「この作品が本当に好き」と言う人の意見には、批判するにしても敬意は払うべきでは。
この話。
経緯を説明すると、「ワールドトリガー」で女性キャラのみ胸のカップサイズの表記があることを批判した増田(以下元増田)に対して、上記の増田(以下レス増田)が批判をした。その後、元増田が消えていたという話。
レス増田は
こういう罵倒や人格攻撃を含む内容なので、読む際は注意。
元増田がバズっていた時「また価値観のアップデートとか言っているのかな」と思って読まなかったが、レス増田もバズったので議論になっているのかと思い読んでみた。(この時点では元増田も残っていた)
意見自体はレス増田と同じだ。
元増田は消えてしまっているので、その内容はレス増田の引用+自分の記憶に基づいた限りのものになるが、
元増田は確かに
「今の倫理観はこうだ(アップデート論に近い)」
「作者の性癖から描いているのでは?(内面の決めつけ)」
「ルッキズムという言葉を持ち出している(男キャラには適用しないのかというツッコミを秒でしたくなる)」
と、これまでのさんざんツッコミが入っていることを言っている。
元増田の内容は、レス増田がそう受け取ったように「これが今の時代の正しい価値観なのだ」とも捉えられる言い回しだ。
ただ全体を読んで、各箇所の言い回しは元増田が本当に言いたいことというより、どこかで読んだ言葉や理論(?)のつぎはぎにすぎないのでは、と感じた。
「自分の気持ちを表せる言葉を見つけることが出来ないから、色々な場所で見聞きした言葉や理屈をそのまま借りてきて懸命に自分の気持ちに近いものを表そうとしている」
こういう風に自分には読めた。
元増田が言いたいことは、
「『ワールドトリガー』が素晴らしい作品で大好きだが、どうしても胸のカップ数の表記だけが気になる。必要があると思えないので、出来れば止めて欲しい」
自分はこう受け取った。
自分の中で元増田の意見でポイントなのは
①自分の気持ちがあくまで「一読者である自分自身の気持ち」に過ぎないと分かっている。その前提で、気持ちを伝えたい。
②元増田は「ワールドトリガー」が滅茶苦茶好き。
この二点だ。
自分は批判の内容以前に(その内容に仮に賛成だとしても)
「自分の認識能力には限界があって、関心がない物事を雑に扱ってしまっているのではないか」
こういう発想がない人間は嫌いだ。(「価値観のアップデート」という語は、こういう人間かどうかを見分けるひとつの基準として便利だった。最近は見なくなったが)
さらに創作関連では、「その作品を読んだこともない、もしくは大して興味もないのに、その作品の文脈はガン無視で自分の認識のみで意見する人」はその意見に注意を払わない。
逆にそれが自分と違う意見であっても、「この人は本当に創作が好きなんだ」「その作品が好きなんだ(好きだったんだ)」と思う人の意見は聞きたい。
聞いたうえで批判するときは批判するし、最終的には作者や著作権者が決めることだと思っているが、出来うる限り相手が何を言いたいのか、何を気にしているのか、それは何故か聞きたいし、気持ちはわかりたい。
議論の目的は論破ではなく「合意を形成すること」なので、お互いの信頼関係が前提になる。「創作が好き」という人は、自分にとってその気持ちが信頼になるので、
「『自分』というバイアスを外して、書き手が何を言いたいのかを読み取るようにする」
こういう相手を信頼する姿勢が前提としてセットされる。
元増田は「ワールドトリガー」という作品が大好きで(文脈や世界観を理解したうえで)批判をしている。「内容はおろか背景も何も知らず、自分の認識だけで評価する人間」とは批判者として立ち位置がまったく違う。
他の人にとってはわからないが、自分にとっては「批判者がどの立ち位置にいるか」はとても重要だ。
その歴史や経緯や背景や世界観を知っている人からの批判には、「自分(の認識・判断)というバイアスを出来るだけ外して、相手が何を言いたいか、その認識はどこからきているのかを理解することに注力する」という敬意を払う。
自分は元増田のような「この作品が大好き」と言う人が好きだし、そういう人の意見や感想は、それが例え自分とはまったく違うものでも聞きたい。
そういう人の意見は、批判するにしても上記に書いたような敬意を払ってするべきだと思う。
レス増田もさんざんこういう意見を見てきてうんざりしていたのかもしれないが(そしてその気持ちは分からないでもないが)、今までの鬱憤を理論的に隙がある相手を見つけたからぶつけているように見えるし、元増田にそれをぶつけるのは筋違いではと思った。
ちょっと横だが、こういう話が持ち上がった時に、「(読んだことがないから何も言えないが)とりあえず読んでみる」という人がいいなと思う。
どんな問題でも「自分は知らない」という前提で、「まず知ろう」「知っている範囲のことだけを話そう」「知らないことは知らないと認める」人が好きだ。
自分もこういう姿勢を忘れないようにしたい。
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