物語のタネ その七『けもパンファイトクラブ #44』

吾輩は猫である。
名前は、もうある。
ピケ丸、である。
動物達の格闘技リーグ“けもパンファイトクラブ“ファイター
vs
恐竜たちの亡霊“ゴーストザウルス“。
地球生存権をかけた“哺乳類vs恐竜“の5vs5のサバイバルマッチ。
第1戦はゴーストザウルス側に、第2戦はけもパンファイター側に。
第3戦は、カモノハシのグレートかもはしがユタラプトルのジャッキー・アーツに勝利!
これで哺乳類チームの2勝1敗に。
次は第4戦。
哺乳類チームはペケ丸だ。

あらすじ

ギーッギー

リング上の照明のフレームが揺れて軋んだ音を立てている。
逆さにぶら下がったプテラノドンの赤い目が不気味に光る。
選手の存在を確認したリングアナがひとつ咳払いをしてマイクを握り直す。

「改めまして、選手の紹介を致します。赤コーナー、哺乳類代表・ブラックキャット、ペケまーーーるーーーーー!」

ペケ丸がガウンを脱ぐ。
その右肩には大きなギプス。
お腹も包帯でぐるぐる巻きになっている。

ペケ丸、こんな身体で・・・。

リングアナの声が再び聞こえる。

「続きまして、青コーナー、ゴーストザウルス代表・プテラノドン、マスクドスーパーフライーーーーー!」

その瞬間、ふっとリングが暗い影に覆われた。
なんだどうした⁈
見上げると、何かが照明の灯りを遮っている。

ん⁈翼?

ブワッと風がやって来たかと思うと、大きな黒い影が会場の上を飛んでいた。
まるでグライダーのように。

うわわああー

会場から悲鳴のような声が上がる。
その声を楽しみ嘲笑うかのように、大きな黒い影は会場の上を滑空している。
こいつ、めちゃめちゃ自己主張が強くて自己中だな。
100%友達にはなれない。

「マスクドスーパーフライ選手、リング上へ!」

堪りかねてレフェリーが注意する。
そんなレフェリーを空中から赤い目でチラッと見たフライ。

そして、やっとフライがリング上に降り立った。
その名の通りマスクを被っている。
が、顔のほとんどが嘴のため、マスクはほぼ目の辺りだけという状態。

「両者、中央へ」

ペケ丸、フライ、両者がリング中央へ。
レフェリーを挟んで対峙する。
フライの赤い目をジッと見つめるペケ丸。
フライはその視線を外して、ペケ丸の全身を舐め回すように見る。

「せめて5分くらいはリングに立っていてくれよな、ヒヒヒ」
「・・・」
「すぐ倒れちゃったら、お客もつまらんからなー、ヒヒ」
「・・・」
「それに、まずは、俺がつまらんからな、ヒヒヒヒ」
「あの時、もっと深く刺しておけば良かった、と思わせてやるよ」

ペケ丸の冷たく低い声が聞こえる。
え?もしかして、フライは・・・。

「なんだ、覚えていたのか。あー、お前の腹を刺した感触、嘴が思い出してきたぜ」

こいつがペケ丸とサンダーさんを襲ったのか!

「クックック、あそこで殺っちまっても誰も観てねえだろ」
「・・・」
「俺はな、ショーマンなんだよ」
「・・・」
「この大観衆。今夜は絶好のショーナイトだ」
「・・・」
「だからな、お前もすぐに倒れて俺のショーを台無しにすんじゃねえぞ。ヒヒヒ」

フライの赤い―――残忍な光が宿ったその目をジッと見つめるペケ丸。
何も言わず、ただ、ジッと。

「両者、コーナーへ下がって」

ペケ丸が静かに赤コーナーに戻って来る。
その目に青い炎が燃えている。
ペケ丸の闘志はフルマックスだ。
声をかけられないほどに。
でも、その身体は・・・。

カーーーン!

容赦のないゴングの音が鳴り響いた。





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