リレーストーリー「引っ越し仕事人 完」
最終話 スマイル引っ越しセンター
無事に今日も売り上げをつくることができた。
新井はカネを美波に渡す。
その時、美波の妙な発言を博光は聞き逃さなかった。
「これで大学の学費は払えそうね。おまえ、親なんだから毎日これくらいは稼いで来いよな」
博光は冷静になって言葉の意味を解釈する。
「……もしかして、美波さんって、先輩の娘さんなんですか?」
「そうだけど」「そうだけど」同時に新井と美波が答える。
「えぇッッッッッ!? 知らなかったーッ!!!!!」
博光は絶叫する。
新井はやっぱりコイツはどこか抜けていると呆れた。
わかりそうなものだろ。
「妻とは離婚してるんだよ。今はおれが預かっててさ」
「えっ、言ってくださいよ!」
「なに? おまえ、美波に興味あるの?」
「あるわけないでしょッ……ハッ、すみません」
バツ悪そうな博光に、美波がにらみを利かせた。
「オイ、香川! おまえごときが、わたしのことを口説こうなんて百万年早えんだよ!」
美波は口の悪さでせっかくの美貌を無駄にしているタイプだった。
「わ、わかってますよ……」
博光はそう答えるだけで精一杯だ。
新井は美波に便乗して、さらにからかう。
「おまえ、最近引っ越し屋として自覚が芽生えてきたから、どうだ? この会社を継ぎたいなら認めてやってもいいぞ。美波と結婚してみるか。いいもんだぞ、家で誰かが待ってるってのは」
「カンベンしてくださいよぉ」
「香川! おまえ、わたしのことちょっとでもいやらしい目で見たらブッ殺すからな」
新井親子の口撃は止まらない。
しかし新井は感じている。
誰かが待っているのはいいものだ。
正宗が買いあげた家屋では、島本の帰りを妻とかわいい天使が待っている。
(おわり)
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