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【選挙徘徊記】2024年 衆議院・東京15区補選 感想

1. はじめに

 4月16日告示/4月28日投開票で、衆議院東京15区補欠選挙が江東区にて行われた。
 この選挙は公選法違反事件で有罪が確定した柿沢未途前議員の議員辞職に伴うものであり、裏金問題の逆風にあえぐ自民党が公認候補や推薦を出すことができず、事実上の「不戦敗」に追い込まれる(1)という異例の展開となった。
 そして自民党候補の不在という隙を突くかの如く、立憲民主党や日本維新の会と共に新興勢力の候補や無所属候補らが次々と出馬した結果、小選挙区でありながら9名が乱立する大激戦となったのである。
 特に私としては、今回の補選を最重要とみなしていた参政党、そして初めて大型選挙に挑む日本保守党がいかなる結果を出すのかについて、非常に興味深く見ていたのである。

 本稿では、私が4月20日及び21日に各候補者の選挙運動を見物しに行き、その時に抱いた感想を中心として述べる。
 なお今回の選挙では諸派新人の候補の1人が、拡声器を使って他の候補者の街宣を邪魔したり、候補者の事務所の前で彼/彼女を揶揄する歌を歌うといった「妨害行為」を働いたため、どの候補者の陣営も街宣を公然と行えず、事前告知すら迂闊にできないという異常事態が発生した。そこで本稿ではこの事態に対する各陣営の対応についても言及したい。


2. 酒井 菜摘氏(新・立憲)

 酒井菜摘氏は看護師や助産師を経験した元区議であり、昨年12月の江東区長選にも出馬し次点惜敗となっている。今回の補選には立憲民主党の公認、日本共産党社会民主党(2) 、緑の党グリーンズジャパン(3)の支援を受ける「野党統一候補」として立候補した。

SUNAMO前にて街頭演説を行う酒井氏。(21日)
隣は立憲の福山元幹事長。

 酒井氏は街宣では有権者に小まめに手を振り、その前後では彼らに積極的に声をかけていた。また演説は明るくハキハキとしたものであったことから、有権者に与える印象は悪いものではなかったと思われる。
 演説の内容としては地元民であることをアピールした他、自身を「母親の1人」「助産師を経験した唯一の国会議員になり得る存在」と位置付けることで、自身の当事者性・独自性を前面に押し出していた。これらのアピールは彼女が子育て・少子化政策を掲げることに説得力を持たせる効果を発揮したであろう。
 他に「政治とカネ」の問題による政治不信に対し「政治を諦めないで」と訴える等、演説としては無難なものができているように感じられたのである。

スーパービバホーム豊洲店前にて
街頭演説を行う酒井氏。(20日)

 しかし私が見物したところ、酒井氏からは聴衆に強力に訴えかけるようなインパクトは感じられず、良くも悪くも「普通の候補者」という印象しか抱けなかった。演説内容も具体性が感じられないものであり、当選後に国会で実際に何をするつもりなのかはいまいちはっきりしなかった。
 実は各種メディアの情勢調査では「酒井氏がリードしている」との結果が一貫して出ており(4) 、現地では聴衆の1人に対し「有権者からの反応がすごくいい」と語るスタッフすら確認できた。だが私としては、はっきり言って彼女が優勢であるとの感覚は全く得られなかったのである。

酒井氏の応援演説を行う福山氏。(21日)

 酒井氏本人以上に気になったのはその陣営の動きである。
 彼女の陣営は妨害対策として街宣の事前告知は大々的には行わず、開始の直前に問い合わせた有権者にのみ予定を伝えるスタイルを取っていた。そのため街宣ではなかなか聴衆を集められなかったが、それでもその際は10名ほどのスタッフが交差点等の各所でチラシ配りや写真撮影、導線の確保等を行い精力的に活動していた。
 また福山哲郎元幹事長といった立憲の大物議員が連日現地入りを行っていた模様であり、同党がこの選挙にいかに力を入れていたかは十分伝わってきた。

手書きのプラカードを持った女性議員達に
応援される酒井氏。(20日)

 だが酒井氏陣営は時に効果の疑わしい選挙運動を行うことがあった
 例えば20日には立憲の高木真理塩村あやか両参院議員や、同党や共産党の女性地方議員10数名が集まって、各々が「ジェンダー平等」等を訴えるリレー演説会を実施していた。これは酒井氏が言及していた通りいわゆる「市民と野党の共闘」をアピールする狙いがあったのだろうが(5) 、合計して1時間近いという冗長な演説会である上に肝心の酒井氏の演説は2分程度にとどまるという、彼女の応援につながったかが甚だ怪しいものであったのである。

プラカードやタンバリンを持って
酒井氏らの演説を聴く聴衆。(20日)

 他方周囲を見れば、ホームセンター前の交差点という演説会場として良い場所を押さえていたにもかかわらず、ビラ配りは交差点の1カ所だけでしか行わず、大挙して集まった「市民と政治をつなぐ江東市民連合」のメンバーらの多くは専ら、手作りのプラカードや派手な幟、タンバリン等で弁士を応援するだけだったのである。

 拙稿でも触れた通り、昨年の大阪府知事選でも共産党系候補に対し似たような応援がなされていたが、はっきり言ってそれらは「単に内輪で集まって騒いでいるだけ」「周囲からの異質さを際立たせるような自己満足の運動」にしか見えない代物であった。
 そしてこれと全く同じ運動をしたところで、有権者がこれを見てドン引きし、酒井氏にとってマイナスにしかならないことは容易に想像できたのである。

 ここで結論を述べるならば、酒井氏個人には候補者としての大きな強みは見当たらず、また選挙戦術も無難なものか、寧ろ彼女の足を引っ張りかねないものであった。したがって私としては、今後他の有力候補に勢いが少しでもつけば、彼女が優勢とされる情勢は簡単に変貌する、と予想したのである。

3. 金澤 結衣氏(新・維(教育推薦))

 金澤結衣氏は食品メーカー出身者である。2021年の総選挙にも東京15区から出馬し惜敗となった。今回は日本維新の会の公認と共に、前原誠司氏率いる教育無償化を実現する会の推薦を受けて2度目の衆院選に挑むことになった。

木場駅前の交差点にて街頭演説を行う
金澤氏。(21日)

 金澤氏も酒井氏と同様、ハキハキと演説をする真面目な雰囲気を醸し出す人物であった。また聴衆には小まめに手を振り頭を下げ、時には彼らとついつい話し込んでしまうこともあった。
 訴える政策はこの補選で欠かせない「クリーンな政治」を除けば、「教育無償化」「行政改革(身を切る改革)」「改憲と自主防衛の実現」といったものである。特に「教育無償化」については「今も奨学金を返済している」と述べ、自身も当事者であることをアピールしていた。
 また演説の中では、既存の政治家を「ぬるま湯に浸かっていて許せない」と非難しながら、所属する維新を「しがらみがない」「大阪で政策を実行してきた」と持ち上げ、「既存の政治家vs維新」という構図を作ろうとしていたのである。

東陽町駅前の交差点にて街頭演説を行う
金澤氏。(21日)

 はっきり言えば、これらは私がこれまで見物してきた選挙における維新候補が皆訴えたものであり、私にとって目新しさは皆無である。それ故金澤氏については「典型的な維新候補」と評価せざるを得ない。だが彼女が前述の良好な雰囲気をまとっている点から、維新候補の中でも有権者から多くの支持を集められる候補なのではないか、と感じたのである。

 さて、維新に特徴的なのは、熊取町長選について拙稿が指摘したような徹底した「街頭での活動」である。
 例えば21日の複数の街宣では、地方議員を含む20名以上のスタッフが会場となる交差点に開始の10分ほど前から集まり、各々が交差点の4カ所に散らばり大量のビラを配っていた。
 また連日党の幹部が現地で応援演説を行っていた点も注目できよう。私は馬場伸幸代表に会うことができたが、彼は「しがらみのある古い政治」「しがらみがなく大阪で実績を出した維新」を対比させたり、立憲に対し「立憲民主党の国会議員を増やしても日本は良くならない」と痛烈に批判する等、いつも通りの維新らしい演説を行っていたのである。

金澤氏の応援演説を行う維新の馬場代表。(21日)
金澤氏の右隣は音喜多俊政調会長。

 なお今回は妨害者がいたことから、事務所のスタッフには街宣の予定について緘口令が敷かれていた。また街宣中にスタッフが妨害者のYouTubeのライブ配信を見て彼らの動向を確認する等、陣営としては彼らに最大限の警戒を払っていた模様である。
 一方で、彼らに襲撃されることを警戒してか、熊取町長選で確認できたようなスタッフによる各所での辻立ちは、主要な駅や商業施設、及び交差点等では全く確認できなかった。強みの1つである「ボランティアを動員した『街頭での活動』」を封じられたことは、維新にとってダメージが大きかったであろう。

聴衆に手を振る金澤氏と、
応援演説を行う馬場氏。(21日)

 逆に言えば、22日以降の選挙戦で維新が本格的に「街頭での活動」を展開できれば、金澤氏が更に支持を伸ばす余地は十分あったであろう。したがって私は、金澤氏の当落は「維新」の看板の力に加え、投票日までに彼らが大規模な「街頭での活動」を決行できるかにかかっている、と判断したのである。

4. 乙武 洋匡氏(新・無(国民/都ファ推薦))

 乙武洋匡氏は都教育委員等を歴任した作家である。2016年の参院選への出馬が取り沙汰されたり(6) 、2022年の参院選に無所属で立候補する(7)等、かねてより政界進出を目指していた模様である。そして今回は小池百合子都知事が特別顧問を務める都民ファーストの会や、独自候補の擁立を断念した国民民主党(8)の推薦を受けて進出を狙う。

 なお東京新聞(9)によると、自民党は乙武氏を推薦する方針をいったんは示したものの、彼が推薦の申請をしない上に地元の反発が強いことから推薦を見送った、とのことである。また乙武氏への支援が噂された公明党も、彼の過去の女性問題を巡る懸念などから態度を明確にしなかったこともあり、乙武氏については両党の動きも注目された

豊洲 千客万来前にて街宣を行う乙武氏。(20日)

 乙武氏は「誰も取り残されない社会」を掲げ、「『政治とカネ』という一部の人のための政治の転換」「消費税の一時的な減税」「避難所のバリアフリー化の推進」等を訴えた。これらについて彼は「自身に障がいがあるからこそ、他とは異なる政策を出せる」と述べ、他の候補との差別化を図ろうとしていた。
 乙武氏本人としては柔らかく話慣れた様子での演説をしており、また演説後には聴衆とのハイタッチ等の触れ合いを積極的に行っていた。その様子を見るに、これらの活動が聴衆に悪い印象を与えることはないように思えた。彼の高い知名度も考慮すると、乙武氏は個人としては決して悪い候補ではなかったのではないだろうか。

乙武氏の応援演説を行う小池都知事。(20日)

 選挙戦全体では小池氏が積極的に応援に入ったことが特徴的であり、彼女はその知名度や実績を活かして乙武氏を強力にサポートしていた。他にファーストの会の森村隆行代表大久保朋果区長が応援演説を行い、また国民民主党のスタッフも導線確保や演説への合いの手といった活動を行う等、推薦を出した各組織が全力で彼を応援しているように見えたのである。
 小池氏が来たことで、妨害対策もあってか柵や手荷物検査、交通整理、SP等による厳戒体制が敷かれており、有権者にとって近寄りがたい雰囲気が出てしまったことは否めないが、それでも彼らの街宣に事前告知なしで100名近い聴衆が集まったことには驚嘆すべきであろう。

乙武氏らの演説を柵の向こうから
聴く聴衆。(20日)

 だが気になったのは聴衆の様子である。これだけの人数の聴衆がいたにもかかわらず、演説中の拍手や「そうだ!」等の合いの手の大きさは弱く、複数の選挙を見てきた私からすると演説に対する反応が鈍いように感じられた。
 これは「聴衆のほとんどが偶然通りがかった有権者だから」という説をもって説明可能だろう。だが、乙武氏のことはUAゼンセン自動車総連といった国民民主党を支持する民間産別も応援しており(10) 、これらの組合員を動員することも可能だったはずである。即ち、乙武氏陣営としては動員があまりできていなかったのではないだろうか
 更に彼が演説の中で自民党の裏金問題を公然を批判していたところを見るに、乙武氏は自民党からの支援すら不要と判断していたのであろう。このことから、彼は最初から組織に基づく動員や集票に頼らない選挙戦を展開する戦略だった、と考えられるのではないだろうか。

演説後、聴衆とハイタッチを行う乙武氏。(20日)

 もっとも、動員なしでこれほどの通行人を一挙に集められる乙武、小池両氏の知名度はやはり他の候補者から見れば驚異であったであろう。また小池氏は演説で自身の実績を挙げる際、ある取組について「これは公明党の要望に応えたもの」と同党に配慮する発言をしており、態度の不明瞭な公明党やその支持母体である創価学会の票をあてにしていた様子も伺えた。
 したがって私としては、この高い知名度に加え強力な集票力を持つ学会が乙武氏支援に動くのならば、彼が一気に当落争いに躍り出るのではないか、と予想したのである。

5. 吉川 里奈氏(新・参政)

 吉川里奈氏は看護師であるが、「自然派育児の本」をきっかけに西洋医学への疑念を持ち、「YouTuberの影響」でいわゆる「LGBT法(性的指向および性同一性に関する国民の理解増進に関する法律)」への反対を決めつつ参政党に入党したという、いかにも参政党らしい人物である。
 また党においては、次期衆院選の東京1区での擁立が発表された際に「東京ファイブ」の一員と持ち上げられたり(11) 、党のYouTube動画でMCを務める(12)等、次期衆院選における目玉候補のように宣伝されていた人物でもある。
 今回は「東京都連を中心に今回の補選への候補者擁立の声が上がった」(神谷代表の発言)ことから、告示の1ヶ月前に急遽選挙区を変更して立候補する運びとなった。

 なおこの選挙について、神谷宗幣代表「最低のラインとして、1万票を目指す」「(供託金が没収されない)2万4,000票というところを大目標として頑張って行きたい」と勝敗ラインを定めており(13) 、「参政党ウォッチャー」の私としては特にこの「最低ライン」を超えられるのかについて大いに注目していたのである。

赤札堂深川店前にて街頭演説を行う
吉川氏。(21日)

 吉川氏は補選での最大の争点を「LGBT法への反対」とした。彼女はこの法律について「生物学的女子の権利の否定」「マイノリティの権利を口実にした共産主義社会実現のためのグローバリズムアジェンダ」と非難し、「子ども達の安全を守る」を大義名分としてこういった動きに反対することを主張していたのである。
 もっとも、LGBT法は吉川氏にとって、あくまでも演説におけるスケープゴートである。吉川氏から伝わってきたのは、このような「悪法」を成立させる政府や他党といった、既存の政治体制への憎悪である。彼女はまたワクチン政策や「農薬だらけの食べ物を押し付けられる」現状(14)を嘆きながら、既存の政治家に対し「私達国民を、分かりにくい言葉を使って馬鹿にしながら管理しようとしている」と憎しみを隠そうともしないのである。

 そしてそのような既存体制に立ち向かう自分自身のことは「普通の主婦」と自称する。彼女は「自分なら国民と同じ目線に立ち、ストレートに発言することができる」と述べるのだが、これはまさに「人民」の立場からエリート等を批判する「ポピュリズム」 (15)の手法ではないだろうか。

江東区文化センターにて個人演説会を行う
吉川氏。(20日)

 だが私は彼女から、「憎悪」だけでなく、「上から目線の姿勢」を感じた。
 一般に、有権者が投票先を決める際に重視する政策としては、彼らの生活に密接に関わるものが選ばれることが多い(16) 。だが吉川氏は「有権者が何を求めているか」ではなく「有権者に何に気づいてほしいのか」という観点から訴える政策を決めていたように見える。私はその様子から、「『気づいた私』が『気づいていない国民』を教化する」という、極めて高慢な姿勢が感じられたのである。そしてこれは「国民目線で政策を訴える」という吉川氏の決意と矛盾しうる姿勢ではないだろうか。

 もう1点指摘しなくてはならないのは、彼女が「一介の参政党員」に過ぎなかった、ということである。
 彼女が訴えることは「LGBT法」にせよ「食と健康」にせよ、果ては「子ども達への純粋な思い」にせよ、どれも党や神谷氏を始めとするその幹部らが語り、地方議員やその候補者らが引用するものと全く同じものである。私は吉川氏の演説を複数回聴いたものの、結局吉川氏独自の主張というものはほとんど観察できなかったのである。
 演説ですら党の主張をそっくりそのまま述べることしかできない吉川氏が、果たして衆議院にて党の宣伝以上の「クリエイティブな政治」 (17)を行う能力を有しているのだろうか。選挙戦を通じて、彼女の衆院議員としての資質に疑問を感じたことは指摘しておきたい。

門前仲町駅周辺にてビラ配り等を行う
参政党員達。(20日)

 さて、党ボードメンバーである藤本一希・福井県議「補選で敗北すれば日本が悪くなる」と党員の危機感を煽っていたことから分かるように、参政党は今回の補選に対し凄まじいまでのリソースを割いていた
 選挙期間中は神谷代表だけでなく、党に所属する地方議員や、田母神俊雄氏、及川幸久氏のような党に友好的な言論人が連日現地入りし、選挙運動を行っていた模様である。私が見物した街宣でも、藤本氏ら20名以上のスタッフが交差点の4カ所に分かれビラ配りを大々的に行っていたことが確認された。
 他にも、街宣の会場とは別のスポットでも10名程度のスタッフがビラ配りを行う等、かつて拙稿で指摘した、党のボランティアを組織して地道な活動を繰り広げる「ドブ板選挙」 (18)はこの補選でも健在だったと言えよう。

吉川氏の応援演説を行う
参政党の神谷代表。(21日)

 だが吉川氏陣営もまた、妨害者の被害を受けていたと思われる。陣営としては彼らの妨害を受けないよう、事務所を訪問した有権者にのみ街宣の予定を教える方針をとっていたようであるが、その結果街宣に集まる聴衆は2~30名程度にとどまっていたのである。また金澤氏陣営と同様、妨害対策からか党員の辻立ちを広範囲では行っていなかったことも無視できないであろう。
 思うように選挙運動ができないためか、応援演説を行った神谷氏は私が見物した際、終始大声かつ早口で演説し、政府の施策を「アホ」、国民を「早く気づいてほしい」「このままではいつかツケが来る」と直接的な言葉で非難する等、明らかにイライラしていた様子であった。とはいえ、「街頭での活動」は知名度の低い参政党にとって強力な武器である。これを上手く行えない現状に神谷氏が憤りを覚えることはやむを得ないであろう。

 まとめると、吉川氏本人は良くも悪くも「参政党らしい候補者」である一方、その陣営は「参政党らしい選挙運動」ができず苦戦していたように見える。したがって金澤氏と同様、吉川氏もまた最終的にどれだけ大規模な「街頭での活動」を展開できるかが、「最低ライン」を超える票数を獲得することにつながるであろう。

個人演説会終了後、吉川氏と共に
「ガンバロー三唱」を行う参加者。
(20日)

 最後に「参政党ウォッチャー」として、吉川、神谷両氏の4/21の街宣における「気になった点」を、私が過去にTwitterで行ったように箇条書きにして、彼女に関する感想の記述を終えたい。

参政党 吉川里奈氏 4/21街頭演説 @東京15区補選 気になった点

・性知識は勝手に身についていくもの。学校での性教育は馬鹿々々しい
・「男性/女性らしさ」を残していきたい
・「池袋のデモ」には2万人が参加した
(19)
・WHOの背後にはグローバル資本家がいる
・宗教が政治に関与しないよう、政教分離を行うべき
・参政党は「理想の未来を何とでもできる、まっさらな党」、その躍進は「奇跡」
・子どもに農業を経験させれば食べ物を大事にする人が増え、携わる人も増える
・ベンチャー企業のように、皆で考えて行動する政治にしたい

参政党 神谷宗幣氏 4/21街頭演説  @東京15区補選 気になった点

・議員の権威をもって情報を発信することが重要
・人口が減少しても、江戸時代や高度経済成長期のように経済を回すことは可能。移民は不要である
・脱炭素政策や電気自動車の推進は不要。それよりも経済を重視すべき
・自動車産業では日本の強みであるガソリン車を生産し、日本人の雇用を創出せよ
・残業時間の規制は企業の生産性が上がらないため反対。残業するかは個人の意思によるべき。自分の会社でも、残業ができなくなれば従業員に仕事を任せられない
・男女の線引きは重要。男女雇用機会均等法は馬鹿々々しい
・女性は社会進出よりも子育てをすべき
・移民にトラックの運転手をさせれば、彼らはトラックを持ち逃げするだろう

6. 福永 活也氏(新・旧N国(立花派))

 福永活也氏は弁護士であり、東京スポーツ(20)によれば「堀江貴文氏やはあちゅう、ゆたぼんらの開示請求訴訟を手掛けるなどヤリ手の弁護士で知られている」とのことである。今回、彼は選挙が告示される直前に立花孝志党首が率いる政治団体「NHKから国民を守る党」 (21)からの出馬を急遽表明した。

豊洲駅前にて福永氏のポスターを見せびらかす
旧N国(立花派)の立花党首。(21日)

 福永氏は選挙期間中にネパールのエベレスト山に滞在する等(22) 、ほとんど選挙区入りを行わなかった。その代わり、21日に立花氏らが現地入りし彼のポスターを貼っていた模様である。私はちょうど、立花氏が掲示作業の前に「我々は自民党と共に予算に賛成してきた」「いつか自民党を乗っ取る」云々と、ポスターの「自民党政策を推薦します」と言うキャッチフレーズの正当性を20名程度の聴衆に得意げに語っている様子を目撃できた。
 その後私は区内各地を徘徊したのだが、福永氏のポスターはそれなりの広範囲で貼られているように見えた。したがってこれらを実行できるだけのボランティアを招集できた点から、立花氏がどういうわけか未だにコアな人気を集めていることが分かったのである。

20日時点で、江東区役所前の選挙ポスター掲示板の
福永氏のスペースに貼られていたポスター。

 また福永氏陣営は21日までは区役所前の掲示板に、「東京都知事選挙ポスター掲示場ジャック大作戦」を宣伝するHPのQRコードを掲示していた(23) 。この点から、福永氏の擁立の目的がこの都知事選での「選挙を使ったビジネス」を成功させることであったことは間違いないであろう。
 いずれにせよ、福永氏に直接会えなかった私としては、彼とその陣営に関する記述はここまでとしたい。

7. 飯山 陽氏(新・日本保守党)

 飯山陽氏はイスラム思想研究者であるが、文筆家の古谷経衡氏によれば「鋭敏な野党批判、進歩的メディア批判で知られ、岩盤保守界隈ではここ数年知名度がにわかに上昇してきた人物」 (24)とのことである。今回は百田尚樹有本香河村たかしの各氏らが結成した極右政治団体「日本保守党」の初の国政選挙の候補として出馬した。

オーケー南砂店周辺にて街頭演説を行う
飯山氏。(21日)

 飯山氏の演説のやり方は一言で言い表すと「聴衆の負の感情を煽る」というものであった。
 彼女が主に掲げた政策は吉川氏と同様「LGBT法への反対」であるが、その際は「性犯罪が増える」等の誤情報を流しながら同法への恐怖やそれの背後にあるとする利権への怒りを訴えていた。また彼女は妨害者を「やがて天罰が下る」と激しく非難し、酒井氏陣営を「立憲共産党」と揶揄する等、敵視するものに対し終始凄まじい憎悪をあらわにしていたのである。
 飯山氏が話慣れしており、抑揚をつけて大仰に語る扇動的なスタイルを取っていたこともあって、聴衆はこういった演説に大いに感情を揺さぶられたことであろう。したがってほとんどの陣営が悩まされた妨害行為すら飯山氏にとっては、反共攻撃と共に敵対者への憎悪を煽り、支持者・聴衆の結束力を高める効果を発揮したと思われる。

妨害者を「出し抜き」、富岡八幡宮前にて
街頭演説を行う飯山氏。(20日)

 飯山氏の陣営は妨害者に対し最大限の警戒を払っており、事務所に「街宣の予定は一切非公表であり、チラシも渡せない」との内容が書かれた紙をわざわざ貼って、有権者が事務所に入りづらくなるようにまでしていた。そのため選挙運動としては開始の直前にSNSで告知をした上で街宣を行ったり選挙カーで区内を「ネズミのように走り回る(百田氏談)」戦術を採用していた。その街宣についても基本的に短い演説にとどめ、「妨害者が来たら解散する」との方針を取っていた模様である。
 また、百田代表が「期日前投票に行き、メディアの出口調査に対し『飯山氏に入れた』と言えば、彼らは彼女について報道せざるを得ないだろう」と聴衆に呼びかけたり(25) 、『HANADA』などの保守系論壇誌が毎号日本保守党への全面支援を明確にする紙面構成を取る等(26) 、メディアを通じた知名度向上が行われていた点も見過ごせないだろう。
 なお街宣時のスタッフについてはそれほど多くはなかったが、導線確保やタイムキーパーといった役割分担が明確になされており、昨年に大混乱を起こした大阪での演説(27)からオペレーションが改善された様子が見て取れた。

飯山氏の応援演説を行う
日本保守党の百田代表。(21日)

 百田氏についてだが、彼は応援弁士やカラス(男性のウグイス嬢)を積極的に務め、その際は関西弁でテンポ良く好き勝手な内容を語り冗談を連発していた。特に通行人をいじるなどして彼らに親しげに語りかけていた点は注目に値する。
 また演説では自身を「庶民」と位置付けた上で、「政治は汚い」「裏金問題のように、国会議員のほとんどはひどい人物」と激しい「反政治的態度」を示していた。これらは明らかに前述の「ポピュリズム」の手法であり、これを公然と使用した戦術は無視できないものであろう。その点で通行人への「いじり」も、民衆と直接コミュニケーションを取る、ポピュリズム政党のカリスマ的リーダー(28)と同様の戦術であった、と評価することもできるだろう。
 もっとも「選挙カーで歌を歌う」といった公選法違反の可能性がある行為を行ったり、通行人の女性に対し「綺麗な人妻のお姉さんと2人でサイクリング!」とセクハラ発言をする等、百田氏の言動に許しがたいものが多数含まれていたということは、ここで証言しておきたい。

日本保守党の河村たかし共同代表の
応援演説を聴く聴衆。(20日)

 そして私が現地で感じたのは、明らかな「日本保守党ブーム」である。
 事務所の前では支持者らしき中年男性数名が常時「出待ち」をしていた他、20日の街宣では、妨害対策から30分前になされた事前告知と異なる場所で行ったにもかかわらず、開始の15分前から会場に人が集まっており、最終的に100名近い聴衆を獲得することができていたのである。
 また、ある団地の前でゲリラ街宣を行った際は百田氏の知名度のおかげか、通行人が足を止めたり住民がわざわざ見に来ていた様子も確認された。これらを踏まえると、日本保守党が有権者から注目されていたこと自体は間違いないであろう。
 それを踏まえると、現地で飯山氏のビラを全く入手できなかったのも、「予想以上にビラを受け取った有権者が多く、新たに発行することができなかった」ことが原因とも考えられるのではないだろうか。

 もっとも、これらの聴衆に選挙区外の有権者が少なからず含まれていた可能性は考えられる(29) 。だが百田氏といった有名人を中心に多くの人が集まっている場があれば、そこに興味を持った有権者が引き寄せられることは十分考えられるのではないだろうか
 したがって、私は現地で多数の聴衆が生み出す熱気、そして聴衆を自然に発生させることも可能な百田氏らの知名度を見て、これが得票数に影響を与えるのか狭いコミュニティ内の現象にとどまるのかは判別不能だったものの、少なくとも飯山氏や日本保守党が注目され、彼らに追い風が吹いている可能性を十分感じられたのである。

8. (新・諸派)

 私は「選挙の妨害者」を冷静に論評するための言葉を一切持っていない。したがってこの人物については沈黙させていただきたい。

9. 秋元 司氏(元・無(保守系))

 秋元司氏は立候補者の中で唯一の元職である。自民党所属の議員として副国交相や副環境相等を歴任したものの、IR事業をめぐり収賄と組織犯罪処罰法違反の罪に問われ、先月の控訴審で懲役4年の実刑判決を受けている(30) 。今回は上告審での有罪確定時に衆院議員を失職する可能性もある中、すでに自民党を離党した保守系無所属の候補として国政復帰を狙った。

スーパービバホーム豊洲店前にて
街頭演説を行う秋元氏。(20日)

 秋元氏が今回の選挙の争点と位置付けたのは「司法制度改革」である。彼は自身の逮捕・起訴について「冤罪」「捏造」と言い、司法を敵視する姿勢を露骨に示していた。そして「冤罪をなくす」ことを目的として、裁判所改革と裁判官の体質改善の必要性を訴えるのである。
 彼は他にも「中小企業への生産性向上の支援による賃上げ促進」「シングルマザーへのケア」といった無難な政策や、「日米同盟の維持・深化」「自衛隊を憲法に明記し覚悟を示す」といった保守的なものを掲げていたのだが、そもそも有権者の大半が関心を持たない「司法制度改革」の争点化を狙ったのは、彼の目的が「司法への復讐」にあったからではないだろうか。この個人的な思惑に基づく政策を重点的に訴えたところで、これが有権者に響くことはまずないであろう。

街頭演説を行う秋元氏。(20日)

 秋元氏は選挙運動としては選挙カーを使った宣伝やビラ配り等のオーソドックスなものをしていたようである。だがこういった運動に不可欠なスタッフは最大で8名程度と圧倒的に不足していた。また秋元氏自身の演説は淡々と抑揚に乏しい、一般の有権者にとっては退屈なものである。実際に聴衆が10数名程度にとどまっていたことからも分かるように、これで有権者からの支持を広げることは難しかったであろう。
 彼もこの問題は意識していたのか、演説では自民党が公認候補を擁立していないこと、自身が元自民党所属であることを述べた上で、自民党支持者に対し「自身に投票してほしい」ということをかなり露骨に訴えていた。これは自民党支持層のまとまった票をあてにする戦略だったのだろうが、そもそも保守系の候補が乱立する中でこれを達成することは極めて困難であったと言わざるを得ない。

 結論としては、秋元氏には「独りよがりの政策」「不足した人員」「退屈な演説」と選挙で負ける要因がいくつも存在していた。これでは、彼が自民党支持層を含め有権者からの支持を集められるかは最初から決まっていたであろう。

10. 須藤 元気氏(新・無所属)

(31)

 須藤元気氏は格闘家出身の前参院議員である。もともとは立憲に所属していたものの、れいわ新選組への接近や消費税の減税を巡って党と対立し、離党している(32) 。今回は参院議員を自動失職しながらも「完全無所属」として衆院への鞍替えを図った。

門前仲町駅前の交差点にて
通行人と握手をする須藤氏。(21日)

 須藤氏の選挙運動は、自転車で各地を回りながら有権者と直に触れ合うというものであった。私が偶然出会った際も、彼は交差点にて3~4名のスタッフがビラ配りや名前の連呼を行う中、ひたすら通行人に声をかけ握手をしていた
 驚いたことに、通行人の多くは笑顔で握手に応じ時には記念撮影を求めるなど、須藤氏に対し極めて良い反応を示していたのである。これは元格闘家としての知名度や地元である江東区での普段の地道な活動、そして彼自身のエネルギッシュな雰囲気によるものであろうが、この様子からは区民が須藤氏のことを嫌いでないということが非常に良く伝わってきたのである。
 かく言う私も、須藤氏のことはかねてから、参政党の党大会に参加し反ワクチンを唱える人物(33)として非常に嫌っていた。しかし彼が有権者1人ひとりと必死でコミュニケーションを取る様子を見たことで、私としては彼を無条件に嫌うことが最早できなくなったのである。

街頭演説を行う須藤氏。(21日)

 須藤氏は街頭演説をすることもあったが、それはハキハキとしており力強さを感じさせるものであった。また内容としては地元民であることや自分の生い立ちをアピールしつつ、「積極財政」「消費税減税」といった政策を訴えていた。
 もっとも、この演説は聴衆に求められて初めて行ったものであり、あくまでも活動のメインは通行人との触れ合いであった模様である。彼のビラが政策よりも、彼の生い立ちを書いた2頁の漫画をメインとする構成を採用していた点も踏まえると、須藤氏は政策よりも自身の人柄をアピールする戦略を取っていたのであろう。

スタッフに促されて通行人と握手をする
須藤氏。(21日)

 まとめると、須藤氏はスタッフが数名しかおらず組織戦を展開できない中で、握手といった有権者との直接の接触を重視するという、この不利さをカバー可能な強力な選挙運動を展開していた。したがって私は彼の様子を見て、「彼が野党統一候補なら圧勝したのでは?」とまで感じたのである。

11. 選挙結果と総括① 〜彼らは何故負けたのか〜

 今回の選挙の結果は、投票率が前回の選挙を18.03ポイントをも下回る40.70%となる中、酒井氏がいわゆる「ゼロ打ち」で初当選を果たす結果に終わった
 前述の通り、もともと酒井氏は各種メディアの情勢報道では終始優勢とされており、その観点では順当な結果となった。だが須藤氏が2位に急浮上したこと飯山氏が調査結果通り4位と健闘したこと、そして乙武氏が5位と惨敗したことは驚きをもって迎えられたことであろう。

 さて、選挙コンサルタントの大濱﨑卓真氏は、「選挙に勝つときって「負ける理由が無かった」もしくは「負ける理由が相手より少なかった」なんですよね」という名言を残している(34) 。
 そこで本章では、勝利した酒井氏について「負ける理由が相手より少なかった」と仮定した上で、酒井氏及び後述する通り「完全敗北」した吉川氏らを除く6名の候補が「何故負けたのか」について、各種報道と私の見物の結果を照らし合わせながら検討する。なお検討にあたっては、NHKの出口調査(35)を適宜参照したい。

いわゆる「金魚鉢」から有権者に
手を振る金澤氏。(21日)

 まず金澤氏についてだが、候補者、特に維新候補としては決して悪い人物ではなかった。敗北した要因としては妨害対策として維新の強みである「街頭での活動」を制限していたことが考えられるが、それだけでは酒井氏にここまでの大差をつけられたことは説明できないだろう。したがって、彼女の敗因は選挙運動というミクロなものではなく、大阪・関西万博の混乱や、朝日新聞が指摘した、馬場代表らによる立憲や共産党への攻撃という「一般の有権者には刺さらない」街頭演説 (36)等によって、有権者の維新そのものへのイメージが低下していた、というマクロなものではないだろうか。
 また当初有力候補とみなされていた乙武氏は、出口調査によれば彼を推薦した国民民主党及び都民ファーストの会の支持層をそれぞれ40%台半ば、30%台半ばしか固められず、小池氏があてにしていたであろう公明党の支持層からは50%台半ばという「組織として乙武氏に投票するよう呼び掛けていたら出ない」 (37)という程度の支持しか得られなかった模様である。したがって私の見立て通り乙武氏に組織的な応援はほぼなされず、彼と小池氏の知名度だけではその不足分を挽回するには足りなかった、ということであると考えられる。
 更に秋元氏は、あてにしていた自民党支持層からの支持が10%前後にとどまり、彼の独りよがりで貧弱な選挙運動をカバーできる要因が全くなかったことが明らかになった。
 なお福永氏については、選挙区入りすらほとんどしなかった候補者がこの程度の票しか得られないのは至極当然である。

選挙カーの上から聴衆に
手を振る飯山氏。(20日)

 他方、須藤氏には陣営の人員の乏しさという大きな弱みがあった。にもかかわらず彼が下馬評を覆し2位となったのは、やはり地元での知名度の高さを活かした有権者との地道な触れ合いが、特に無党派層や投票先を見つけられない自民党支持層からの支持を獲得することにつながったのであろう。私は吹田市議選(38)及び東大阪市議選(39)を見て「街頭にて有権者と直接コミュニケーションを取ることは、選挙において時に絶大な効果を発揮する」ということを実感していたが、それが更に説得力を持った、と評価したい。
 また飯山氏は、出馬した時点で「知名度も人員も足りない新興政治団体の候補だから」という敗因を背負うことが約束された候補であったが、そのような立場に反して好成績を収めた。だが前述の古谷氏によれば、この結果は「岩盤保守(ネット右翼)」の基礎票と、自民党支持者や無党派層からの流入票を集めれば当然獲得できる票数とのことである(40) 。この主張の妥当性は今後検証する必要があるが、少なくともこの得票数は、もし飯山氏に本当に追い風が吹いていたのならあまりにも物足りないものではないだろうか。したがって飯山氏は私が感じた「日本保守党ブーム」を、狭いコミュニティ内の現象にとどまる程度にしか起こせなかった、と結論づけたい。

街宣後、応援弁士と記念撮影をする
酒井氏。(20日)

 以上の通り、吉川氏らに加えこれら6名の候補には明確な「負ける理由」が存在した(須藤氏については註釈が必要であるが)。他方酒井氏は候補者としては悪くなく、また時に怪しい部分が見えながらも無難な選挙運動をこなせていたのである。
 無論、区議や区長選候補といった経歴から本人の選挙区内での知名度が高かったこと、野党第一党である立憲の公認候補であったこと、或いは「野党統一候補」として共産党等の支援を受けることができたことも勝因であると考えられるだろう。しかし私としては、酒井氏が「負ける理由が8名の相手より少なかった」、或いは「負ける理由が相手ほど重大なものでなかった」ことから、9名の候補者の中で相対的に浮上したことが当選の決め手になった、と結論づけたい(41) 。

12. 選挙結果と総括② 〜参政党、完全敗北〜

街頭演説終了後、聴衆に手を振る
吉川氏。(21日)

 今回、「1万票」を最低ラインとして選挙に挑んだ参政党と吉川氏であったが、最終的に得票数は8,639票にとどまる「完全敗北」となった(42) 。私としては、彼らがその組織力を活かして1万票以上は簡単に獲得できると予想していたのだが、これは見事に外れたのである。

 今回の参政党の選挙活動は、候補者の人柄及び主張にせよ「街頭での活動」のやり方にせよ、統一地方選以降に県議選、政令市議選、補選を除く地方選挙で75.0%と高い当選率を出している党(43)のそこでの選挙活動と大きな相違があったとは感じられなかった。にもかかわらず何故参政党は敗北したのか。

 最大の要因は他の候補者、特に飯山氏との競合に負けたことであろう。
 出口調査を見ると、参政党支持層ですら吉川氏には固まらず飯山氏に流出していることが分かる。参政党支持層には日本保守党に期待を寄せている者が多いことはかねてから指摘されていたが(44) 、事前の情勢調査で飯山氏が3〜5番手にいたことから、参政党支持層の中において、世論調査で人気のある候補者(この場合は飯山氏)により多くの投票が集まるという「バンドワゴン効果」 (45)が発生した可能性は極めて高いであろう。
 また自民党支持層は参政党にとって、2022年の参院選で獲得した比例票の19・7%を占めた重要な層であったが(46) 、今回は吉川氏がそこからほとんど支持を獲得できなかったことも読み取れる。これは、自民党支持層にとっては保守系の選択肢が吉川氏以外に金澤氏、飯山氏、秋元氏と複数存在し、特に前二者は情勢調査で終始上位にいたことから、やはり吉川氏よりも投票先に選びやすかった、ということが考えられるであろう(47) 。

 もっともここで、「何故吉川氏は情勢調査がなされた時点で支持を集められていなかったのか」という疑問が新たに生じる。
 その回答の1つとして私の見物結果の通り、妨害行為によって党が得意とする「街頭での活動」を思うようにできなかったことは間違いないが、金澤氏と同様にこれだけでこの大敗を説明するには限界があるように思える。
 そしてもう1つ考えられるのは、吉川氏個人の魅力や実力が乏しかったことである。

街宣後、某フリーランスライターらしき
人物の取材を受ける吉川氏。(21日)

 そもそも吉川氏は、演説の中で「よそ者」と見なされることを気にする発言をしていたように、江東区との縁が「夫の事業の拠点であること」程度しかない人物であり(48) 、また前述の通り東京1区の立候補予定者であった彼女が15区で本格的に活動し始めたのは告示のわずか1ヶ月前であろう。この短期間で吉川氏個人が区内で日常的な活動を十分にできたとは考えづらく、したがって彼女の名前が区内の有権者に浸透しなかった可能性は高いと思われる。
 また吉川氏自身のアピールポイントを仔細に眺めると、「若い女性」という要素は酒井氏及び金澤氏と共通し、「『普通の人』であること」や「LGBT法への反対の姿勢」は飯山氏と全く同じものである。このように、独自性が他の有力な候補と軒並み重なった状況では、吉川氏がこれらの有力な候補者の間で埋没することは至極当然である。
 更に吉川氏の数少ない固有の、そして重要なキャラクターとして「参政党」の政党ラベルが挙げられるが、参政党は実のところ支持率が1%前後しかない弱小政党であり(49) 、また2022年の参院選で実質的な看板政策となった「反コロナ対策」がもはや政治争点でなくなっていることは、これまで私が観察してきた選挙の様子からも明らかである。したがって、党のラベルが吉川氏の魅力を高めることにつながったかは極めて疑わしいであろう。

 以上の通り、私としては吉川氏の敗北の原因は「吉川氏個人に実力や固有の魅力が欠けており、それを『街頭での活動』で挽回できないまま他の候補との競争に負けていったこと」であると結論づけたい。

吉川氏の街宣後、有権者らと接する
神谷氏。(21日)

 そして党にとって深刻なのは、前述した通り吉川氏やその陣営による「街頭での活動」等の選挙活動自体には、大きな問題点が存在していないということである。
 考えてみれば、そもそも市区町村議会議員の選挙は国政選挙と比べて当選に必要な票数が少ないため、これまでの参政党としては選挙前からの地道な活動を通じて数百票から数千票程度を固めれば、たとえ候補者が吉川氏と同様の「ステレオタイプな参政党員」だとしても彼/彼女を容易に当選させることができた。しかし今回の補選を含め、当選に万単位の得票が要求される国政選挙で少なくとも存在感を出すには、「街頭での活動」に注力する従来の戦略では全く不十分なのである
 なお付言するならば、私が前述の予想を外したのも国政選挙における「街頭での活動」の効果を過大評価していたことが原因であったと思われる。

 無論、今回競合した陣営の中には選挙後も勢いを維持できるかが未知数な日本保守党が含まれている以上、今回の敗北を参政党の今後の選挙の予測にそのまま適用することには慎重であるべきである。しかしこの補選によって、参政党が国政選挙で結果を出すには「街頭での活動」だけでは足りず、「独自の魅力を持つ候補者」や「高い効果を発揮できる政党ラベル」等が必要である、という当たり前のことが得票数という数字をもって示されたのである。
 参政党はボランティアによる熱心な活動を党の原動力としてきたが、次期衆院選で6議席の獲得を目指すにあたり(50) 、今後はこれに加えて「高い実力や固有の魅力を持つ候補者を発掘すること」や、「党の名声(そのようなものがあると仮定した場合だが)を『支持者の狭いコミュニティ』を超えて広めること」等を通じて、他党との競争に耐えうる安定した支持層を獲得することが重要な課題であろう。

13. 後書きに代えて 〜街宣は何故必要なのか〜

酒井氏の街宣を妨害した後に演説をする
諸派新人の候補。(20日)

 最後に、今回の選挙で問題となった「妨害行為」に関連して、「街宣は何故必要なのか」という問いに対する私の考えを述べたい(51) 。

 前述の通り、今回の選挙ではある候補者とその陣営による妨害活動が行われたが、ここで可視化されたものは「選挙への妨害行為を見て喜ぶ有権者」だけではなく、「街宣を不要と考える有権者」である。
 私はTwitterにてこの妨害行為へのTwitterユーザーの反応を調べていたのだが、予想以上に後者の意見を持つ者が多いことに驚いた。曰く「演説の内容は全て嘘であり、聴いても仕方がない」「そもそも心地良くないものであり、 一部の支持者しか聴いていない」「街頭演説をしなければ住民の安全が保たれる」等々。

 だが私はこういった有権者(※推定)に問いたい。「あなたは選挙の際、一体どうやって候補者を見極めるのですか?」と。

 至極当然のこととして、物の良し悪しはそれを直接見ない限り分からないものである。それは買い物をする時に店で実物を見ながら何を買うのか決める時と同様である。
 実際、私は今回の選挙の見物を通じて「金澤氏の真面目そうな雰囲気」「須藤氏の、有権者と熱心に接する姿勢」、或いは「吉川氏が抱く憎悪の感情」等を感じることができたが、これは現地で候補者に会い、その話を聴かない限り決して分からないものである

 無論、「個人演説会や討論会で十分」と反論する者もいるだろうが、そのような場に参加する有権者が政治意識の高い者にとどまることは容易に想像がつく。普段は政治をあまり意識しない者をも選挙に参加させるには、やはり候補者が街宣を通じて不特定多数の有権者にその存在を知ってもらうことが重要である。
 また中には「ネットで調べれば十分」と言い張る者もいると思われるが、ネットの情報とは往々にして「候補者が有権者に見せたい部分」のような、候補者の一面しか伝えないものである。この情報だけで候補者の良し悪しを判断するなど、まさに「CMで見たことがあるから」と言って商品を買うのと同じような愚かしい行為ではないだろうか。

酒井氏らの演説を聴く聴衆。(20日)

 多くの有権者が候補者に直接会うことで、ネットの情報や「口先の嘘」が隠す彼らの人柄や雰囲気、政策の実行への本気度といった、彼らが候補者を見極めるための重要な情報を知ることできる。これが私が考える、街宣が必要な理由である。そして今回の補選は不本意ながら、これを再確認する1つのきっかけとなったであろう。
 今後の選挙について、今回のような妨害者が現れず候補者が活発な街宣を行える環境が整備されること、そして有権者が彼らに積極的に会って投票先を真剣に吟味するようになることを願って、本稿を閉じることとしたい。


※ 資料案内

 フリーランスライターの畠山理仁氏は、TBSラジオ『荻上チキ・Session』にて今回の補選について解説している。様々な選挙の候補者を取材してきた氏が、特に妨害者の「質問」や各陣営のそれへの対応等をどう捉えているかについては、「選挙と民主主義」を考えるにあたり参照力が非常に高いものである。

 また、ウェブライターの黒猫ドラネコ氏は、今回の補選を「参政党ウォッチャーの目線から総括した」レポートを発表している。長年参政党を含む「陰謀論界隈」を観察してきた氏ならではの視点で、「存在感は限りなく薄かった」とまで言われた参政党がいかなる選挙運動を展開していたのか、その実態がよく示されている。

 更に、フリーライターの金城ガンジ氏は、乙武氏のこれまでの経歴、そして補選での戦いぶりを基に、彼の「悲哀」に関する興味深い考察を行っている。乙武氏にとって「政界進出」とはいかなる意味を持っているのか。彼の動向を追うのならば是非とも読むべきものである。

 他に、ライターの選挙ウォッチャーちだい氏は、妨害者によるその悪質な「選挙運動」を取材した一連のレポートを発表している他、補選全体についての分析レポートを近日投稿する予定であると思われる。これらを読めば、今回の選挙の詳細がより良く分かるであろう。


※ 註

(1) 東京新聞 2024年4月16日 「東京15区補選に9人届け出 裏金事件後初、衆院3補選告示 28日に投開票」

(2) 東京新聞、前掲記事。

(3) 緑の党グリーンズジャパンHP 「【選挙】4/16~4/28 衆議院補選(東京15区)、酒井なつみさんを支援します」https://greens.gr.jp/notice/senkyo/35862/(2024年4月28日閲覧)

(4) 情勢調査をまとめたものとして、X(旧Twitter) 「三春充希(はる) 第50回衆院選情報部」(@miraisyakai) 2024年4月23日午後7時25分の投稿
https://twitter.com/miraisyakai/status/1782717545461817425(2024年4月29日閲覧)

(5) なお立憲の単独で行ったと思われる街宣では、酒井氏が「市民と野党の共闘」に一切触れなかった点は興味深い。

(6) 東京新聞 2024年4月3日 「「支援者に説明つかない」乙武洋匡氏推薦方針の自民内が混乱 過去は「敵側」、女性問題も 衆院東京15区補選」

(7) NHK 「東京 参議院選挙結果・開票速報 参院選2022」
https://www.nhk.or.jp/senkyo/database/sangiin/13/(2024年4月28日閲覧)

(8) 詳細は読売新聞 2024年2月26日 「国民、東京15区補選の新人公認取り下げ…「看過できない行為があった」」

(9) 東京新聞 2024年4月16日、前掲記事。

(10) 私が乙武氏の選挙事務所を訪問した際、UAゼンセンからの為書きや自動車総連からの応援メッセージがあることを確認できたことから、このように判断した。

(11) デイリースポーツ online 2023年7月26日 「参政党 衆院選獲得目標を6→8議席に上方修正 東京ブロック女性候補者5人組「東京ファイブ」発表」
https://www.daily.co.jp/gossip/subculture/2023/07/26/0016629693.shtml(2024年4月29日閲覧)

(12) 例えばYouTube 「参政党」 2024年2月5日 「赤坂ニュースが目指すもの 神谷宗幣 【赤坂ニュース 001】令和6年2月5日 参政党」
https://www.youtube.com/watch?v=qjOec3xOOqs(2024年4月29日閲覧)

(13) 同チャンネル 2024年3月15日 「参政党 【LIVE】参政党緊急記者会見ライブ配信!3月15日(金)14:00~」
https://www.youtube.com/watch?v=F-0Lcfz1Yd4(2024年4月30日閲覧)

(14) なお、吉川氏を含む参政党のこの主張には激しい批判が起こっている。詳細は「女子SPA!」 2023年11月23日 「「農薬でがんに…」国政政党による“醜悪すぎるデマ”を農家が怒りの告発」
https://joshi-spa.jp/1273771(2024年4月29日閲覧)

(15) このポピュリズムの定義は水島が採っているものによる。水島治郎 『ポピュリズムとは何か』(中公新書、2016)

(16) 直近で行われた国政選挙を例として挙げるのならば、2022年の参院選において選挙ドットコムとJX通信社が「有権者が投票先を決める際に重視する政策」を調査したところ、「社会保障・医療・福祉」や「経済・雇用」が上位となる結果が出ている。選挙ドットコム 2022年6月16日 「参院選2022の争点はどんな政策?参院選直前の電話×ネットハイブリッド調査結果を発表!選挙ドットコムちゃんねるまとめ」
https://go2senkyo.com/articles/2022/06/16/68811.html(2024年5月2日閲覧)

(17) 21日の街宣において、吉川氏自身が「理想の政治」として使用していた表現である。

(18) 拙稿 「参政党の支持者、及び党の今後に関する考察 〜三春充希 『【特集】第26回参院選(2022年)参政党』前半部分と、それへの感想を基に〜」
https://note.com/saiiki6111/n/n3d18ff312e44

(19) このデモは4月13に都内でおこなわれた「「パンデミック条約反対」デモ行進」のことと思われるが、ウェブライターの黒猫ドラネコ氏は同デモの参加者の人数を「多くても5000人を超えるぐらい」であると主張している。詳細は「黒猫ドラネコ【トンデモ観察記】」 2024年4月16日 「【詳細レポート】4・13反ワクチン池袋デモ行進。「目覚めた」中高年が過去最大規模の集会(前編)」
https://kurodoraneko15.theletter.jp/posts/279a35b0-f997-11ee-808e-97eee5ceb7b7(2024年4月29日閲覧)

(20) 東スポWEB 2024年4月13日 「福永活也弁護士が衆院東京15区補選に出馬へ ホリエモン、はあちゅうの訴訟手掛ける」
https://www.tokyo-sports.co.jp/articles/-/298934(2024年4月28日閲覧)

(21) 大津綾香氏が率いる国政政党「みんなでつくる党」とは無関係である。

(22) 東スポWEB 2024年4月26日 「衆院東京15区補選 福永活也氏はエベレスト山中から演説「高いところから失礼します」」
https://www.tokyo-sports.co.jp/articles/-/300352(2024年4月28日閲覧)

(23) QRコードが誘導したHPのURLは https://tokyo2024-poster.studio.site/ またこの構想について、詳細は「チダイズム」 2024年4月12日 「【選挙ウォッチャー】 東京都知事選2024・N国党の30人擁立計画の解説。」https://note.com/chidaism/n/n2d476be16816(いずれも2024年4月28日閲覧)

(24) 古谷経衡 2024年4月29日 「ネットだけの人気に限界も…一枚岩ではない日本保守党の将来-岩盤保守の内情【衆院東京15区補選】」
https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/2968cce475c2c18b5435e61e3ec8053da9ef3b49(2024年5月3日閲覧)

(25) この呼びかけの効果なのか、NHKの出口調査によれば飯山氏は期日前投票者からの得票が、首位の酒井氏についで多かった模様である。NHK 「衆院補選・開票速報」(2024年4月28日午後8時放送)

(26) 古谷、前掲記事

(27) 詳細は「vistacar0924のブログ」 2023年11月12日 「もうわややー日本保守党・大阪演説ー」
https://ameblo.jp/vistacar0924/entry-12828285118.html(2024年4月29日閲覧)

(28) 水島、前掲書

(29) 実際、東京新聞は選挙後、飯山氏の街頭演説会について「(参加者は)遠方から応援に来たという人ばかりで、選挙区の江東区在住者をほとんど見かけなかった」と指摘している。東京新聞 2024年4月29日 「日本保守党支持者に聞いてみた「今日はどちらから?」 東京15区補選の現場で 記者が見た4位落選までの戦い」

(30) 朝日新聞デジタル 2024年3月22日 「秋元司元議員、高裁も懲役4年の実刑 IR汚職 補選に立候補予定」
https://www.asahi.com/articles/ASS3Q62Q7S3QUTIL006.html(2024年4月29日閲覧)

(31) なお、須藤氏は20日頃までは下記のポスターを掲示していた。デザインを変更したのはポスターの色合いが酒井氏や飯山氏と似ていたからであろうか。

(32) 産経新聞 2020年6月17日 「須藤元気参院議員、立民に離党届 都知事選・消費税減税で党方針に「違和感」」

(33) 詳細は「黒猫ドラネコ【トンデモ観察記】」 2023年9月19日 「【潜入ルポ②】”氣付いた国会議員”の対談が実現!「陰謀こそ事実では」「ディープステート」にユリ・ゲラーの話題まで…。参政党政治資金パーティーin東京ビッグサイト」
https://kurodoraneko15.theletter.jp/posts/ef7e8410-556e-11ee-9ba5-abc9cf85c498(2024年5月1日閲覧)

(34) X 「大濱﨑 卓真」(@oohamazaki) 2024年4月27日午後10時48分の投稿
https://twitter.com/oohamazaki/status/1784218132548288791(2024年4月29日閲覧)

(35) NHK 2024年4月29日 「衆議院東京15区補欠選挙2024年 開票結果や投票率は 投開票4月28日」
https://www.nhk.or.jp/shutoken/newsup/20240428a.html(2024年4月29日閲覧)

(36) 朝日新聞デジタル 2024年4月28日 「維新、「立憲たたき」失敗  保守層狙いも「有権者には刺さらない」」
https://www.asahi.com/articles/ASS4X2HP5S4XUTFK008M.html(2024年4月29日閲覧)

(37) 産経新聞 2024年4月30日 「小池百合子都知事、補選で露出度アップ狙い裏目 知事選にらみ、自公意識も…影響力低下」

(38) 拙稿 「【選挙徘徊記】2023年 大阪府・吹田市議選 感想」
https://note.com/saiiki6111/n/nefcefed7a46a

(39) 拙稿 「【選挙徘徊記】2023年 大阪府・東大阪市議選 感想」
https://note.com/saiiki6111/n/nc5356734dc91

(40) 古谷、前掲記事

(41) もちろん、この結論は酒井氏及びその陣営の努力を軽視するものではない。

(42) なお「得票数が2022年の参院選の比例区(7,451票)に比べて大幅に伸びた」ということを成果として主張することは可能であろうが、投票率が減少したとはいえ、「選択肢が9名である補選」で「選択肢が、参政党と競合する極右系政治団体を含む15団体であった参院選比例区」と比べて得票が増えることは、至極当然であろう。

(43) フラットムーン山本 2024年4月21日 「参政党 統一地方選から1年、地方議員の増減」
https://note.com/bm1d4b6/n/nd37c7c08648b(2024年4月29日閲覧)

(44) 例えば選挙ドットコム 2023年10月24日 「日本保守党をどう思う?支持政党別・年齢別に期待値を詳細分析!参政党支持者とのかぶりはどれくらい?選挙ドットコムちゃんねるまとめ」
https://go2senkyo.com/articles/2023/10/24/88426.html(2024年4月29日閲覧)

(45) 亀ヶ谷雅彦 「選挙予測のアナウンスメント効果に関する先行研究の概観―アナウンスメント効果の下位効果の拡張に向けて―」『山形県立米沢短期大学紀要』Vol36(2001)

(46) 毎日新聞 2022年7月14日 「 “参政党現象”とは? ノーマスクで人だかり 参院選で議席獲得」

(47) なお今回の選挙戦では、参政党を離党した武田邦彦氏が飯山氏を、同じく吉野敏明氏が須藤氏を応援していた。そのため参政党と考え方の近い有権者の一部が、離党したこれらの著名人の応援を見て飯山氏や須藤氏に投票した可能性も考えられるだろう。離党者の有権者への影響力については今後の課題としたい。

(48) なお神谷氏も吉川氏について、「江東区にそんなにゆかりがあるわけじゃないから、『よそ者だ』『よそ者だ』というビハインドがありますしね」と述べている。YouTube 「参政党」 2024年4月27日 「東京15区補選の舞台裏 神谷宗幣 【赤坂ニュース 066】令和6年4月27日 参政党」
https://www.youtube.com/watch?v=_hcVKJUrYpY(2024年5月3日閲覧)

(49) 21日までに行われた世論調査における政党支持率の平均として、例えばX 「三春充希(はる) 第50回衆院選情報部」(@miraisyakai) 2024年4月23日午前7時33分の投稿
https://twitter.com/miraisyakai/status/1782538366174806110(2024年5月3日閲覧)

(50) NHK 2024年3月3日 「参政 神谷代表 “次の衆院選 比例代表中心に6議席獲得目指す”」
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240303/k10014377831000.html(2024年4月30日閲覧)

(51) なお、私はフリーランスライターの畠山理仁氏の影響を強く受けている。したがって、私の考えが『コロナ時代の選挙漫遊記』(集英社、2021)等で述べられた彼の主張の二番煎じに見える点はご了承いただきたい。

※特記の無い写真は全て筆者撮影。


※ 追記(2024年5月6日)

 本稿では「ビラ配り、辻立ち、個人演説会等のリアルでの活動」を「地上戦」、「SNSを使った宣伝等のネットでの活動」を「空中戦」と定義づけていたが、本稿公開後、これが誤用であるとの指摘を受けた。

 確認したところ明らかに誤った定義を用いていたことが判明したため、本稿で「地上戦」と記述していた部分は全て「街頭での活動」に書き直した。
 誤解を招きかねない表現をもって読者諸氏を混乱させたことをお詫び申し上げると共に、ご指摘いただいた「philos」氏(@pp56568787)にはこの場を借りてお礼を申し上げたい。


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