いつも光に満ちている
私は光よ。
キラキラ輝いて、とろけるようにやわらかくて、ほかほかあたたかくて、そしてこの上なく心地よくて。誰もがそう感じる光なの。
だってそう。みんなみんな私だから。あの人もこの人も私の一部。光そのものだわ──
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こんにちは。フジミドリです。
唐突ですが、私たちは何者でしょう。
古来、賢者聖人と呼ばれる方が、知恵を絞っておられます。それぞれの到達は見事です。
私は系譜の末席に加えて頂けたらと、若い頃から悪戦苦闘して参りました。
今日の私物語は、ここらで私なりの答えを表現できたらと願うのです──
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私は光。いつだって誰だって私を意識する。だってそう。真実の姿は私なのだから。
例えば病院のベッドに寝た切りでも。例えば家事の合間にソファでウトウトしつつ。例えば通勤電車の座席で目は閉じながら。
束の間だけ、私に戻る。
☆☆☆
例えばこの人、初老の塾講師さん、私に戻る日を夢見て、いつも心が彷徨っている。
朝昼兼ねた食事を摂ってから、出勤前に一休みして。ベッドで横たわり、夢現のまま少しずつ私へ戻ってくる。
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「思うだけでいいわ」
私はそう囁く。囁きが、耳に聞こえるというよりも、体の芯で響く感じなはず。
「真実の姿に戻るだけ。今ここで」
すると、目を閉じたこの人の体は、だんだんと光り始め、ついには輝き出す。
「ほ~ら。これがあなたの在り方」
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両手を見れば、指の輪郭それぞれが、輝きでぼんやりと曖昧になり、煌めいていく。
同じように体のあちこちを見れば、見ることによって、光が造り出されていくような。
「あなたは自由自在なの」
『うーん。そう言われても』
「あらあら。意気地なしねえ」
『本当に何でもできる?』
「ウソなんてつかないわ」
『いやまぁ、なんというか』
「遠慮しないで。さあ何したい?」
『空、飛べたら嬉しいかも』
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そう思った時はもう浮かんでる。
ベッドが置かれた寝室にいながら。
白い壁と天井に景色が重なって映る。果てしなく広がる大草原。風にそよぐ緑の草。次々と変わっていく流麗な風景。
雲を突き抜けると、聳え立つ険しい山肌
躊躇わず上昇して頂上を飛び越える。
突然、眼前に拓ける群青色
波打つ大海原。透き通る水底
泳ぐ魚たちまでくっきり見えて。
☆☆☆
「あなたが思ったようになるわ」
飛ぶスピードは一気に加速する。
かと思えば、スッと急停止。
ふわふわ浮かんでポーズも取って。
空を飛ぶってこういうこと。
堪能したかな。
あら。この人、ふと寂しく思う。一人で飛ぶの、飽きたみたい。そこで私──
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異性の姿になる。全身が光り輝いて。スーッと隣を飛びながら、微笑みかけてあげる。
「こういう姿、好きでしょ」
艶やかな黒髪は風に靡く。滑らかな肌。目鼻立ちくっきり。和服みたいなローブのような淡い色の服がふんわり流れて。
懐かしく感じている。
知ってる人を思い出すかな。
☆☆☆
この人、思いが膨らむ。
憧れる気持ち
恋焦がれる衝動
異性を求める勢い
情動が込み上げてくる。
溢れる思いは瞬く間に叶い、叶うとさらに思いが浮かび、そしてまた叶っていく。それに応えて、私の姿は色合いを変える。
零れるばかり妖艶で
荘厳なほど美しく
この人、思いが弾ける。
私は微笑みを消して、澄ました顔つきへ移ろう。それから眉を顰め悩ましく。
☆☆☆
「堪能した?」
『あぁ、心地よい』
「ふふふ。よかったわ」
『とてもここちよい』
「周囲と一体感を取るのよ」
『何もかもが光なんだな』
「恐れることはないわ」
『ああ。恐れていたのか』
「いつも今、どこでもここよ」
『人や物が見えるけど』
「みんな幻想だわ」
『何もかも光なのか』
「あら残念。そろそろね」
『うん。あっという間だった』
「短く感じたら、それが真実の時よ」
『そいつはいいな。歳を取らない』
☆☆☆
さあ、旅立つ今。
やわらかくあたたかく心地よい私から離れ、硬くて冷たい疑心と不安の物質界へ。
離れてこそ知る光の真実
いつか私に戻るため──
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お読み頂き、ありがとうございます!
次回は10月9日午後3時です☆
明日午後6時、西遊記更新♡
ではまた💚
ありがとうございます🎊