夢月鏡花

短編の物語を主に創作しています。 3分程度で読める物語がほとんどです。 日々精進してい…

夢月鏡花

短編の物語を主に創作しています。 3分程度で読める物語がほとんどです。 日々精進していきます🙌 皆様いつもありがとうございます!! ヾ(´∀`*)ノ💕

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【短編】 山吹茶屋

山道の脇に彩りを添える山吹の花。 その気品高き花姿に侍は嘆息する。 何だか旅の疲れがすっと軽くなる。 侍が山吹の花にそっと触れようとしたその時、遠雷が轟き数秒後に…

夢月鏡花
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3時間前
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【物語】 流れゆくもの

五月も半ばを過ぎまして、そろそろ山田屋の水羊羮が恋しくなり始めた頃ではございませんか。 千紫万紅の華やかなる春が過ぎ去り、葉桜となった桜の樹々も、そよそよと風に…

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7日前
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【掌編】 春みやび

染井吉野も散りゆきて葉桜となり、次は八重桜とばかりに薄桃色の雪洞の如き可憐な花びらを枝々に咲かせております。 散り逝く桜の花びらが菫に寄り添い、またその姿を優し…

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3週間前
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【短編】 ℘†℘ 水晶の花 ℘†℘

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【物語】 ‡*‡ 雪中四花 ‡*‡

*─ 梅の花 ─* 川縁の水茶屋にて、梅の咲きゆくを仰ぎては抹茶を口に。 梅の花の何とも言えぬ奥ゆかしさに、また仰ぎて嘆息。 淡き恋影や雪洞如くに灯る。 娘の頬がほ…

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3か月前
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【時代小説】 人斬り、落椿 - 弐 -

†*† 闇の雪 †*† 皓月千里。 雪の闇夜を照らすひかりに、神の助けとばかりに私は胸を撫で下ろす。 見失いし者を導くが如く、月光が獣道らしきものを照らし出す。 雪…

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【物語】 シケモク

「よお相棒、元気そうじゃねーか」 黒塗りの高級車から降りてきた和服の男を一瞥し、パイプ椅子に座り煙草を吹かしていた作業服の男は舌打ちを返した。 「随分な挨拶だな、…

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6か月前
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透ける空に鰯雲 野に揺る薄刈り稲田 傾ぐ案山子に秋茜 金木犀の芳香に ふわり追憶長き影 萩やしだれて花簾 幽玄なりや秋月夜 酔う名月やぐゆぐゆり 過ぎて十六夜秋の虫 桔…

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❮妻なる者の告白❯ 夫を責めないであげてくださいませ。あのひとは可哀想な人なんです。人間の感情を真に理解する事ができないのです。作家なのに、と申されますか。確か…

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【短編】 告白 3

❮作家先生なる者の告白❯ どうやら僕は、人為らざる者になったらしい。はは、笑わせるだろ。僕ほど人間らしい人間はいないというのに。どうやら、僕は人間としての資格を…

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8か月前
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【短編】 告白 2

❮作家なる男の独白❯ 彼女たちは口々にこう言ったのだ。 ──先生は人間失格ですわ はて、人間失格とは人間の資格を失ったものということだと解釈する。すると、僕は人…

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❮作家なる者の告白❯ 僕はね、常々こう思っているんだ。人間とは何て滑稽で愚かな生き物なのだろうとね。しかし、こうも思っている。だからこそ最も愛おしい生き…

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【物語詩】 花の性

巡り咲かせて散りゆくは、四季折々の彩の花。 綾なしみせゆく花の舞い、千紫万紅繚乱に。 香に色に酔わせては、花回廊や夢うつつ。 妖しき艶を纏いては、月をも狂わす花の…

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「ひなか過ぎてや夕時雨」 侍が茶屋で雨宿りをしていると、見知らぬ女が隣に座って呟いた。 侍は戸惑いながらも、黙して茶をすする。 「通り雨、でございますね」 女がまた…

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9か月前
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隠り世、現し世。 誘われ回廊、万華鏡。 あやしあやかし夏祭り。 彩る無数の提灯に、祭り囃子が夢見に響く。 狂喜乱舞よ、盆踊り。 狐のお面に浴衣の美女が、肩襟ずらして…

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【短編】 山吹茶屋

【短編】 山吹茶屋

山道の脇に彩りを添える山吹の花。
その気品高き花姿に侍は嘆息する。
何だか旅の疲れがすっと軽くなる。
侍が山吹の花にそっと触れようとしたその時、遠雷が轟き数秒後に雨が降りだした。
これはいけないとばかりに侍は、両袖を簑代わりにして駆け出す。
すると見慣れぬ茶屋が顔を出した。
これは運がいいとばかりに、袖をはらいながら侍が腰かける。
「いらっしゃいませ」
可愛らしい声で娘が挨拶をする。
「すまぬが、

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【物語】 罰の在処

罪人を乗せ小舟がゆく。
男と乗り合わせるは、二人の女。
骸骨に艶髪を纏わせて、それを大事そうに抱える老婆。
それと、赤子の亡骸を抱いている若い女。
裁きの刻をそれぞれ黙して待つ者たち。
「間もなく、風の刃が通りやす」
能面の船頭が告げる。
裁きの刻。
刹那、一陣の風の刃が川縁の花首を断ち、川面に落としてゆく。
背後で音がして男が振り返ると、小舟の床に老婆の生首がごろりと転がっている。
それに寄り添

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【物語】 流れゆくもの

五月も半ばを過ぎまして、そろそろ山田屋の水羊羮が恋しくなり始めた頃ではございませんか。
千紫万紅の華やかなる春が過ぎ去り、葉桜となった桜の樹々も、そよそよと風に身をまかせて安息している様子でございます。
花色よりも新緑の葉の眩しさに心癒される季節となりました。
水田の縁を飾っていた桜の花塵もいつの間にか姿を消し、今は青々とした苗と斜線に流れる波が靡くばかりです。
しかし、その水田に西陽が射し込みま

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【掌編】 春みやび

染井吉野も散りゆきて葉桜となり、次は八重桜とばかりに薄桃色の雪洞の如き可憐な花びらを枝々に咲かせております。
散り逝く桜の花びらが菫に寄り添い、またその姿を優しく見守り咲く菫の花姿に、心の薄襞を春風に靡かれたような快い感動を覚えておりましたのも、気がつけば遠い記憶とばかりに、いやはや季節の移ろいの早さには幾度も驚かされるばかりです。
やはり花の移ろいは、はやきものでございまして、此方ではもう山躑躅

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【短編】  ℘†℘ 水晶の花 ℘†℘

【短編】 ℘†℘ 水晶の花 ℘†℘

【メインテーマ】  吸血鬼

【サブテーマ】 水晶 浄化

時は明治初期、処は帝都東京。何ともツクリモノめいた明治の世の平穏も、裏を返せば錦に煌めく造花の産物か。水面に月の美しきたるは、川底にて汚濁を浄化す犠牲ある故とな。

平穏の世は川の如くに……。

継続するべく産み出される代償は、川底にて蠢く。清らかな水の面を表とするならば、川底に沈むは裏にて犠牲となりし屍の念。清[せい]を

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【物語】 ‡*‡ 雪中四花 ‡*‡

*─ 梅の花 ─*

川縁の水茶屋にて、梅の咲きゆくを仰ぎては抹茶を口に。
梅の花の何とも言えぬ奥ゆかしさに、また仰ぎて嘆息。
淡き恋影や雪洞如くに灯る。
娘の頬がほのか薄紅に。
決して悟られてはならぬ隠密の恋。
着物の胸元に忍ばせた恋文に手を添える。
口にするは許されぬ想いを言の葉として認めて、御守りと持ち歩く事で、娘は心にかけた結界を護る。
なれど、なれど……。
梅の香に酔わされた故と言い聞か

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【時代小説】 人斬り、落椿 - 弐 -

†*† 闇の雪 †*†

皓月千里。
雪の闇夜を照らすひかりに、神の助けとばかりに私は胸を撫で下ろす。
見失いし者を導くが如く、月光が獣道らしきものを照らし出す。
雪に囚われ重くなる足取りで、恐る恐る従いて進む。
しばらく進むと道が開け、其処に広がるは何とも奇怪なる景。
雪の塚、雪の墓と言わんばかりの何とも奇妙な雪の小山。
其れ等が無数に存在していた。
獣の仕業かと、ようよう目を凝らして観てみれば

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【物語】 シケモク

「よお相棒、元気そうじゃねーか」
黒塗りの高級車から降りてきた和服の男を一瞥し、パイプ椅子に座り煙草を吹かしていた作業服の男は舌打ちを返した。
「随分な挨拶だな、相棒」
「何しに来やがった」
「つれないねぇ」
「あんたに売る媚はねーよ」
今にも潰れそうな古びた廃工場のような工場からは、微かな機械音が軋みをあげていた。
それは、辛うじて稼動している老いた機械の呻き声のようでもある。
老いて草臥れてい

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【和詩】 秋の筆

透ける空に鰯雲
野に揺る薄刈り稲田
傾ぐ案山子に秋茜
金木犀の芳香に
ふわり追憶長き影
萩やしだれて花簾
幽玄なりや秋月夜
酔う名月やぐゆぐゆり
過ぎて十六夜秋の虫
桔梗秋桜竜胆と
愁いて寄り添う秋の情
彼岸に此岸曼珠沙華
紅の黙礼 偲ぶ秋
映ゆる紅葉や水鏡
艶やかみやび 錦の景
瑞の苔や 石畳
斑らの描や花の筆
滲み依りては 秋霖よ
枯れ木の許に朽葉かな
短命なるは秋さだめ
晩秋なりか 寒の菊

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【短編】 告白 4

❮妻なる者の告白❯

夫を責めないであげてくださいませ。あのひとは可哀想な人なんです。人間の感情を真に理解する事ができないのです。作家なのに、と申されますか。確かにその通りでございます。しかし、作家先生である時のあのひとと、ただの夫、いや男である時のあのひとは、たぶん違うのです。
 あぁ、昔の全盛期の作品たちを読んだ時の衝撃と感動が、今でも忘れられません。あのひとの執筆する姿にも勿論小説にも、常に

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【短編】 告白 3

❮作家先生なる者の告白❯

どうやら僕は、人為らざる者になったらしい。はは、笑わせるだろ。僕ほど人間らしい人間はいないというのに。どうやら、僕は人間としての資格を失ってしまったらしいんだ。
いや実はね、お恥ずかしい話なんだが、愛人たちに『人間失格』の烙印を押されてしまってね。何故なんだろうねぇ。僕は良かれと思って話したんだが、それがどうやら彼女たちの逆鱗に触れてしまったらしいんだ。いやぁ実に理解不

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【短編】 告白 2

❮作家なる男の独白❯

彼女たちは口々にこう言ったのだ。

──先生は人間失格ですわ

はて、人間失格とは人間の資格を失ったものということだと解釈する。すると、僕は人間ではないという事なのだろうか。人間ならざる生きものとなるのか。
うん。それは天使が堕ちて堕天使となったように、僕も堕ちて堕人間となったという事か。
僕は堕落した人生を投げやりに生きている。
彼女たちはそれを揶揄するように、そう言った

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【短編】 告白 1

❮作家なる者の告白❯


僕はね、常々こう思っているんだ。人間とは何て滑稽で愚かな生き物なのだろうとね。しかし、こうも思っている。だからこそ最も愛おしい生き物なのだとね。最も美しく最も醜い。善良であり、害悪でもあり得る。素晴らしいじゃないか。我々はあらゆる矛盾のなかで生きている。その矛盾に悩み葛藤し苦しみ、時には自ら命を絶つ。我々人間は最も悩み多き生き物なのだよ。我々は他者に気を遣い

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【物語詩】 花の性

巡り咲かせて散りゆくは、四季折々の彩の花。
綾なしみせゆく花の舞い、千紫万紅繚乱に。
香に色に酔わせては、花回廊や夢うつつ。
妖しき艶を纏いては、月をも狂わす花の怪。
美しき花は罪なりか、毒を秘めては淑と咲く。
されど煎じて薬とも、併せ持つが花さだめ。
清濁併せ呑むがひと、似て非なるか花とひと。
華麗なれども憂いあり、百花百様咲き姿。
戯る風に抱かれては、揺れて語らう可憐花。
無情の風雨に晒す身も

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【物語】 通り雨

「ひなか過ぎてや夕時雨」
侍が茶屋で雨宿りをしていると、見知らぬ女が隣に座って呟いた。
侍は戸惑いながらも、黙して茶をすする。
「通り雨、でございますね」
女がまた呟き告げる。
「何故、通り雨なのでございましょう」
通り雨を眺めながら女が続ける。
「もしや、俄か雨ではすまぬ事情があるのやも」
女が侍の顔を見る。
侍は漸く女が自分に話しかけていた事に気づき、曖昧な返事をする。
「お侍様もそうなのでは

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【物語詩】 あやしあやかし夏祭り

隠り世、現し世。
誘われ回廊、万華鏡。
あやしあやかし夏祭り。
彩る無数の提灯に、祭り囃子が夢見に響く。
狂喜乱舞よ、盆踊り。
狐のお面に浴衣の美女が、肩襟ずらして誘う指。
踊れや踊れ。
狂えや狂え。
人も妖も乱れみだらに。
逝けば極楽、果てて夢。

しゃんりんしゃらら、りんしゃらら
しゃんりんしゃらら、りんしゃらら

ちりん、ちりん……

風鈴の音に、さめて朝風。