斎藤吉久

昭和31年、崇峻天皇の后・小手姫が養蚕と機織りを教えたと伝えられる福島県・小手郷に生ま…

斎藤吉久

昭和31年、崇峻天皇の后・小手姫が養蚕と機織りを教えたと伝えられる福島県・小手郷に生まれる。弘前大学、学習院大学を卒業後、雑誌編集記者、宗教紙編集長代行などを経て、現在フリー。著書に『天皇の祭りはなぜ簡略化されたか』など。「戦後唯一の神道思想家」葦津珍彦の「没後の門人」といわれる

マガジン

  • 王位継承──ヨーロッパで何が議論されたのか

    ヨーロッパでは、20世紀後半から王位継承法が変わり、女王容認、絶対的長子相続への変更が進みました。これらの動きに呼応して、日本でも女性天皇容認、女系継承容認論が唱えられていますが、実際のところ、ヨーロッパではどのような議論が行われたのでしょうか?

  • 式典準備委員会資料を読む

    令和の御代替わりを前に式典準備委員会が開かれました。その資料を精査します

  • 近世・近代の天皇・皇室 by 阪本是丸

    平成29年9月22日に埼玉県神社庁で開かれた明治天皇御親祭150年記念研修会の発表用レジュメです。ご本人の了解を得て転載しました

  • 皇位継承の儀式──践祚、大嘗祭そして改元まで

    平成の御代替わりでの議論は徹頭徹尾、政教分離がテーマでした。そして令和の御代替わりもまたしかりでした。天皇がなさる儀礼には宗教性があるということなのですが、それは如何なるものなのでしょうか?

  • キリスト教およびキリスト教徒

最近の記事

王位継承ルールの「変更」を検討したイギリス下院特別委員会報告書──伝統主義を捨てたのか(令和6年5月19日)

イギリス下院の政治・憲法改正特別委員会(Political and Constitutional Reform Committee)は2011年、政府(キャメロン内閣)が提案する王位継承ルールの変更を検討し、報告書をまとめた。委員会で何がどのように議論されたのか、あるいは議論されなかったのか、同年12月に発行された報告書をもとに、概要を以下、紹介する。 委員会のメンバーはグラハム・アレン議員(議長。労働党)ほか10名。うち保守党が5名、労働党が5名、自民党が1名。 報告書

    • 「王朝の支配」を吟味しないブラックバーン教授の調査報告書(令和6年5年15日)

      イギリス下院の政治・憲法改革特別委員会の報告書「Rules of Royal Succession, Eleventh Report of Session 2010–12」(2011年12月)に、ブラックバーン教授(キングズ・カレッジ・ロンドン。憲法学)の調査報告書(同年11月)が載っている。 同年10月のパース協定(Perth Agreement)以後、イギリス国内では王位継承に関して、どのような議論が行われたのか、その実態を知るため、とくに関連する部分を拾い読みしてみる

      • パース協定の中身──イギリス下院の報告書から(令和6年5月14日)

        河島太朗・国会図書館主任調査員のリポート「イギリスにおける王位継承法の制定」(2013年12月)は、「オーストラリアのパースで行われた英連邦諸国首脳会議の2011年10月28日の会合では、16の全領国の首相が①男子優先の王位継承を止めること、②ローマ・カトリック教徒と婚姻をした者に関する王位継承の欠格条項を撤廃すること(後述)の2原則で合意に達した」と記している。 〈https://dl.ndl.go.jp/view/download/digidepo_8382748_po_

        • 「退位の儀式など歴史にない」と明言した有識者は皆無──第2回式典準備委員会資料を読む 11(2018年6月25日)

           有識者ヒアリングの2番目の設問は、「天皇陛下の御退位に伴う式典のあり方」でした。  これに対して、政府がまとめた資料によれば、4方とも共通して「国事行為として、国の儀式とする」「剣璽を安置する」と述べ、園部、所、本郷の三氏は「退位の事実を広く明らかにする儀式とする」「陛下のお言葉がある」いう意見で一致し、さらに石原、園部、所の三氏は「平成31年4月30日昼に実施」で一致したのでした。  誰一人として、所、本郷両氏の2人の歴史家も含めて、皇室の長い歴史において「退位の礼」

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        • 天皇の祭りの「米と粟」
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        記事

          皇室典範特例法を批判する──取り戻さなければならない皇室の歴史と伝統 by佐藤雉鳴(2018年6月24日)

          ▽1 天皇陛下のおことばの衝撃  平成29年6月9日、皇室典範の特例法が成立しました。さらに平成29年12月13日には、その施行期日を、二年後の平成31年4月30日とする政令が公布されました。平成の代がその日をもって終わるということです。昭和、平成と生きていた私には、いろいろ思うところがありました。  思い出せば平成28年の8月8日午後、私は新宿にいました。あの日の夕方、友人と新宿で会食の予定がありました。それで少し早めに出て、天皇陛下のビデオ・メッセージを家電量販店の大

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          訳知り顔の「神聖天皇」批判を批判する by 阪本是丸──氷川神社御親祭150年記念講演の資料から 1(2018年7月7日)

           平成二十八年人月八日、天皇陛下は「退位 (譲位)の意向が強く滲み出ている」とされる「おことば」を、国民に向けて発表された。それから一年有余が経ち、すでに(平成30年)六月には「天皇の退位等に関する皇室典範特例法」も成立、公布された。  一部の報道によれば、政府はこの九月中にもこの法律の施行日 (退位期日)を政令で定める方針とのことであつたが、現時点 (九月十八日現在)では政府に特段の動きはない。その動きについては、ここで触れるつもりはないが、既に神社界からも特例法を前提と

          訳知り顔の「神聖天皇」批判を批判する by 阪本是丸──氷川神社御親祭150年記念講演の資料から 1(2018年7月7日)

          民のために祈られた歴代天皇の「大御心」 by 阪本是丸──氷川神社御親祭150年記念講演の資料から 2(2018年7月10日)

          ▽1 今上陛下「国民の安寧と幸せを祈る」  今上陛下は、「祈り」について次のように語られている。以下は平成28年8月 8日の「おことば」よリー部抜粋したものである。 「私が天皇の位についてから、ほぼ28年、この間私は、我が国における多くの喜びの時、また悲しみの時を、 人々とともに過ごして来ました。私はこれまで天皇の務めとして、何よりもまず国民の安寧と幸せを祈ることを大切に考えて来ましたが、同時に事にあたっては時として人の傍らに立ち、その声に耳を傾け、思いに寄り添うことも大

          民のために祈られた歴代天皇の「大御心」 by 阪本是丸──氷川神社御親祭150年記念講演の資料から 2(2018年7月10日)

          「現神」としての歴代天皇の敬神 by 阪本是丸──氷川神社御親祭150年記念講演の資料から 3(2018年7月11日)

          ▽1 もしも神仏判然令がなかったら  約百五十年前の明治維新によって日本の政治・経済・社会・文化・宗教などあらゆる分野・側面で大きな変革がなされたことは疑間の余地がない。それは我が神社や神道にとっても例外ではないことは今更いうまでもない。  だが、だからといって近世と近代は切断されて非連続の日本の国家・社会が出来上がったというわけでは勿論ない。  確かに、神社から仏教的要素が消滅し、別当や社僧などの僧形奉仕者もいなくなるなど、一見するところ、明治維新以前と以後では神社の

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          近世における皇室と幕府と神社の制度 by 阪本是丸──氷川神社御親祭150年記念講演の資料から 4(2018年7月14日)

          ▽1 信長・秀吉・家康と神社  織田信長、そして豊臣秀吉の出現によって、ようやく長い戦乱の時代にも「天下統一」による平和な社会への兆しが見え、日本の歴史は確実に新しい時代へと動きつつあった。いわゆる織豊時代は短期間ではあったが、それまでの中世的社会を大きく変換させ、約二百年にも亘る「封建時代」の幕開けを準備した時代であった。  神道と神社の歴史も、織豊時代の到来によって一大画期を迎えた。  このことについて、近代における「神道史学」を樹立したと評価される近代切っての神道

          近世における皇室と幕府と神社の制度 by 阪本是丸──氷川神社御親祭150年記念講演の資料から 4(2018年7月14日)

          近代の神祇行政 (略年表) by 阪本是丸──氷川神社御親祭150年記念講演の資料から 5(2018年7月15日)

          ▽1 仁孝天皇の仏式追祭と神式例祭 ・弘化三年一月二十六日崩御、四年二月六日一周聖忌を般舟三味院・泉涌寺で営む。 ・文久二年二月二日から六日に十七回聖忌、清涼殿で懺法会、常御殿前庭に下御、泉涌寺山陵を遥拝。 ・明治三年一月二十六日 仁孝天皇二十五年祭を神祇官で執行、明治天皇は賢所南庭で山陵遥拝、山陵に勅使差遣、祭典執行、また泉涌寺・般舟三昧院に中山慶子を差遣・代香、以後両寺の勅会法事を廃す。 ・明治四年一月二十六日 神祇官神殿で例祭 ・同年十月 「四時祭典定則」制定※により

          近代の神祇行政 (略年表) by 阪本是丸──氷川神社御親祭150年記念講演の資料から 5(2018年7月15日)

          「大嘗祭は第一級の無形文化財」と訴えた上山春平──第2回式典準備委員会資料を読む 13(2018年7月16日)

           政府は、大嘗祭について、「稲作農業を中心とした我が国の社会に古くから伝承されてきた収穫儀礼に根ざしたもの」であり、「皇位継承に伴う一世に一度の重要な儀式」だと理解しています。  この解釈には、何度も申し上げたように、2つの問題点があります。(1)大嘗祭を「稲作の儀礼」と解釈すること、(2)稲作儀礼と皇位継承儀礼とを直結して理解すること、の2点です。  誤った理解の原因はいうまでもなく、稲と粟の新穀を捧げる儀礼を稲の祭りと見るところにあります。  なぜそう理解するのか、

          「大嘗祭は第一級の無形文化財」と訴えた上山春平──第2回式典準備委員会資料を読む 13(2018年7月16日)

          皇室問題正常化に必要な3つのこと──御代替わりのためのささやかな提案(平成30年3月18日)

           先週、チャンネル桜の討論番組に出演させていただきました〈 https://www.youtube.com/watch?v=T0NCzePNLmU 〉。同憂の士と過ごす時間は楽しく、意義のあるものでした。お誘いいただきありがとうございました。この場をお借りして、感謝申し上げます。  ただ、3時間の長丁場とはいえ、なにしろ9人の出演者ですから、1人あたり20分しか持ち時間がありません。私などは生来の口下手ゆえ、言いたいこと、言うべきことの半分も言えないだろうと覚悟していました

          皇室問題正常化に必要な3つのこと──御代替わりのためのささやかな提案(平成30年3月18日)

          どこが皇室の伝統の尊重なのか──賢所の儀の途中で朝見の儀が行われる!?(平成30年3月15日)

           前回、言い尽くせなかったこと、正確でないことがありましたので、補足します。  まず、陛下の退位(譲位)の式典に関する政府の基本的な姿勢です。 ▽1 「何らかの儀式」を行う法的根拠  陛下の退位の日取りが二転三転したのは、何らかの儀式が想定されていたからです。昨年12月の皇室会議で「国民生活への影響等を考慮」「静かな環境の中で、こぞって寿ぐにふさわしい日」「慌ただしい時期は避ける」などという意見が示されたのは、改元のためだけではあり得ません。  元日は日程がたて込むと

          どこが皇室の伝統の尊重なのか──賢所の儀の途中で朝見の儀が行われる!?(平成30年3月15日)

          石原信雄元内閣官房副長官の意見への3つの疑問──宗教性の否定、退位と即位の分離、賢所の儀(2018年03月05日)

           遅ればせながら、2月20日に開かれた、第2回目式典準備委員会について書きます。案の定というべきか、悪しき前例の踏襲が行われることとなりそうです。  指摘したいことは何点かありますが、公表されている議事概要に沿って、ここでは有識者ヒアリングについて、とくに石原信雄元内閣官房副長官の意見について、考えてみることにします。  政府の説明によると、前回、1月の初会合で、何らかの儀式を行うことが望ましいとの意見があったことから、この日、今上陛下の退位に伴う式典など、3つの式典につ

          石原信雄元内閣官房副長官の意見への3つの疑問──宗教性の否定、退位と即位の分離、賢所の儀(2018年03月05日)

          保守政権にして平成の悪しき前例が踏襲される!?──式典準備委員会の配付資料・議事概要を読む(2018年02月05日)

           1月9日、天皇陛下の御退位および皇太子殿下の御即位に伴う式典準備委員会を内閣に設置することが閣議決定され、その初会合が同日、開催されました。  公表された資料を読むと、案の定、さまざまな不都合が指摘された、平成の悪しき前例が繰り返されるのではないかと強く懸念されます。 ▽1 前回指摘の不都合に目をつぶる?  メディアの報道によると、菅内閣官房長官を委員長とする同委員会は、月1回程度、非公開で開催され、陛下の譲位(退位)に伴う皇位継承の儀式のあり方、日程、規模などを検討

          保守政権にして平成の悪しき前例が踏襲される!?──式典準備委員会の配付資料・議事概要を読む(2018年02月05日)

          天皇の祭祀について提言する有識者がいない!?──新儀を提案し、新語を多用する歴史家たち(平成30年3月21日)

           第2回式典準備委員会はたったの40分しか時間がありませんでした。政府の会合は所詮、そんなものなのかも知れませんが、そうなると実質的な検討が根回しの段階で行われるのは必定です。したがって有識者のヒアリングはきわめて重要です。  けれども残念なことに、機能を十分に果たしていないのではありませんか。皇室の伝統である祭祀について深く語れる適任者が見当たらないからです。以前、石原信雄元内閣官房副長官のヒアリングの中身について検討しましたが、ほかのお3方とて大同小異です。 ▽1 江

          天皇の祭祀について提言する有識者がいない!?──新儀を提案し、新語を多用する歴史家たち(平成30年3月21日)