかりません。聞きづらいし…
でも、そういうクルマが2番目に多いというのは
北朝鮮らしい、と言えばらしいような気もしますね。

ナンバープレートの接写ができなかったので
青色プレートの細かいディテールなどについては
恥ずかしながら手描きイラストでご紹介。

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このほか、「교통안전(交通安全)」と赤い文字が入った
パトカー用の白地プレートや

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バイク用のナンバープレートもありますよ。

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また、街を走るトロリーバスには
専用の数字3ケタの車両番号標がつけられてます。

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これはたぶん単純な通し番号ですね。

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ちなみに、北朝鮮では
自転車にもナンバープレートが付いてますよ。すごい。

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なんか、自宅でも作れそう…と言ったら怒られますが
まさに手書きの金属プレート。
「선교」は「船橋」でピョンヤン市内にある区の名前、
各区ごとに登録するようですね。

●北朝鮮の運転免許

マニアックついでに
あまり知られていないネタをもうひとつ。
クルマを運転するには欠かせない運転免許です。

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あ、いや。これは北朝鮮の免許証じゃありませんよ(あたりまえ)。
80年代に大ブームだった「なめ猫」の免許証。
すみません、ふいに思い出してしまいました。超絶懐かしい。
結局、買ってもらえなかったんだよなぁ…

それはさておき。
日本だと高卒の春休みにサクッと、みたいに
若い子たちが比較的簡単に免許を取れますし、
ふだんでも身分証代わりにイメージされてるほど
広く国民一般にいきわたっている感じですが
北朝鮮での免許取得はなかなかに大変です。

そもそも共産主義国の北朝鮮において
ドライバーというのは「職業」のひとつで
運転免許は仕事のために必要な資格という考え方。
日本で言えば医師免許や教員免許みたいなもんです。
だから「思い立ったらとりあえず」とはいかなくて
自動車の専門学校に2年間通わねばなりません。
そこで運転技術や法令だけでなく
自動車の構造や整備までがっちり勉強し、
試験に合格して初めて免許証ゲットとなるんです。

だから北朝鮮で運転免許持ってる人って
簡単な故障なんかは自分で直せちゃうんですよ。
そのへんは日本よりすげーなとも思いますが
逆に言うと北朝鮮で免許を取るということは
将来そういう仕事に就く、と進路を決めることでもあるんです。
なので、運転免許証にはその人の勤務先である
「所属」がきちんと記入されています。

もちろん免許を取っても運転以外の仕事に就くこともあり、
逆に他の仕事を辞めて新規免許取得することも可能だそうですが
少なくとも日本のような気軽さでないのは確かです。

で、その北朝鮮の運転免許証とはどんなものか。
ぜひ見てみたい!とマニアの血がまた騒ぎますww
しかし免許証というものは一応政府機関発行の公文書。
やはりこういうお国柄ですから、そうホイホイと
「見せて?」「いいよ♪」という性質のものではありません。

それでもなんとか滞在中、つたない朝鮮語で
担当ドライバーさんに一生懸命話しかけて仲良くなり
お目付け役のガイド氏もかなり心許してきた最終日、
ついに現物を見ることができました。

さすがにモノがモノですので撮影は遠慮しましたが
ここでもまたイラスト力(?)を頑張って発揮。
まぁだいたいこんな感じですよ。イメージは伝わりますかね。

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もしかしたら、日本初公開?かも。

いかんせん画力がアレなのでうまく表現できませんが
あらかじめ模様や項目などが印刷された専用の台紙に
プリンターで名前や日付を加刷して写真を貼り付けてます。
写真は彼が白黒だっただけでカラーの人もいるかもしれません。
また、年の表記は西暦ではなく
北朝鮮オリジナルの「チュチェ(主体)年号」。
金日成主席が生まれた1912年を元年とする紀年法です。
ちなみに2018年は「主体107年」。

そしてこれ、日本のような硬質のプラスチックカードではなく
紙をいわゆるパウチで仕上げたちょっとチープなつくり。
なんでかというと、イラストでも描きましたが
交通違反でヤラれたときに、1回の違反で1個ずつ、
免許証に直接穴をあけられちゃうからなんです!
なかなかにいエグいシステムです。
でも確かにこれだと違反回数が一目瞭然。
日本だとゴールドかどうかくらいしか区別できませんからね。

そして、そのパンチ穴が5個になると
免許証の等級を下げられちゃうんだそうです。
北朝鮮の運転免許は4級から1級まで4段階。
等級によって運転できる車種に違いがあります。
最高位の1級だと特大でも特殊でもなんでも
すべての種類の自動車が運転可能。

このイラストの緑色は3級。
これでも普通乗用車のほか、15トンまでの貨物車と特殊車、
そして定員50人までのバスを運転できます。
3級でこれなら、1級しか乗れないクルマってどんな…?
ちなみに免許証の色も等級ごとに違っていて
1級になると赤色なんだそうです。
免許証の有効期間も長いらしい。

例の専門学校を卒業するとまず4級からスタート。
その後は一定の経験年数ごとに上級の受験資格ができて
必要に応じて等級を上げていく仕組みになっています。
違反で級を落とされると、再受験も制限されちゃうそうです。
ただ、その「違反」が
スピード違反も飲酒ひき逃げ(あるのかな?)も
同じ違反で穴1つ、かどうかははっきりとわからずじまい。
少なくとも日本のように細かく点数で分けられてはいないようです。

このようにいろいろ難しい北朝鮮の免許制度ですが
これからどんどんクルマ社会が発達して
運転する人が増えるようになっていくと、
また制度も変わっていくのかもしれません。

…と、今回はやっぱりちょっとマニアックすぎましたね(苦笑)

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