見出し画像

20種類の料理をひたすら蒸して味わう、岐阜の魚末

魚末という店で夕食。岐阜市の東北、関市という山の中の町にある蒸し料理の専門店。

6年前に一度来た。
予約が取れないことで有名な店で、そのとき3年後の予約をとって楽しみにしていたのだけど、コロナの真っ最中でボクはくることができなかった。
そこから3年待っての2度目の訪問。
お店の外観はそっけなく飲食店というよりも仕出し屋さんのような設え。

座敷に囲炉裏のようなテーブルが置かれ、大きガスバーナーが埋め込まれている。上に鉄釜。穴の空いた板の蓋。そこにせいろを置いて中の素材や料理を蒸して仕上げていくんですね。
目の前で出来上がったばかりの熱々をハフハフしながら食べるというのがたのしくて、今の季節にこの上ないほどにオゴチソウ。

まずは活きた鮑。これだけ15分ほど時間がかかる。カンパチの刺身を食べつつ、蒸気に混じって磯の香りが漂ってくるのをたのしみながらピピっとタイマーがなって蓋を開けたらあらまぁ…。見事にきれいに蒸しあがってる。
殻から外しカプッと豪快に齧って食べる。ムチュンと歯切れてやわらかで磯の香りと旨みが広がる。肝も甘くておいしくて幸先の良いオゴチソウ。

ここからはすべてのせいろが6分で蒸し上がるよう下ごしらえがなされてる。
蒸しあがったせいろを持ち上げ下にせいろを置いて蓋したところに乗せて食べていく。上のせいろを食べ終わった頃合いで下の料理が蒸し上がるという見事なシステム。合理的にしてよく考えられた提供方法。感心します。
基本、ひとつのせいろに料理が2種類。

塩をまぶしたエノキタケ、田楽みそを添えたよもぎ豆腐にカリフラワー。
続いて串にさした鶏肉団子に器に出汁と芽キャベツ、百合根、ニンジンがおさまったもの。
蒸気にあたって野菜はふっくら仕上がっていて出汁までおいしい。

料理はどんどん続きます。さやに入ったそら豆に豆乳に胡麻。
そら豆のさやに貼り付く綿の部分をスプーンでこそげ取って食べるととろける。甘くて緑の香りもうまい。

豚バラ肉を巻いた万願寺とうがらし。
出汁につかったもずくに生姜。
熱々になったもずくのおいしいこと。なめらかにしてザクザク歯切れてお腹の中に流れ込む。

分厚いしいたけ、芯をくり抜き出汁を含ませた蕪にうずら卵を落としてトマト、それからズッキーニ。
ザラザラとした蕪の食感に風味を心置きなく味わえる。豆腐の底には海苔の佃煮が仕込まれていてよくかき混ぜて食べるとこれがなんともおいしい。蒸したはまぐりを殻ごと掴んで汁も一緒にズルンと食べる。
ぬれ煎餅で餅を挟んで蒸したのが不思議なおいしさ。とろける…、なのにぬれ煎餅のホツホツ感の名残を感じる。揚げた野菜を蒸して食べるのもまたまい。

薄切りの牛肉をもやしの上にのせて蒸す。蒸すと色が変わってしまいますからぜひ、蒸す前に写真を撮ってくださいね…、なんて心遣いがありがたい。

噴き出す蒸気の量が少なくなってくるとお店の人がやかんをもってやってきて、お湯をザザッと注いで蓋する。
料理はどれも味があらかじめ整えられてて、ポン酢や生姜醤油が用意されているのだけれど、それらがほとんど減っていかない。したごしらをちゃんとしているから蒸すという一種類の調理法でも飽きずに料理が食べれるんでしょう。

海老と野菜の炊合せを蒸したもので料理は最後。団子を蒸したもので〆。
都合なんと20種類の料理を食べてお腹いっぱい。

なのに食事がまたおいしい。菜飯にカリカリ梅を刻んでまぜたご飯にきゅうりとカニの和物、それから茶碗蒸し。ご飯もおいしく茶碗蒸しがびっくりするほど美味しくしかも具だくさん。堪能しました。また3年後にまいりましょう。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?