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いつも光に満ちている

私は光よ。

キラキラ輝いて、とろけるようにやわらかくて、ほかほかあたたかくて、そしてこの上なく心地よくて。誰もがそう感じる光なの。

だってそう。みんなみんな私だから。あの人もこの人も私の一部。光そのものだわ──

☆☆☆

こんにちは。フジミドリです。

唐突ですが、私たちは何者Who am I?でしょう。

古来、賢者聖人と呼ばれる方が、知恵を絞っておられます。それぞれの到達は見事です。

私は系譜の末席に加えて頂けたらと、若い頃から悪戦苦闘して参りました。

今日の私物語わたしものがたりは、ここらで私なりの答えを表現できたらと願うのです──

☆☆☆

私は光。いつだって誰だって私を意識する。だってそう。真実ほんとうの姿は私なのだから。

例えば病院のベッドに寝た切りでも。例えば家事の合間にソファでウトウトしつつ。例えば通勤電車の座席で目は閉じながら。

束の間だけ、私に戻る。

☆☆☆

例えばこの人、初老の塾講師さん、私に戻る日を夢見て、いつも心が彷徨さまよっている。

朝昼兼ねた食事をってから、出勤前に一休みして。ベッドで横たわり、夢現ゆめうつつのまま少しずつ私へ戻ってくる。

☆☆☆

「思うだけでいいわ」

私はそう囁く。囁きが、耳に聞こえるというよりも、体の芯で響く感じなはず。

真実もとの姿に戻るだけ。今ここで」

すると、目を閉じたこの人の体は、だんだんと光り始め、ついには輝き出す。

「ほ~ら。これがあなたの在り方」

☆☆☆

両手を見れば、指の輪郭それぞれが、輝きでぼんやりと曖昧あいまいになり、きらめいていく。

同じように体のあちこちを見れば、見ることによって、光が造り出されていくような。

「あなたは自由自在なの」
『うーん。そう言われても』
「あらあら。意気地いくじなしねえ」
本当マジに何でもできる?』

「ウソなんてつかないわ」
『いやまぁ、なんというか』
「遠慮しないで。さあ何したい?」
『空、飛べたら嬉しいかも』

☆☆☆

そう思った時はもう浮かんでる。
ベッドが置かれた寝室にいながら。

白い壁と天井に景色が重なって映る。果てしなく広がる大草原ライトグリーン。風にそよぐ緑の草。次々と変わっていく流麗りゅうれいな風景。

雲を突き抜けると、そびえ立つ険しい山肌
躊躇ためらわず上昇して頂上を飛び越える。

突然、眼前に拓ける群青色ダークブルー
波打つ大海原おおうなばら。透き通る水底みなそこ
泳ぐ魚たちまでくっきり見えて。

☆☆☆

「あなたが思ったようになるわ」

飛ぶスピードは一気に加速する。
かと思えば、スッと急停止。
ふわふわ浮かんでポーズも取って。

空を飛ぶってこういうこと。
堪能まんぞくしたかな。

あら。この人、ふと寂しく思う。一人で飛ぶの、飽きたみたい。そこで私──

☆☆☆

異性の姿になる。全身が光り輝いて。スーッと隣を飛びながら、微笑みかけてあげる。

「こういう姿、好きでしょ」

つややかな黒髪は風になびく。なめらかな肌。目鼻立ちくっきり。和服みたいなローブのような淡い色の服がふんわり流れて。

懐かしく感じている。
知ってる人を思い出すかな。

☆☆☆

この人、思いがふくらむ。

憧れる気持ち
恋焦がれる衝動
異性を求める勢い
情動が込み上げてくる。

溢れる思いは瞬く間に叶い、叶うとさらに思いが浮かび、そしてまた叶っていく。それに応えて、私の姿は色合いを変える。

こぼれるばかり妖艶セクシー
荘厳なほど美しく
この人、思いが弾ける。

私は微笑みを消して、澄ました顔つきへ移ろう。それから眉をしかめ悩ましく。

☆☆☆

「堪能した?」
『あぁ、心地よい』
「ふふふ。よかったわ」
『とてもここちよい』

周囲まわりと一体感を取るのよ」
『何もかもが光なんだな』
「恐れることはないわ」
『ああ。恐れていたのか』

「いつも今、どこでもここよ」
『人や物が見えるけど』
「みんな幻想まぼろしだわ」
『何もかも光なのか』

「あら残念。そろそろね」
『うん。あっという間だった』
「短く感じたら、それが真実ほんものの時よ」
『そいつはいいな。歳を取らない』

☆☆☆

さあ、旅立つ今。
やわらかくあたたかく心地よい私から離れ、硬くて冷たい疑心うたがいと不安の物質げんしょう界へ。

離れてこそ知る光の真実すがた
いつか私に戻るため──


イラストは朔川揺さん💖

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お読み頂き、ありがとうございます!

次回は10月9日午後3時です☆
明日午後6時、西遊記更新♡


ではまた💚



ありがとうございます🎊