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ピョンヤン市内をゆく(3)~地下鉄に乗るっ!~

●やっぱり外せません

ピョンヤン観光での鉄板ですよね、
地下鉄の体験乗車。

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鉄道ファンじゃなくてもココロ踊ります(笑)
ふだんは常に専用車に乗せられてばかりですが
唯一、一般市民と同じ空間を共有できるのがこれ。

ピョンヤン市内の交通機関には地下鉄のほか
トロリーバスや路面電車もあるものの
(普通のバス路線もある模様)
どちらも外国人観光客が乗ることはできません。
いや、おカネ払って貸し切っちゃえば
確かに乗れないことはないんですが。
でもそれだとちょっと違うんだなぁ。

地下鉄だったら、限られた区間とはいえ
普通に改札入ってホームへ行き、
やってきた電車に市民と一緒にわらわら乗り込めます。
日常の暮らしにちょっと触れられる貴重な体験。
もちろん今回も楽しみでしたよ。
さぁ駅へレッツラゴー♪

●ピョンヤンの地下鉄路線

最近ではもうかなりあちこちで
ピョンヤン地下鉄の乗車体験記が世に出てるので
地の底まで潜るような長~いエスカレーターに

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宮殿のように豪勢なつくりのホームなど。

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そういったお話はすでにけっこう詳しく知られていますね。
今さらここで詳しくご紹介するほどでもないようなww

また、この地下鉄経路案内板も有名かと。

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現在駅が赤いランプ点灯で表示されていて
行きたい駅のボタンを押すとそこまでの経路が光るやつ。
タイトルの赤い大きな文字は「総合案内板」ですね。
その前についてるのは地下鉄のマーク。
「지하철도(チハチョルド=地下鉄道)」の最初の一文字
「지(チ)」を丸で囲んでます。
北朝鮮では「地下鉄」と縮めずに
今も「地下鉄道」と堅苦しく呼ぶんですよね。

下の青い文字は
「どこへ行かれますか?」と書かれていて
その下に全駅のボタンが並んでます。
駅名は日本のように地名ではなくて
「勝利」「戦友」「革新」「凱旋」…などなど
社会主義の理想とか戦闘とか
そういう名前がついていて
場所がどこだか全然わかんない(笑)
なので、案内板でも駅名の下にカッコ書きで
「(平壌駅)」とか「(動物園)」とか
最寄りの施設が書き添えられてますよ。

なんとまだ未完成なのに「(柳京ホテル)」も!

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これがその「柳京(リュギョン)ホテル」。
1987年に着工した105階建て高さ330mという
世界最大級のホテルなんですが、途中中断などで
30年が過ぎた今でも未完成。
最近ずいぶんキレイになって開業間近との噂もあります。

約20年前の1996年ごろはこんな感じでした。

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着工後10年でこの状態…

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コンクリむき出しですよね。
もうこの時すでに工事は中断してたようです。

で、そこの駅名が「建設」駅ってのがシュールww
  ※青の駅名で左から4つめです

でもこの地下鉄駅名。
いかにも「北朝鮮らしい」といった感じで
日本人からすると「コワい」などと言われることも。

まぁ確かに独特の命名法なのは事実ですが
駅名を漢字に直すことができて「日本語的」に考えちゃうから
余計に違和感を感じる人が多いのかもしれません。
これがもし漢字に直せず発音どおり単純に
「スンリ駅」「ポンファ駅」「ヒョクシン駅」とかのままなら
外国の駅名だと思えばそう特別な感じしませんよね。
シベリア鉄道の始発駅「ウラジオストク」だって
これで耳慣れているから全然ヘンに意識しませんが
訳すと「東方を征服せよ」という意味らしいので
  (※「東方の領土」だという説もあります)
これも漢字にすれば「東方征服駅」ということにww

さてピョンヤンの地下鉄はこの案内板のとおり
「復興」―「赤い星」間の「千里馬線」(赤字の駅名)と
「光復」―「楽園」間の「革新線」(青字の駅名)の2路線。
厳密には「千里馬線」のうち
南の終点「復興」駅から2駅の区間には
「万景台線」という別の路線名がついていて
3路線あることになるんですが
「万景台線」と「千里馬線」は常に直通で運転してるので
事実上は一本です。色も分けてませんよね。

日本人観光客が乗車するときは
この赤いランプがついてる「復興」駅から
次の「栄光」駅までの1駅間が多いようです。
ワタシは今回、旅行を申し込む際に
全線乗車をリクエストしてたんですが
「時間がないから」という理由で却下。
結局5つ先の「凱旋」駅までとなりました。
もう一駅がんばって「戦友」駅で
「革新線」の「戦勝」駅へ乗り換え体験したかったなぁ。

●以前の「案内板」は…

ところでこの光る案内板。
実は20年前からあるんですよ。

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      (1998年ごろ、おなじ「復興」駅で撮影)

いまのようにLEDではなく電球でした。
またそれぞれの路線の先に2つずつ
駅名がない「開業予定」みたいなランプがあったんですが
今はなくなってます。もうあきらめたんですかね(笑)

それと青の「革新線」の右上から2つめの「光明」駅が消滅。
この近くには以前、金日成主席が執務していた
錦繍山議事堂という主席官邸がありました。
主席が亡くなった後はそこへ遺体を安置するため
錦繍山記念宮殿として改築したんですが、
(現在の名称は「錦繍山太陽宮殿」)

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       錦繍山太陽宮殿の遠景

どうやらその頃に駅が廃止されたそうです。
理由はいまいち不明。もしかすると
宮殿参拝者専用の路面電車が新設され、
地上の別の場所から走るようになったので
参拝ルートをそちらへ一本化したのかもしれません。
でも日本的な感覚なら便利な最寄り駅として
むしろ整備に力入れそうですけどね。

なにはともあれ
この案内板は北朝鮮「ご自慢」のようで
地下鉄乗車の時には必ず前で説明され、
20年前から変わらず
ボタンを実際に押す体験を勧められます(笑)
ま、たしかに面白いんですけど。
今みたいにスマホで乗換検索できなかった頃は
日本にもあると便利だなーと思ってました。

●地下鉄の車両

さて無事にホームへと降り立つと
ほどなく列車が入ってきましたよ。
日本のようにベルも放送もなく
静かに(走行音はしますがw)やってきます。
いま使われてる車両はこれ。

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以前はドイツのベルリンで走ってました。
およそ50年前に製造された車両で
現地で引退後に譲り受けたもの。
50年前の車両とは思えないほど
キレイに塗装整備され大切に使われてます。

ただ車内冷房はなく、ドアは半自動。
閉まるときには一斉自動ですが
開けるときは手動でスライドします。

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もちろん走行中はロックされてますのでご安心を。

ちなみに20年くらい前までは
オリジナルの車両(ただし中国製)が走ってました。

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こっちのほうがなんかカッコ良くて好き。

当時の車内はクロスシート(進行方向に垂直)です。

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あたりまえですが肖像画もお1人のみ。

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実は2年ほど前に「完全国産」とうたう
新型車両が導入されたので

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ぜひ今回はコレに乗ってみたかったんですが
まだ1編成しかないうえに運行も不規則らしく
残念ながら乗車はかないませんでした。
こちらはエアコン完備で
車内には液晶モニターもあるらしいので
すごく楽しみだったんですけどねー。

一方、今の車両でも
最近一部にLEDの表示器が付き、
「次の駅は〇〇駅…」と文字を流しながら
案内するようになってます。

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これはちょうど「烽火駅」と表示が出てるところ。
でも放送案内はありません。文字だけが静かに流れます。

そして意外なこと(?)に車内はけっこうな混雑!

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まぁ乗る曜日や時間帯にもよるんでしょうが
今回乗り込んだ列車はほぼ満員。
なんかニッポンの通勤電車と変わんない雰囲気です。
奥の方に肖像画が見えることと
節電のために電灯の半分くらいが消され、
車内がちょっと薄暗いところは違いますけどね。

で、ふと座席の方へ目をやると…

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熱心にスマホをいじる人が並び、
横にはそれを覗き見するオヤジ(苦笑)。
車内風景は20年で大きく変わりました。

●駅のホームを眺めてみると

ご存知のとおり内装はやたら豪華な駅ホームですが
壁画や照明、彫像などのニギヤカさの一方で
公共交通機関としては重要であろう
乗客に対するサービス設備はいたってシンプル…
というか、ほとんど何もない状態。
まず、ホームではお約束(?)のベンチが見当たらない。

それに、日本では最近細かすぎるくらいに親切な
駅名表示板や出口方向案内板の類も
ここピョンヤンではほんとに控えめ。

壁面へ申し訳程度の表示だけがついてたり

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    (「戦友駅←凱旋駅」と書いてます)

天井近くのはるか頭上にちょこんと吊られてたり。

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こんなとこ誰が見るんだよww

出口案内もこんなの。

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「凱旋門」って書いてます(=凱旋駅にて)

こちらは「ピョンヤン駅」って。(=栄光駅にて)

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むしろ案内が全くない出口も多いです。

また、さっきも触れましたが
到着案内や行先案内、時刻表は一切なし。
だいたい5~10分間隔くらいでの運転ですが
そういえば時計もありません。
凱旋駅ではなんだかヘンなところに小さいのが一つ。

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トンネル入り口の脇にも
デジタル時計みたいなのがついてますが
これは時計ではなくて「タイマー」。
前の列車が駅を出発してからの経過時間が
「2:06」(2分6秒)のように表示されます。
運転士が列車の間隔を計るために使うらしく、
時計も運転士用なのかもしれません。

あ、実はこれって列車が出発したあとの写真です。
ライトが明るく点灯してますがこれは後ろ姿。
日本などでは赤いテールランプがつくところ、
ピョンヤンの地下鉄は前も後ろも白いライト。
理由は…わかりませんw

一方でどの駅にも必置で充実してるのが
新聞掲示板。
労働新聞や平壌新聞などが掲示されていて
多くの人が立ち止まって熱心に読んでます。

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新聞の宅配もあるにはあるらしいのですが
日本のようにどの新聞でも契約しておけば
毎朝各家庭に届く、という仕組みではないようです。

●地下鉄の女性駅員さん

地下鉄ではたくさんの女性が働いてます。
特に改札や出発確認などの業務は
「案内員」という腕章をつけた女性がメイン。

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        そんな目で見なくても…

それも10代の若いコがほとんどです。
まあこれらは基礎的な業務なので
「新人さん」が多く担当するのかもしれません。

列車の出発合図の札を出す様子は

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20年前と変わりません。

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昔の方が姿勢がキレイ。

彼女があの赤い丸の付いた札を上げると
出発準備完了、のサインです。

この案内員(いわゆる駅員)さん。
今はなぜか声かけて写真を撮ることは
とても嫌がられるんですが、
20年前には気軽に応じてくれました。

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制服は昔から変わりませんねー。
光の具合や写真の古さの関係で
ちょっと青が強く出すぎてますが
色もデザインも現在とほぼ同じです。

で、左のコが持ってるのが
例の出発合図用の「赤丸札(?)」。
まぁ日本で言うと駅のホームにある
「出発反応標識」の丸いランプと同じ意味かな。

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こういうの、駅によくありますよね。

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鉄道ファンしかわからんか(苦笑)

ちなみに「信号反応」と呼ぶ鉄道会社もありますよ。

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その名のとおり、駅の出発信号機と連動していて
出発可能の合図を車掌さんや駅員に知らせるランプ。
ホームの後ろの方では信号機見えませんからね。
つまり、この札を上げることが
ランプ点灯と同じ意味になり出発できる、と。

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しかしどうやらピョンヤン地下鉄には
その信号機が設置されていないようなので
ここではもうこの札が信号機そのものらしい。
そのうえ発車ベルも車掌の笛もないので
彼女の右手だけが列車の出発を左右するという
なかなかに責任重大なおシゴトですよ。

ただその割には案外ユルイいというか
毎回タイミングがなんか微妙…

何回乗っても地下鉄は楽しいです。

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