物語のタネ その七『けもパンファイトクラブ #53』

吾輩は猫である。
名前は、もうある。
ピケ丸、である。
動物達の格闘技リーグ“けもパンファイトクラブ“ファイター
vs
恐竜たちの亡霊“ゴーストザウルス“。
地球生存権をかけた“哺乳類vs恐竜“の5vs5のサバイバルマッチ。
第1戦の勝利はゴーストザウルス側に、第2戦はけもパンファイター側に。
第3戦は、けもパンファイターが連勝!
が、第4戦ペケ丸は反則負け。
これで2勝2敗のイーブン。
ファイナルとなる第5戦。
吾輩の相手はティラノサウルスのキラー・ザ・デストロイヤー!

あらすじ

負けた仲間を食っちまっただと⁈
ハム星さんから衝撃の報告を受けた瞬間、

カーン!

ゴングが鳴った。
やるしかない!
吾輩はコーナーからスッと前へ一歩を踏み出す。
気合を入れてデストロイヤーをキッと睨む。
と、奴が何か手に持っている。
凶器⁈

レフェリーも気付いた。

「デストロイヤー!凶器はダメ、捨てて!」

ニチャリと笑うデストロイヤー。

「凶器じゃねえよ、ヤスリだ」
「ヤスリ?それも凶器に違いないだろ、早く捨てて!」
「違うって言ってんだろ。身だしなみだよ、身だしなみ」

そう言うとデストロイヤーはニッと歯を出した。
ゆっくりとヤスリを歯に当てると・・・

ギシギシギシギシ

磨き出した!
吾輩だけではなく会場全体がウッと息を飲む。
その静寂の中、

ギシギシギシギシ

ヤスリで歯を磨く音だけが不気味に響き渡る。

10秒、20秒、1分、2分・・・
パフォーマンスかと思ったヤスリ磨きだが、デストロイヤーは1本1本丁寧に磨いている。
こいつ、几帳面なのか・・・

そして5分が経過。

「よし、完璧だ」

デストロイヤーが持っていたヤスリをエプロンサイドに投げた。

「ファイト!」

それを確認したレフェリーが叫ぶ。
デストロイヤーがズシッ、ズシッとリング中央に。
吾輩も一歩前に。
さて、どうしたものか。
とにかく組み合ったらダメだ。
通常ならば脇をすり抜けて背後にまわる、を繰り返すことで隙が生まれるのを狙う作戦が良いかと思うが、ティラノサウルスは強力な尻尾を持っているからその作戦は通用しないしな。

ジリッ

また一歩間合いが詰まる。
吾輩の必殺技、ドラゴントルネードクラッシャー。
天高く相手を舞い上がらせてリングの外まで飛ばすあの技。
果たして、この巨体を投げ飛ばすことが出来るのか・・・

ぶるぶるぶる、いかん!
何をネガティブなことを考えている。
冷静に冷静に。
考えろ、考えろ吾輩。
こいつには迂闊な攻撃は命取りだ。

ジリッ。

また一歩間合いが詰まる。
と、その時!

ぐうわッッ!!

突如、デストロイヤーの顔、いや巨大な口が迫って来た!

うわっ!

瞬間的に吾輩は後に飛び退く。

ガシシーッン!!

目の前で奴の歯と歯がぶつかる!

あぶねえっっ!!

まともに噛まれていたら、吾輩の頭は首からもげて今頃奴の口の中。
下手したら胃の中なんじゃないか⁈

「ほう、結構すばしっこいじゃねえか」

デストロイヤーが首をコキコキと鳴らしながら言う。

「ま、いつまで逃げられるかな」

奴は太い舌で巨大な牙をニチャリとひと舐めした。
ギラっと奴を睨む吾輩。
が、正直、只今無策。

どうしたらいいんだー⁈






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