探し物と碧い空
探し物が見つからない。どこを探しても見つからない。
もう、探しているものが本当にあったのかもわからないけど。
探し物を探す。
尖った心は誰も近づけさせず、人の話を片っ端から
「そうなんでしょ」って切っていったら
冷たくて、寂しくて、苦しい場所から抜け出せなくなった。
家まで送ってくれた先輩は私に夢を見させてくれたが
結局それは、先輩にとって苦しみしかないんじゃないかなと思う。
ある日、先輩は絵具を持ってやってきた。
首をかしげる私に「君を救い出そうと思ってる」って真剣に言うものだから。思わず「絵を描きたいと思っていました」って涼やかな顔で答えた。
先輩の言葉も本当は切り捨てたかったけれど、なぜかこの人にだけは尖った先端を向けることに抵抗があった。
「キレイな空色だね」下手な嘘で塗りつぶされなくてよかった。
人はみなこの絵を空だと決めつける。不思議そうな顔で先輩が
「空と海は分けなきゃいけなかった?」と言われて、私は慌てて
「空みたいな海なんです」って本音を言った。パレットに広がった碧色が鮮やかに見えた。先輩が他の人と違うのは冷たくなくて、寂しくなくて、苦しくない空間だということを記憶したい。
先輩という存在に私の心が飛び跳ねる。残したいこの気持ち。
忘れたくないこの物語りを、胸を張って伝えたいと思えるこの感情は失くさずにいられるだろうか。
言葉少なく、無表情な私を誰もが「寡黙な人」と片付ける。そんな自分を望んでいたわけでないのに、本当の自分が解らない。無邪気に笑って、無意味に絡んでいたいって思うけど。どうしていいか分からないから、表情筋が引きこもる。先輩はそんな私を見てくすくす笑う。涙を流して笑うから私の口角が1ミリ上がる。
窓の外を見れば、どこまでも続く青い空は私が描いた海のように碧い。自己暗示さえすれば海だ。だったら私の絵は空とも言える。趣味で集めておいたあおい絵具を一本ずつ確かめるように、スケッチブックに落としていく。二度と見れないこの空の碧色を、二度と忘れない絵に閉じ込めて。捨てられないものをまた増やして。
自由に生きるこの恵まれた環境を私はちゃんと自覚できているのだろうか。相変わらず探し物が見つからないのは、初めからなかったからだと気づいて苦くて切ない気持ちを絵の仕上げとする。
出来上がった絵を見た先輩は「世界には退屈なんてないかもしれない」と小説のようなことを言うから、その思いに答えたい。
あとがき
この詩は、探し物を巡る主人公の内面の旅と救いを描いています。主人公は寂しさと孤独に苦しみ、探し物が見つからないことに悩んでいます。探し物は具体的なものではなく、心の欠落感や自己理解を象徴しています。
先輩の存在が唯一の救いとなり、彼との交流を通じて主人公は少しずつ心を開きます。先輩の「君を救い出そう」という言葉や絵を描くことで、主人公は自分の内面を表現し始めます。
絵を描くことを通じて、自分の内面を表現し詩の中で描かれる「空色」や「海」は、主人公の心の風景を象徴しています。特に「窓の外を見れば、どこまでも続く青い空は私が描いた海のように碧い」という表現は、内面と外界が重なり合う瞬間です。
人はみな決めつけてああだこうだと議論するが、彼女にとってそんなことはどうでもよくて、彼女の内面を絵にしただけだった。それに空も海もなくてどうでもいいことにケチをつける人が嫌いだった。だけど先輩は彼女が作り出した色に興味をもってくれて彼女はつい本音を口にする。
最後先輩の「世界には退屈なんてないかもしれない」という言葉が、主人公に新しい視点をもたらします。この言葉に触発され、主人公は世界の美しさや可能性を信じ、前向きに生きていきたいという願いを抱きます。
誰かに決めつけられた世界でなく、自己の世界を分かち合える人がいたならば、どれほど世界は生きやすいだろうか。
言葉の羅列から生まれるストーリー
無造作に無作為に言葉を羅列する
そのままの順番でストーリーを作る
今日はこの羅列↓↓↓
儚く/美しく/繊細で/生きる/葛藤/幻想的で/勇敢な 詩や物語を作る糧となります