ノート。 君がまだ3歳の頃、かかは君を連れて家を出た。場所は知らされなかった。 その場所に君のおもちゃはあるのか? それが真っ先に気になった。家には君のおもちゃが散らかったままだった。 その1週間後、ファミレスで君と会える可能性があると告げられる。 僕は古本屋に走り、君が好きな乗り物やキャラクター、動物の本をたくさん買った。その絵をハサミで切り取って、のりで貼り付けて1つのノートを作り始める。大きくなくて持ち運びができれば捨てられることもないし、君が持っていることも
白市「もしもし?」 凡内「はいはい、どうしたの?」 白市「落ち込んでるの?」 凡内「落ち込んで…ないよ」 白市「落ち込んでるじゃん!」 凡内「うるさいなぁ…どうしたの?」 白市「妬いてるの?」 凡内「何に?」 白市「私さ、同窓会に行っても浮気なんかしないよ?」 凡内「うん…わかってるよ」 白市「ほら、凡内」 凡内「何?」 (ガサガサガサガサ…) 凡内「何?なんか雑音が…」 白市「落ち着いた?」 凡内「いや…何が?」 白市「赤ちゃんってね、スーパ
眠った僕がいる空間に、君がいる。 君が生きていて、 隣で本を読んだり時々歌ったり。 生きていることを、眠った僕に伝えてくれる。 眠った僕の、近くにいてくれる。 その鼓動が愛しい。 誰も気にせず、 この二人がいつまでもこの二人で、 二人だけの世界を展開していく。 不安定な心を互いに持ち寄せ、共存したい。 手に取るように見せられるはずだから。 わかるはずだから。二人は。 お菓子の袋を開ける音、お菓子を噛む音。 今は離れているけど、また聞かせてほしい。 あのね、
天井を見ていた。見ていることにようやく気づいた。ずっと何もしていないことには、まだ気づいていない。 どうして体が起こせない…。 部屋には彼女がいないのに、どこかで香水の匂いがした。部屋全体に染みついているのは甘くて変なお香の匂いなのに、今は香水の匂いを感じた。 この枕か? そう思った瞬間に枕を足元目掛けて投げた。するとタバコの匂いがして気持ち悪くなる。彼女を今は思い出したくない。 電球すら眩しくて、左手で影を作った。 欲望の果ての匂いが染みついている。それは左手だ
お前は俺か!
見つけた!
いつかまた豪遊しようファミレスで 苦楽を共に青春の数
昨日の晩、お風呂で鏡を見たら鼻毛がまぁまぁ伸びていた。 春だからかな…? なんて思った。量的に抜くのもなかなから痛そうで、後で切ることにしても、それを忘れてしまったらどうしようと不安になるくらい飛び出ていたので、普段ヒゲを剃っているT字カミソリでなんとかしようとした。 そしたら、血だらけになった。 たくさん寝たのに、寝た後の方が目のクマがひどくなっていた。 僕の可愛い商売道具が傷だらけだ。 目の下のクマ、血だらけの鼻、破れたトランクス。今日の僕は部族だった。後は槍
久しぶりに実家に帰って、彼女にもらった手土産をまるで自分が買ってきたかのように渡す。適当に嘘つきながら母と話していると、すぐに見破られていることに気づいた。 それでも母は追求することもなく、黙って僕の話を聞いていた。なにに驚いたかというと、手土産の色鮮やかな綺麗な餃子に、母も彼女と同じようにポン酢を乱暴にドボドボとかけた。 「餃子ってさ、ポン酢ってさ、そうじゃないよね?」 「食べたら一緒よ。あ、何これ美味しい…」 くだらない話で盛り上がって数時間後、再び実家を出る時に
彼女の家に住むようになって数日が経った。彼女は僕に諭吉を数枚渡して仕事に行く。僕はその間、パチンコとゲーセンとラーメン屋、そして銭湯でゆっくりしてから彼女の家に戻り、ゴロゴロしながら詩を考えたりゲームをしたりしていた。 僕の心は諭吉に縛られていた。 彼女は仕事を終えると百貨店で食べる物を買って帰ってくる。飼い犬のように尻尾を振って出迎えた僕はその餌に食らいつく。 「いつもどこで髪の毛を切ってるの?」 「子供の頃から行ってる地元の床屋さんです」 「だからださいのね。美
君は相変わらず元気で明るい男の子だった 本当に僕の子なのかと疑いそうになるくらい 大きな声で笑う明るい男の子だった 両親から与えられた理不尽なストレスが 今後どのような形で出てしまうのか 非行や登校拒否、引きこもり いつ何が起きても不思議ではないくらい 一人では考えきれないものを与えている 最近の面会交流では そんなことを気にしながら君の顔を見ている 君が今後どうなっても それはどんなことでも悪いことではないから いつでも近くにいる存在でいたいと思う 「寂しがりの父
気持ち良く起こそうと、寝癖を直そうと、今日1日を見守ろうと、雨がまた会いに来てくれた。 きっと今日も最高の1日になる。 ね。
久々に会った息子の髪型が奇抜なツーブロックになっていた。履いているジーンズはダメージとかそういうレベルじゃない。 完全に不良になってる…。 実家に来て食事をいただく。 奇抜ちゃんの父親は相変わらず「鼻かみなさい」と母にティッシュを手渡しされている。
彼女の部屋でおにぎりを食べていた。彼女は缶ビールを開けて一気飲みし、2本目を少しだけ飲むとタバコに火をつけた。 テーブルの上には今まで見たことがない鮮やかな色と綺麗な形をした餃子が置かれて、彼女はそんな上品な餃子の上にポン酢をドボドボとかけた。 「私がどんな仕事をしてると思う?」 「何歳なんですか?」 「34。もう質問返しは無し。答えて」 香水臭くて化粧が濃くて、派手な赤いコートを着ていた。僕の好きなタイプではないけど、顔も美人な方だと思う。そして高級マンション。お
タクシーの中に香水の匂いが充満する。鼻に刺さるような強い匂いはまるで女性の気の強さを物語っている。 僕は女性の質問責めに遭う。 「即答してね。本当に仕事してたの?」 「はい。最近辞めてしまいましたけど…」 「手取りは?」 「17万くらいでした」 「課長の名前は?」 「吉崎です」 「部長は?」 「秋田です」 「どっちが好き?」 「秋田さんです」 「ごめんね。私、疑い深いの。運転免許は持ってる?」 質問が続いていく途中で気づいた。彼女は疑い深いのではない
高校を出て社会人になってから数年後、学生時代から続いていた恋が壊れそうになった。それが原因だった訳ではないけど、同時に仕事も続けられなくなって辞めてしまった。 大人はなんて息苦しいんだ。 実家暮らしとはいえ、生きていかなきゃ生きてはいられない。 しんどい、休みたい。無職の今ならいくらでも休める。ご飯は食べさせてもらえる。でも、そういうわけにはいかない。ここで休んだらずっと何もできなくなりそうで恐い。昼と夜も必ずひっくり返る。だったら早く就職しなきゃ。 そう思った瞬間か