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「遺跡だけだと思ってない?」【佐賀の暮らし観光案内所 vol.1〜吉野ヶ里町編〜】

ここは、佐賀の暮らし観光案内所。
佐賀県に暮らすプレイヤー5人が、20市町に住んでいる「人」を訪ね歩いたダイアログ。
主役はその土地で暮らす人や生活だ。私たちは、地域に生きる人たちと「友達」になれるような観光を「暮らし観光」と呼び、地元目線で案内してもらった町歩きでわかったことをみなさんに紹介していく。

案内所メンバーがなぜこの「佐賀の暮らし観光案内所」を始めたか?については、下記の記事より。

控えめにいって最高!だった吉野ヶ里町

吉野ヶ里町といえば、「吉野ヶ里遺跡」それから......

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この物見櫓以外、なかなか出てこない人は佐賀県民でさえも少なくないのでは?
そもそも吉野ヶ里は、佐賀県東部に位置する町。神埼郡に属し、神埼市と鳥栖市に挟まれた人口1万5千人程の小さな町だ。聞くところによると、バイパス区間に反するように長く町が広がっているため、よく通り過ぎられるという。

佐賀県は車社会。「もう、吉野ヶ里過ぎた?」というくらいあっという間で、立ち寄ることは確かに少ない気がする。また、近隣の福岡県久留米市に近い位置にあるとはいえ、福岡県からわざわざ観光にくることはそうそうないのも想像がつく。

今回訪れたのは、そんな吉野ヶ里町だが、「暮らし観光案内所」第1回目にして案内所メンバーの予想を大幅に裏切り、皆さんにおすすめしたい場所となったことを先に話しておきたい。

「駅前をもう一度賑やかにしたい」
OK COFFEE Saga Roastery 福山徹さん

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吉野ヶ里の町案内をしてくれたのは、OK COFFEE Saga Roasteryオーナー株式会社アイテク代表の福山徹さんだ。福山さんは、吉野ヶ里町出身で昭和14年から続く町の印材工場を守っている。

町の印材工場と言っても、印材の全国シェアNo.1というから驚きだ。「印材」といってわかる方もいるかもしれないが、いわゆる印鑑の上の部分。特に実印や、学校などで使われるゴム印に特化しているという。

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そんな福山さんがなぜカフェを開いたのか?

ふくやまさん-3

「吉野ヶ里町(旧三田川町)で、じいちゃんの代から84年間印材の事業をしているご縁もあって、僕が会社を継いだ時にはこの町に何か貢献したいと思っていました。
吉野ヶ里公園駅からOK COFFEEに歩いてくるとわかると思うのですが、どこもシャッターがしまっていて、昔は商店街だったなんて誰も想像がつきません。

小さい頃からずっと住んでたこの町の駅前がこれだけ廃れているということに、昔から残念な気持ちを抱いていました

ふくやまさん下

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ふくやまさん-3

「町を賑やかにしたいと思った時に、みんなが気軽に集まれる場所を作ろうと考えたんです。

コーヒー屋って、家と違うホッと一息つけるもう一つの場でもありますし、誰かとコミュニケーションをとる場でもあるじゃないですか?
僕は、そういう場所を駅前に作りたかったので、コーヒー屋という選択をしましたね」

ふくやまさん下

学生時代、バックパッカーをしていた経験のある福山さん。OK COFFEEの「OK」は、その時に大阪で出会ったコーヒー屋の友人の頭文字。意気投合した友人との出会いもあり、佐賀で豆を焙煎し、店をオープンするに至ったという。

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吉野ヶ里公園駅から徒歩3分ほどの店舗の目の前には、JRを利用する高校生の駐輪場が。学生も集えるようにコーヒーは390円とあえて低めの設定。また、クリームソーダやクラフトコーラなど、コーヒー以外も揃えている。

ふくやまさん-3

「開かれた場所があると、学生も地域の大人と繋がりやすいですよね。”ここに行けば楽しめたり安心できたりする” そういう外と繋がれる所って若い人には必要だし、町にとっても大事なことだと思うんです」

ふくやまさん下

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店の前で話していると、福山さんに声をかけてくる通りすがりのおばちゃん。「賑やかになったね〜」と昔を懐かしむように立ち話する姿を見ると、福山さんとこの場所が地域の人に認知され、ちょっと足を止めたくなるスポットになっていることがわかる。

ふくやまさん-3

「ここの店がある場所は、同じつくりの建物がいくつか並んでいるうちの一つ。昔は誰もが知ってる建物だったので、店を出すならここがいいと前から思っていました
吉野ヶ里って、シャッターはしまっているんですけど、実は住んでる方も多くいらっしゃって、空いていないってことも多々あるんです。それが課題だったりもするんですが……」

ふくやまさん下

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株式会社スチームシップ YOSHINOGARI PORTO

ふくやまさん-3

「そんな中、僕がコーヒー屋を開いてしばらくして、また一つシャッターが開きました

吉野ヶ里の特産物を掘り起こしてふるさと納税で販売するクリエイティブな企業(株式会社スチームシップ)が空き家を掃除するところからはじめ、リノベーションし、拠点を作ったこともあって、駅前に若者が増えてきています。

町の人が地域のためになるんだったらと貸してくれたことが今につながっているので、そうやって少しづつ吉野ヶ里で何かやりたいと思う人が増えて賑やかになれば嬉しいですね」

ふくやまさん下

【OK COFFEE Saga Roastery】
住所:佐賀県神埼郡吉野ヶ里町吉田273-11
時間:11:00~18:00
定休日:火曜日、水曜日
Instagram:https://www.instagram.com/okcoffee_sagaroastery/?hl=ja

行列のできる精肉屋『三田川ホルモン』

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福山さんの話を伺ったところでいよいよ町歩き。コーヒーを片手に『三田川ホルモン』へ向かった。

34号線沿いにある人気の精肉屋さんだ。なぜ「三田川(みたがわ)」か?というと、ここは元々、三田川町という町だった。吉野ヶ里町は、三田川町と東脊振村が合併してできた町。それが今もなお、店名として残っているという。

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ふくやまさん-3

「ここは知る人ぞ知るお肉の名店です。近くにある山茶花の湯などの施設でBBQを楽しむというのもおすすめですし、ここでお肉を買って家で焼肉を堪能するというのがこのコロナ禍でさらに増えたみたいです。

”ここのホルモンが新鮮で美味しい” と町外の人も結構買いにきている人がいるみたいで、いつも店の外に行列ができてます」

ふくやまさん下

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店名に「ホルモン」という名が付いているだけあって、店内には常時15種類の新鮮なホルモンを準備しているという。しかも全て新鮮な国産和牛

食肉卸屋を介さず、食肉センターへ毎朝仕入れに行き、肉は塊で仕入れ、部位ごとに捌いて店で調理しているからこそ新鮮な肉を販売できる。

特に、まるホルモン(丸腸)は人気商品で、早々に売り切れることもあるとか。創業30年来、先代から受け継いでいるという秘伝のタレともつ鍋スープもお客さんに愛されている味だ。

お客さんと顔を合わせる対面販売に拘っているということもあって、色々と聞くことができたので、ホルモンについてよく知らないという方も種類や食べ方など、相談してみるといいかもしれない。

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案内所メンバーNは、帰りにまるホルモンを買って家で焼肉にした。秘伝のタレを絡めてもらっていたので、そのまま焼くだけだったのだがなんとも言えないプリプリ感!絶品だった。

持ち帰りに時間を要する人は、お土産に「極上国産ホルモン アヒージョ」「極上和牛アキレス アヒージョ」もおすすめ。

【三田川ホルモン】
住所:佐賀県神埼郡吉野ヶ里町吉田948
電話:0952-52-6253
時間:10:00~19:00
定休日:水曜日(但し祝日・GW・お盆・年末は営業)
HP:http://mitahoru.jp

9年越しに姉妹でOPEN!
カレーとスイーツのお店『せなふち。』

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2021年5月にオープンしたばかりのスパイスカレーとスイーツのお店『せなふち。』ここでランチを!と思っていたところ、お客さんで混雑するということで、テイクアウトを予約しておいてもらった。

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平日なのにすごい行列!!
取材日の近くに日本テレビ系 番組「幸せ!○○ビーガール」の放送があったということもあるが、これだけ人気のカレーとはどんな味なのだろう……と胸を膨らませながらカレーを持ち帰る。

ふくやまさん-3

「OK COFFEEからも近くて、若い姉妹がお店を開くということでオープンの手伝いにちょこちょこ行っていました。

お姉さんがカレー担当妹さんがスイーツ担当の可愛らしいお店で、地元の食材を使い、カレーは数種類ものスパイスにこだわった絶品カレーですよ」

ふくやまさん下

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OK COFFEEの焙煎所にお邪魔させてもらい、実食。
本日のカレー「佐賀のりキーマプレート」。 紫キャベツのラベにゆで卵、佐賀大豆ピクルスにスパイスポテト、人参の辛子和えも添えてある。

一口食べると、カレーのスパイスと甘みをしっかりと感じ、後からくる磯の香りが相まってまた一口欲しくなる。添えてあるスパイスで好みの辛さに調節できるのもまた一興だ。

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美味しいカレーに話も弾む案内所メンバー。吉野ヶ里歴史公園もいいが、近くに小さな公園もあるのでカレーを持ってお散歩なんていうのもいいかもしれない。

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閉店後にお話を伺った。お店を切り盛りする姉妹は2人とも20代。
吉野ヶ里にお店を開いたのは、吉野ヶ里に住んでいるということもあるが「カフェを開きたい」という料理が得意で大好きだったお母さんの昔からの夢だったから。

お店を開こうと思ってから9年。大工仕事が得意なお父さんの力を借り、町の人たちの協力も得て、自分たちでリノベーションした店内は白い壁とオールドカラーの木で優しい雰囲気だった。

店名も家族の頭文字をとって命名。『せなふち。』と書かれた手書きの看板とクッキーが訪れる人を温かい雰囲気に包んでくれる。

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カレーについて聞くと、お姉さんの酒本 史(さかもと ふみ)さんが大のカレー好きで、日々スパイスカレーを食べ歩いていたという。後に、自分で作りたくなり研究していくうちにスパイスの量がすごいことに。

店内に並べてあるスパイスを見渡しても、ざっと20種類以上はある。
毎月変わるというスパイスカレーを求めて「今日はどんなカレーかな」と足を運んでみるのもいいかもしれない。

【せなふち。スパイスカレーとおやつと。】
住所:佐賀県神埼郡吉野ヶ里町吉田297-5
電話:050-8881-5268
営業日:火・水(12時〜テイクアウトのみ)・土・日
          11:30-16:00(L.O15:30)
Instagram:https://www.instagram.com/sena_fuchi/?hl=ja

町歩きのお供に!お土産に!『三田川饅頭』

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次に向かったのは、創業68年の『菓子処 中島屋本舗』。三田川ホルモンと同じく34号線沿いにある老舗菓子店だ。のぼりに吉野ヶ里遺跡のイラストと「佐賀銘菓 三田川饅頭」と大きく掲げてあるだけあって吉野ヶ里を代表する銘菓ということがうかがえる。

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皮が薄くて餡子がたっぷりの地元の銘菓です。小ぶりで美味しいので、地元の人がどこかに行く時に手土産として持って行くのによく利用されるお店です」

ふくやまさん下

ちょうど買いに来ていた地元のお客さんは「美味しいですよ!」と言いながら36個入りを購入。贈り物にも親しまれているようだ。

三田川の由来は元々、手村・吉村・豆村の「三つの田」と箱川村の「」をとって三田川町となったという。単純だが、なんだか愛着が湧いてしまう名前。
今はない地名が銘菓になっていることをみると、町のアイデンティティを感じ、町の名刺がわりになっているお菓子だと思った。

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饅頭を割ってみると本当に餡がぎっしり。食べると皮のやさしい口当たりにほろりとほどける白こし餡がマッチして、後から甘さが広がる。

ここまで薄くしっとりした皮の饅頭を焼くのは難しいだろうな……なんて職人の技術の高さに思いを馳せる一行。

ちょっと高級感を感じるのは、北海道の大手亡豆を使用した上質餡に卵黄と蜂蜜が贅沢に使われているためだ。

1個100円と手頃な値段なので、町歩きのお供に。お土産にいかがだろうか。

【菓子処 中島屋本舗】
住所:佐賀県神埼郡吉野ヶ里町吉田76-5
電話:0952-52-2354
時間:9:00~18:30
定休日:月曜日
HP:http://www.sashoren.ne.jp/mitagawa/vm/nakashimaya/shokai.html

チャーミングな植物と店主に出会う
『HANA HANA LEAF』

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最後に訪れたのは、生花と観葉植物のお店『HANA HANA LEAF(ハナハナリーフ)』。町歩きをしている最中、大きなリースと珍しい植物が気になっていた場所だ。吉野ヶ里公園駅近く、34号線沿いにあるが車では気づかなかった

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中に入ると「いらっしゃい」と店主の中村良子さんが迎えてくれた。
中村さんは吉野ヶ里出身で、駅の交差点付近をよく通るたびに「ここで花屋をやる」というのが3歳からの夢だった

花屋歴は長く、他の花屋で働いていたのがちょうど7年ほど前。今の場所が売りに出た時、他にも待ち人があり3番目だったのが、なぜか回って来たという。

福山さんも知らなかった事実に、話が弾む。
町の人の夢の話を聞くと、こちらまで勇気をもらい、嬉しい気持ちになるのはどうしてだろう……

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今までも通っていたかのような錯覚に陥りながら、店内を見渡すと、コウモリランやモンステラ、ウツボカズラなど珍しい植物がたくさん並べられていた。だいぶ年長者の植物もいて、なんだか声が聞こえてきそう……

「花屋歴が長いから普通のじゃ飽きちゃって(笑)」と話す中村さんの雰囲気がチャーミングでなんとも可愛らしい。

こぢんまりとしているけれど見応えたっぷりで店主の優しい雰囲気が魅力のお店。お花や植物が好きな人はついつい長居してしまいそうだ。

HANA HANA LEAF(ハナハナリーフ)
住所:佐賀県神埼郡吉野ヶ里町吉田265-6
電話:0952-53-3558
時間:10:30~18:00(金・土 19:00)
定休日:木曜日
HP:http://hanahanaleaf.area9.jp

おわりに

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町歩きをしてみて、地域の人の人柄案内人と町の人の関係性までも垣間見るという経験をした案内所メンバー。

特に、今回の案内人である福山さんは、本当に至る所で町の人に呼び止められ、取材が一時中断することもしばしばあった。けれど、それだけ町の人と顔を合わせているということだし、信頼関係が築けているということだ。
会う人会う人、よそ者の私たちにもフランクに話しかけてくれて、コミュニケーションが取れたのは本当によかった。

訪れるまで全然知らなかった吉野ヶ里。案外歩いて回れるということもわかったし、福山さんを介して町を見ることで、その町に住んでいるような感覚になったのは案内人メンバー全員が感じたこと。

今、この記事を読んでいるあなたがもっと吉野ヶ里を知りたいと思った際は、福山さんにぜひ、会いに行ってほしい。

これにて吉野ヶ里の暮らし観光は終了。吉野ヶ里遺跡しかないと思っててごめんなさい。

P.S 今回紹介しきれなかった吉野ヶ里のソールフード「大久ラーメン」や地元のおばちゃんの憩いの場「純喫茶 輪ごん」も次回は行ってみたい。

次回予告

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案内所メンバーと福山さんがトークセッション!町歩きを終えての感想や吉野ヶ里の暮らしについてさらに掘り下げて聞いていきます。

・福山さんにとっての吉野ヶ里って?
・まちづくりのルーツは実はお父さんから引き継いでいた?
・「表現する場」の必要性

など、次回もお楽しみに!

text by:中村 美由希
photo by:壱岐 成太郎

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