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旅立つ前に(3)~行ったらどんな感じなの?~

これもみなさんかなり心配されることですよね。
以前からいろんな「伝説」がありますし。

→行動中はトイレまでずっと監視され続ける
→ホテルに盗聴器や隠しカメラが仕込まれてる
→体制を批判する発言をしたら逮捕される
→そもそも行ったらアブナイんじゃ?  …などなど。

ま、結論から言えば

「そんなに心配することないです」。

たしかに多少の不便さや戸惑いはありますが
まぁそこそこ普通に旅行できますよ。
でも一番の特徴と言えば、まずこれでしょうね。

●ガイドは常に同行です

それも2人。

よく、1人は通訳担当で
もう1人は監視担当、なんて話も聞きますが
とくにそういう分担はないようです。

例えば施設見学の時など
入場手続きなどはガイドが行うんですが
それがまだ終わらないうちに施設側の説明係が来て
お構いなしにとっとと説明始めちゃったりするんですね。
そんな時にはもう一人が急いで通訳に入ります。

また、次に行く場所や食事の手配などの連絡交渉で
一方が電話に追われて手がふさがっているときに
もう一方がワタシの相手をする、という感じで
臨機に互いがフォローする体制になっているとのこと。
要するにゲストであるワタシへの対応に
「穴」が開かないため、ということだそうです。

ま、イジワルな見方をすると
目を離さないようにするため、とも言えますが。

なお、ガイドは2人とも基本的に日本語は堪能なので、
ふだんの会話に不自由はありません。
ただ、これが数十人の団体旅行ならともかく
一人きりの個人旅行でも必ず2人ついてくるので
たしかに監視・護送(笑)されてるような息苦しさはあるかも。

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車内はこんな感じで。

1人だとたいてい普通乗用車になります。
で、前にはドライバーとガイドA、
後部座席に旅行者とガイドBが基本スタイル。
原則として旅行者は前に座らせてもらえません。
「安全上の理由」だそうです。シートベルトしても。
だから余計に圧迫感を感じるかもしれませんね。
イケメンや可愛い女子のガイドに当たれば別ですが。

…私は2人ともおっちゃんでしたよww

とは言えこれはもう向こうの都合というか
制度上北朝鮮へ来る外国人観光客はみんな
それぞれ「代表団」という扱いだから仕方ない。
たとえ1人しかいなくてもツアーにはいちいち
「日本第77次代表団」みたいな名前がつきます。
ガイドもドライバーも入れて「団」なわけで
あくまでもタテマエでは「団体旅行」だから
やはりガイドも最低2人はつける、という
かの国ならではの融通の利かなさなのでしょう。
このへんがまた北朝鮮らしさとも言えそうです。

ちなみにドライバーさんはほぼ朝鮮語しか話せません。
なので会話に入ってくることはないんですが
カタコトでも朝鮮語で話しかけると喜んでくれます。
そこはやはり我々の「団」の一員ですから(笑)
挨拶くらいは覚えておくとよいと思います。

●ガイドを味方に付けよう

北朝鮮旅行にはつきもののそんなガイド制度。
わずらわしいと批判的な意見も多く聞きますが
どうせ外すことはできないものだし、
(お高い)旅行代金に含まれているもの。
せっかく専属でお世話してくれるというのですから
ここはうまく付き合うのが得策です。

ガイドの言うことに従わなきゃいけないということは
逆にガイドさえ良いならその場はOKということ。
現地での行動はすべてこのガイドが
彼らの責任と判断で仕切るんですから。

さて北朝鮮に入国した日の最初の夜。
夕食後にホテルでそのガイドとの打ち合わせがあります。
旅行中の全日程について確認する作業なんですが
事前に代理店を通じて入れておいたリクエストがあれば
ここでそれらがちゃんと盛り込まれているか確かめます。
案外無視されてたり勝手に変更されてることがあるのでww

また、もし別の希望や発注後に思いついた要望があれば
追加で提案したりしながら毎日の行程を固めていきます。
ま、ここでどれだけきっちり決めたとしても
そこはもう「ウチの都合が最優先」という
社会主義独特(?)のお国柄ですから
当日になってからまたあれこれ理屈がついて
結局はなかなかその通りに行かないところも
北朝鮮旅行のお約束なんですが、
とにかくこの時間が旅行の成否を決めると言って良いでしょう。

このとき旅程以外にもいろんな話をして自分自身を知ってもらい
その中で今回見たいところ、やりたいことを伝えると良いです。
ちょっと無理かな、と思うようなことでも
ここでは遠慮せずどんどん伝えます。
なんたってこちらは「お客様」。提案するのはタダですから(笑)
特に追加のリクエストは日程の途中で言いだしてても
「今からでは調整できません」と断られることが多いので
あらかじめ考えて用意しておくことが大切です。
紙に書き出しておいて、それを渡してもいいでしょう。

「旅程以外」の話もできるだけするのがポイント。
ひたすら一方的に「あれ見たい」「これしたい」では
ただのウルサイ客でしかありませんw
興味あることや経験、仕事、ふだん考えていることなど
自分まわりのことと絡めて話すとガイドも親近感を持ってくれます。
やっぱり北朝鮮とは言えそこは人間ですからね。

さらにここで日本製のタバコなどのちょっとしたお土産も
一緒に渡すとさらに効果的…な気がします。たぶん。
まぁそのへんも昔の中国やソ連な感覚がまだあるわけで。
そのほかにもお酒やウイスキーのミニボトル(もちろん大でも!)、
女性だと常備薬やシャンプー、リンスなんかも喜ばれます。

とにかく旅行中はもう離れられない一蓮托生の間柄。
こちらから心を開いて味方につけた方が結局おトクです。
無理やワガママも結構聞いてくれるかもしれませんよ。

●で、「盗聴」や「監視」は…

今回写真が少なくて、読みづらくてすみません…
この話題では入れられる写真があまりないのでご容赦を。

こうして日中はずっとそばにガイドがいるわけですが
夜ガイドと別れた後はどうなのか。
夜通し部屋の監視カメラと盗聴器でチェックされ
一人でホテルを抜け出そうとすると
どこからともなくガイドがやってくる…なんて話も聞いたことが。

たしかにガイドは基本的に旅行者と同じホテルに宿泊します。
とは言え夜中まで盗聴・監視しているというのは
現実的ではないでしょうね。
そこまでするメリットがないからです。労力や人員に見合わない。
各国首脳が密談でもするならともかく
ワタシら庶民の旅行者が部屋で何をしようがつぶやこうが
あちらとしては別に何の影響もありませんし。
ただ、ホテルからの勝手な外出に対しては監視というより
フロント係やドアマンが見つけるとすぐに
ガイドへ連絡があって駆け付けるということでしょうね。

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  ↑ 高麗ホテルのドアマン。けっこう優しいです。

外国人の単独行動というのは「あり得ない」ので目立ちます。
で、何で単独行動がダメなのかというと
街なかで異質なだけでなく、もしどこかの商店を訪れたり
アパートの敷地に入ったりしたらトラブるため。
原則として一般商店は外国人に対応することができません。

最近増えた北朝鮮の「キオスク」型売店。

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ちょっと買い食い、とかしてみたいですけどね。

またアパートには管理人がいて住民や来訪者に対応しています。

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おおむね階段ごとに人民班という単位組織に分けられ、
それぞれに管理人室が設置されています。
だいたい、おばあさんが常駐してることが多いようです。
日本で言う「シニアパワーの活用」ですね。
そうしたところへ突然フラフラと日本人が現れては
対処に困って即通報、となりかねず
そうなると担当ガイドはこっぴどく叱られるので困るのです。

そのほか、道路での交通ルールも当然日本と異なります。
例えば地下道を通らずに地上を横断すると違反で捕まる。
そうなると警察沙汰です。知らなかったでは済みません。
そういう面倒ごとを防ぎたいので
いろいろと行動が制限されてしまい
結果、なんだか常時監視されてるように感じるのかと。

体制批判などについても
公の場で大声で叫んだりするならともかく
部屋で友人と語り合う程度なら問題ありません。
ある程度ならガイド相手に議論もできるそうです。
彼らはそういう対応にも慣れていますよ。

このように、最初に書いたとおり
基本的にガイドの言うことに従ってうまくやっていれば
旅行中はまったく心配いりません。
むしろ徹底的にトラブルを避けようと
先回りでいろいろ過保護にかまってくれる(苦笑)ので
逆にこれほど安全な旅行もないと言えます。
そんなの面白味がないと思う人がいるかも知れませんが
国交のない国で刺激を求めた行動をとるリスクもどうかと。
ワタシたちはジャーナリストではないので
できる範囲で楽しむ、のが一番じゃないでしょうか。

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