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57話-感想『囀る鳥は羽ばたかない』

百目鬼の好意はきっと矢代にとって「喪失」そのもの。欲しいものが眼前に現れるなど恐怖でしかないのだろう。期待は失望。知る事は失う事。きっと後者ばかりを「俺は知りすぎている」けど、振り子の様に前者がある。今までは無視すれば済んできたのに、百目鬼がそうさせない。

56話を読んだ後、人生で初めて詩を書きました。「もうどんなラストでも大丈夫」と心の準備ができた、その理由を。「奴隷」というタイトルでした。言葉も強いので(本当は下手だから)投稿を見送りましたが、なんて事はなかった…かちく。

色んなものを辞退(resigration=諦観)する矢代さん。人間も辞退するのですか

1) 家畜

”傍観者にすることで俺を保っている”…わけでもない。自己卑下ですね。影山の「ガキのままの気がしてる」(7話)には反発もしたし、「変わらないのは死人くらいだ」(42話)とも言っていたのに。「何も変わらない」なんて卑屈にしか聞こえない。変われない部分だけ見て「成長しない家畜」なんて、ペーソスを一線越える。そんなに必死なら、また井波の所すら行きかねないですね。

欲しかったのは「親友」ではなかったし「相性がいい」でもなかった。でもそう仕向けた自分。孤独や絶望を反復し、矛盾をループする。
「家畜」という言葉が出るのは「なぜ俺じゃなかったのか」(1話) に本当は気づいているからではないですか。

・ 奴隷

せっかく解放された檻へ自ら戻る姿に「奴隷」という言葉が浮かんだ。自分の居場所だと言い聞かせるように暗室へ戻ろうとする…過去に使役されているみたい。

41話扉絵、感情不在で死んだ魚のような目の2人にも「奴隷みたい」と感じた。再会前の2人は、感情が脱け落ちたように描かれて見えた。「相変わらず暗い」「はいしか聞かねー日もある」百目鬼と、「本当にどうでもよくて」「痛いだけマシ」な矢代。それって人間としてどうなの…感情を手放したら、それは奴隷ではないのか。誰かの。何かの。
でも56話でやっと矢代も感情的になり、もがいてた。「好きだよ」の表情を見て、もう違うと思ったからこそ「奴隷」という詩を書きました(奴隷と家畜は違いますが、ただでさえ恥ずかしいポエムを「家畜」の後に出す根性はなし)

・ 久我

久我は家畜にも奴隷にもならない。「抵抗してぇだろ 自分の居場所くらい自分で決めてぇの」とキラキラ(ギラギラ)して、感情を手放さない。久我が居場所を手に入れたのは、自分を縛らないからではないのですか。
てのひらいっぱいで掴めなくっても、百目鬼に手を伸ばす矢代を家畜とは思えない。雑巾でもない、家畜でもないから、自分の居場所を自分の手で掴めますように。

2) 百目鬼

百目鬼の塩梅の良さによく「もう髪に触れられませんね」を思い出す。あんな風に触れる事が許される隙を、よく見定める人だな…と。 会話中も触れ続けたり、終わればさっと手を退けたり、そういう駆け引きやバランス感覚。
性行為というフィールドはある意味矢代のホーム。そのフィールドではどうも自分を受け入れてくれる。そして安心や快楽からか隙を見せてくれるし、微睡まどろむ矢代は他よりずっと素直。
身体はとっくに“酷いのが好き“じゃないと伝えているのに、矢代の口は未だ「好き」と発す。(それは仕方がなかったと思います。でも百目鬼が会話を断念しても無理ない…)
身体を繋げる百目鬼の思い、哀しいけど消せない解釈があります。別noteで投稿しようかな…と思います。「節操なし」を添えて。【追記→書きました。記事の最後にもリンク置きます】

・「吐きたいなら吐けばいい」
そんな事もう言わないで…。吐いても辞めないと言う自分を父親に重ねていたし、自分の愛撫で相手が吐き気を催すって…そんな拒否ありますか。自分への拒絶でないと分かってそうですが…苦しい。
「吐く」は認知的不協和と感じました。(綺麗な百目鬼に)「大事に扱われているという認知」と、(汚い自分は)「大事に扱われる人間ではないという認知」の溝。この、認知の矛盾が埋まらない状態(認知的不協和)はかなり気持ち悪く不快でしかない(ストレス→自律神経の乱れ→吐き気)。この不協和を解消する為なら、無理な自分だましすらする…矢代がよくする強引な思考回路(ごめんなさい)もそういう風に見えます。

・ 菩薩顔(無視メキ)

返事する代わりにこれである。体を矢代に向け直し、菩薩の慈悲相。矢代の試すような吐き台詞に「もうそれには付き合いません」と言ってる様に見えました。「全部自分のせいにして構わないし、いくらでも待ちます」そう諭すような、宇宙の様に広い胸筋…じゃなくて心。解釈全く違うかも知れないし上手く言葉にできませんが一番好きなコマです。無視メキ

3) 矢代さん

女ができた百目鬼”にでないと、好きだと認められなかった様に思う。喪失(期待を持てない状況)でないと、言わば安心して”欲しかった”と認められないのではないのか。影山に彼女ができ、自分は「親友」。突き放されたから”人を好きになった”と認められたのでは。

・ドン

そうですよ矢代さん、その人「全て自分のものにするみたい」な触り方で、残らず囚えていったあの百目鬼、「俺しかいらなくなる」呪いをかけた百目鬼です。もっと言えば「手放したくなかった」百目鬼。怖いですか。そして「俺のせいで簡単に死にそうになる」百目鬼です。怖いですよね。自分の全てを奪う「絶望」にすら見えるかも知れませんね。

他、矢代さんについては思うところは他noteにそこそこ書いてるので略…(矢代さん①は読みにくい感じ、③は②とセットで書きましたが未投稿。結局共有してるの②だけ…)

「矢代さん①人格」を読んで下さった稀有な方へ:
色々書き散らかしましたが、見方は変わってません。”百目鬼を母と重ねる理由”を書いた際「今その立ち位置にいるのは矢代本人」と書き逃げしましたが、今回の「奴隷」の様な意味です。でも「好きだよ」は本当に仕方なかったと思います…「加害者への抵抗は時に最悪の悲劇を招く」不運にも義父がチラついた台詞に、反論はできなかったと思うのです。でもその自分にもがいてる表情は「もう違う(奴隷じゃない)」と思いました。
紹介した曲、もしまだ聴かれてなければぜひ…自分を”動物”と称しますが、最後のー文、共感します。

矢代さん③は読みやすい感じで投稿します

4) セ(ただの狂言)

もうですね、ぷちパニック。こんなの流石に恥ずかしい。先生のドえs…略
「セ ひく 肉欲 = 57話の私の動揺」
こんなむさぼる様な強刺激ビジュアルなのに肉情を感じない。いや当然あるんでしょうけれど?ビジュアルの割に?え?動揺
今回明確には描写されてない、身体的な絶頂。本当にそれ(絶頂)はどうでもよくて…(個人の見解)。溺れる程のエロスに、矢代がエロスで返して…
溺れないようあらがう表情も艶かしい。2人のうっすら覗く黒目、湿った息、指先…。緊張感も漂いますが、二人とも“うっとり“が溢れすぎ…恥ずかしい。恥ずかしいから箇条書き↓(時系列)

・百目鬼それ何してんの? (手技)
矢代さん「挿れろ」じゃなくて「欲しい」と言ってもろて…
頬のキz…(めざとい)
「ふぅ」である
「俺は…してね…っだろ」そうですね、してないですね。あなたのは「どうにかして欲し…略
「今更俺が恥ずかしがるとでも?」と言ってたのに「見んな」井波たばことしてる顔は勝手に観ろよだけど、百目鬼好きな人としてる顔は見ちゃだめだそうで
百目鬼が自分をどんな顔にしてるか想像もつかないですよね、すごい事になっt…略
・コアラはどう見ても「お前いい」。身体じゃなくて全部欲しい。正式名称は「だいしゅきホールド」らしいです
百目鬼、大きな背中で一生涯天女を背負い、大きな胸で天邪鬼あまのじゃくを受け止める。胸にも背にも矢代さん。百目鬼の矢代サンドできあがり

・ 百目鬼のセ

百目鬼との行為は、毎回矢代を素直にさせると思う。締め切ったカーテンが開く様に素直な感情が毎回ふと流れ込む(カーテンの解釈は微妙に違いますが)

25話の行為後、傘を差す母子に心動き、車内で自分は独り雨ざらしだと知る。
52話の行為後、去った百目鬼の好意に、自分がそれを探してる(呪い)と認める。
57話の行為後、百目鬼への態度の矛盾と、心身の反応の矛盾を認める。そして何より「好きだ」と認めたからこそ、孤独と絶望に涙する自分を思い浮べたのだと思う。手を伸ばさずに終えた恋。
「お前は1人だ」と突き付ける様な場面。その回想は、それは嫌だという願望に見えるし、「成長しない家畜」という発言も、それは嫌だという望みそのものに聞こえるのです。

・ エロスとタナトス(デストルドー)

百目鬼のセックスはエロス、矢代のはタナトス。そう見えるけど、真逆にも感じる。
25話を読んだ時に思った事です。さらっと書く気ではなくて…もっと色々言葉にしたものを投稿するつもりです。エロスとタナトスは表裏一体だけど、こんなにも行き来してみえるセックスを囀る以外で見た記憶がない。と言っても私は18歳未満(精神面)なのでR-18をあまり見た事がなかった…説得力が0ゼロ
結局エロスに照れるという話です(違くないけど違います)。溶け合う2人は照れますよね。ふぅ

58話予測たっぷりつぶあん(朝食)買って戻る百目鬼と「なんでパンなんだよ。ナメてんのか」と喜ぶ矢代さん

神谷には豚まん

百目鬼って神谷に矢代さんを重ねてましたよね。だから優し…え違う? お目付け役神谷の動向が気になります。
おわり。


【あとがき】
今回感じた事というより、過去書いた事を多く載せた気がします。違います。2人のセで思考停止になった訳じゃないです。

誰も興味ないと思いますが、私は最新話を一読し感想を書き散らかした後は、音楽をひたすら聴きます。先日「なに聴く?」という会話をして楽しかったので、2曲だけ共有…

Eagles『Desperado』(Diana krallカバー)
Bump of Chicken 『ギルド(曲を元に作られた15分ショートフィルム『人形劇ギルド』もぜひ観て欲しい…マンナズという百目鬼がいます。謎)

厳しくも真心こもった2曲です。57話だから聴いたって曲も沢山あります…どこかで共有したいです。
Desperado洋楽なので私による意訳を置いときます恥↓

あとがきが長い。

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