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リレーストーリー「どすこいスパイ大作戦#11」

第11話「黒豹丸は・・」

そ・い・つ・が・す・ぱ・い

暗号が指し示す「そいつ」とは誰だ?
隣にいる土佐嵐のことなのか?

そして、この暗号を送って来たドスコイスパイ仲間であるエチオピア人力士・黒豹丸は今一体どこに?
謎が深まるばかりだ・・・。

しかも、本部からの情報によればテロリスト達のスカイツリー爆破作戦決行は明日16日。
既にこのエリアに侵入して来ていても不思議では無い・・・。

蒙古龍は頭を抱えた。

「ヤバい!行かなきゃ」

その時、突然隣にいた土佐嵐が叫んだ。

「どうしたんですか?」
「この後、東京スカイツリー限定<柿の種>のさらに超限定版が発売されるの」
「超限定版<柿の種>ですか?」
「そう。東京スカイツリー限定版の柿の種、普段は“醤油““チーズ““もんじゃ“の3つの味なんだけど、今日、超限定版で“ケチャップマスタード味“が販売されてるの。まずい!売り切れちゃう!じゃじゃ、行くね。カーンちゃんの分も一袋買っておくから。じゃあねー」

小刻みに手を振りながら、土佐嵐は駆け出して行った。

土佐嵐関、純粋に限定版柿の種を買いに来ただけなのか?
それとも明日への下準備に来たのか?
謎だ・・・。
疑い出したらキリが無いが、その疑いこそがスパイにとって身を守る最大の武器だ。
いや、最大の武器は疑われないこと、だな。

そんなことを思いながら、ふと、スマホに目をやる蒙古龍。
黒豹丸とのLINEを開く。
が、こちらから送ったLINEはまだ未読のままだ。

黒豹丸、どうしているんだ・・・

“そ・い・つ・が・す・ぱ・い“
彼が送って来たあの暗号からも、黒豹丸が何か真相を掴んでいることは確かだろう。
今はとにかく彼を助け出すことが第一だ。

自分をスカイツリー駅に呼び出したことからも、黒豹丸がここスカイツリーにいることは確かだ、と蒙古龍は再び捜査を開始した。

こういう時こそスパイアイテムの出番だ。

「DNAナビゲーター」

蒙古龍は小さな声でそう呟くと、太い万年筆の上に小さなモニターが付いたようなものを取り出した。

「DNAナビゲーター。それは、髪の毛など探したい相手のDNAが分かるものを入れるとそれを鑑定し、センサーによってその相手がいる場所まで導いてくれるスーパーハイテクマシンなのだ」

アイテムの説明も小声でキッチリと。
誰が聞いているわけでは無いが、このアイテム説明はオールドスタイルのスパイに憧れる蒙古龍として、欠かすわけにはいかない儀式なのだ。

懐から小さなカプセルを取り出す蒙古龍。
それを開けると、中から黒く細いものを取り出した。
それは黒豹丸の髪の毛。
実は出稽古での張り手暗号交信中にそっと黒豹丸から失敬して来ていたのだ。
DNAこそ最高の個人情報。
顔は変えられてもDNAは変えられない。
それを押さえるのは今のハイテクスパイの常識。
ということは、黒豹丸も自分の髪の毛を取っていっているだろうが。

太い万年筆型のバーの先端のキャップを外し、黒豹丸の髪の毛を入れる。DNA解析中の表示がモニターに映る。
このアイテム、解析が終わるとモニターに矢印が出て、目指すべき相手がいる方へ導いてくれるのだ、まるで警察犬のように。
そして近づくにつれ、バーのバイブレーションが高まっていく仕組み。
そのバイブレーション、近づいた時には常人では抑え切れないほど激しくなる。
まさに力のあるドスコイスパイ向けアイテムなのだ。

「チーン」

解析が終わった。
実際に音は鳴っていないが、ケジメとして蒙古龍自らが音付した。

モニターに矢印が出た。
まずは右斜め前方だ。
待ってろよ、黒豹丸!

蒙古龍は一歩を踏み出した。

(つづく)

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