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ゴッホ アライブ東京展に行ってきた

2024年の美術館巡りは、ゴッホアライブ東京展で幕を開けました。
https://goghalivejp.com/tokyo/

といってもこれが普通の美術館とは異なる様子。まず場所は「寺田倉庫」
ってどこ?から始まります。天王洲アイル駅から徒歩5分ほどで大ポスターが目に飛び込んできました。はやる気持ちからか思わず急ぎ足に。

(入口はどこ? まだ先→)

開館時間は10-18時、入場したのが16時半。入口で係の方曰く、
「18時には会場の外にいる流れでお願いします」。
「1時間では厳しいですか?」(美術館に行くときは2時間はみるタイプ)
「いや、全然大丈夫です」と言われ安堵しながら入りました。
(すると、写真撮影、SNSすべてOKとの今どきの案内が最初に出迎えてくれました)

最初の空間では、ゴッホの主要作品と絵の変遷をパネル紹介しています。

パネル展示

ゴッホといえばひまわりや糸杉が名高いですが、私の好きな絵はこれ。
ゴッホが日本の影響を受けて描いたとあり、「さくらさくら」がバックミュージックに流れていました。

花咲くアーモンドの木 1890年

もしかして2021年に三菱一号美術館でみた絵に似ている?と思い調べたところ、それはシャルル=フランソワ・ドービニー《花咲くリンゴの木》1860~62年 でした。タイトルも酷似している。。
https://abc0120.net/2021/12/06/17706/
 何でもドービニーは、ゴッホの敬愛する画家だったとか。となるとこの絵も、ゴッホがドービニーのリンゴの木を意識して描いた可能性もあります。

浮世絵の影響を受けた痕跡があり、何より会心の出来だったこの「花咲くアーモンドの木」を描き上げた1890年にゴッホは亡くなります。
https://artexhibition.jp/topics/features/20181203-AEJ51978/

閑話休題。

ゴッホアライブの見方や順路はなく目の前に広がる空間のどこに移動して観ようと自由。注意は唯一、鏡の壁にもたれかからないことのみ。鏡の助けで多面的立体的に絵が楽しめます。

3部の空間構成
・絵と時代概要のパネル展示
・光の壁空間(下の写真)
・メインとなるゴッホの絵と言葉を大画面で楽しむ空間

クラシック音楽の旋律も美しくマッチして高揚感、臨場感が高まるのもこのアライブの特徴。ゴッホ好きならなおさらのこと、そうでなくても美術好きなら1時間半はみておくとゆっくり堪能できるでしょう。グッズ売り場込みで2時間(混んでなければ)でしょうか。

ちなみに光の壁空間は、大画面の空間に入ってすぐ右側ドア向こうにあります。大画面空間は暗い上に、中に入ってから光空間の誘導案内はないので(何より大画面に気をとられるので)忘れずにまず先に光の空間へ足を進めてください。

ドアの向こうに広がる光の壁空間(名前を失念)

メイン会場の絵は、テーマごとに(ひまわり、糸杉、花、景色、自画像、市井や農民や市井の人々、街の様子など)絵の組み合わせが大画面に映し出されます。それとともに音楽が流れ、ゴッホの言葉も映し出されます(英語と日本語)。ある程度のテンポと間をおいて次々に映し出される大画面の絵を、いろいろな角度から、立ち位置を変えて眺めたり、立ち止まったり座ってみたり、また言葉をかみ砕いたり、音楽の調べに酔いしれながら、心地よいほどゆったりとした時間が流れていきます。まだ開催直後の金曜夕方だったせいか、人もまばらで、しっとりゆっくりとした時間を過ごせました。

ゴッホには弟テオのほかに妹もいたらしく、テオや妹にあてた手紙から抜粋してゴッホの残した言葉が大画面に映し出されます。ゴーガンとの仲たがいや何かと変わった人の印象が強いゴッホですが、紹介される言葉を読みながら何だかもっともなことを語っているように感じました。例えば、これなど私でも、ふむふむそうだよね、と頷いてしまいます。

よい仕事をするためには、
しかし食べて落ち着いた暮らしをしなければならない
そして時には羽目を外し、パイプをふかし、ゆったりとコーヒーを飲む必要がある
To do good work one must eat well, be well housed, have one’s fling from time to time, smoke one’s pipe, and drink one’s coffee in peace.

ゴッホアライブ東京展

ゴッホは正直で、自分をよく知っていたに違いない、そして実はかなりまじめな気質だったのではないだろうか、とも思えました。

僕は心も魂も作品の中に込め、そのために正気を失ってしまった。
I put my heart and soul into my work and have lost my mind in the process.

ゴッホアライブ東京展

ゴッホを支え続けた弟で画商だったテオも、ゴッホの半年後に病気で亡くなります。小さな子どもと残されたテオの妻ヨーの思いはいかばかりに。生前、ゴッホの手紙の出版を話していたテオ。二人の死後24年経ち、ゴッホの絵の価値が評価され始めたのを待って手紙の出版にこぎつけたのもヨーでした。ゴッホの絵が世に出る前に手紙が先に出てはならないとの信念がヨーにはありました(カタログより)。テオ夫妻に支え続けられてきたのはゴッホだけでなく、後世の我々もまたヨーの尽力のおかげで、いま素晴らしい作品を享受できるのだとしみじみ思いました。

何ともこの空間を去り難く、それでも閉館時間が近づきつつあるので、余韻に浸りながらグッズ売り場へ。ゴッホファンの同僚を思い出し、珍しくお土産とカタログを購入してしまいました。期待以上に、とても豊かな時間を過ごすことができました。

数年前にゴッホアライブは香港やシンガポールで開催されていたようです。日本ではこれまで神戸と名古屋で開催済み。東京が最後で3月末まで開催しています。