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ポレポレな日常

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記事一覧

女神の前髪コレクション【ポレポレな日常/第14回】

また、女神の前髪を引きちぎってしまった。 「幸運(チャンス)の女神には前髪しかない」という言葉を素直に信じている私は、目の前に女神を見つけると、とりあえず「えいや!」と前髪を掴む。走り去る女神のスピードやパワーに負けない瞬発力と筋力があると自負しているので、前髪キャッチ率はかなり高い。 けれども残念ながら、気づくと手元には前髪だけしか残っていないこともある。どんなに必死に捕まえても、手を離すまいと握りしめていても、前髪だけを残して走り去る女神は無数にいる。掴んだ前髪に見合

15歳でプロレスラーを諦めて夢を手放したら、24年後に突然デビューできた話【ポレポレな日常/第10回】

幸せすぎて「たった今、人生を終わりにしたい」と思ったことがある。その瞬間があまりにも素晴らしく、色褪せてゆくのがもったいなくて。 人って、幸せな時にそんな感情になることがあるんだと驚いた。 幼い頃からずっとプロレスラーになりたかった。当時、全女(全日本女子プロレス)の受験資格は15歳。その日を目指して小学校から中学3年までの間、100回の腹筋を欠かさず、リングに上がる自分をイメージトレーニングする毎日だった。 ようやく入団テストを受けられる年齢になり、自信満々で申し込む

ニガテなあなたへ「ありがとう」【ポレポレな日常/第7回】

「掃除のおばちゃんと仲良くしたって、なんの役にも立たないだろ?無駄じゃん」上司から優しい笑顔でそう声をかけられた。毎朝会う清掃スタッフの方と挨拶を交わし、軽く雑談している姿をみていたらしい。キョトンとしたわたしの顔をみて、上司はさっきよりも優しい口調で「ちゃんと先を見て動かないと」と続けた。 当時の私はテレビ局で働いていて、そこで出会う人との繋がりはその後 仕事に大きな影響を与えることはわかっていた。そんな自分の立場を有効に活用できていな私を心配して、助言してくれたのだろう

もうひとつの名前と幸せの音【ポレポレな日常/第8回】

仕事時に使っている「幸音」という名前は本名ではない。母が私につけたかった、もうひとつの名前だ。「幸せ」の「音」 と書いて「さちね」と読む。幼い頃から繰り返しこの名前を聞かされていた私は、いつか「幸音」と名乗る場所をつくりたいと思っていた。 よい名前だなぁと思う。「音」というものはひとり占め出来ないから、どうしても誰かと共有してしまう。その共有するものが「幸せ」だなんて最高じゃないか。 先日、弱音をはいてやれと思ってキーボードに「YOWANE」と打ち込んだ。そうだった。「弱

おならが世界を幸せにした話【ポレポレな日常/第3回】

「ただ生きているだけで、みんな誰かを幸せにしている」 よく見かける言葉だけれど、本当にそうなのだろうか。疑い深い私は、いつも半信半疑でこの言葉を聞く。 そりゃ信じたいけどさ。自分に置き換えると素直にそうも思えないのだ。けれども先日、この言葉は本当なのかもと感じられる出来事があった。 ねぇ、ママ、プープーして! スーパーのレジに並んでいた時のこと。どのレジも長蛇の列で、どこに並べば早く会計できるかみんなが探りあっているような状況だった。 列に並んだ後は、ひたすらスマホを

いやぁ~ん力(ぢから)【ポレポレな日常/第1回】

「いやぁ~ん力(ぢから)」をご存知だろうか。「いやぁ~ん対応法」を実行した時に生まれる、抗えない力のことである。念のために言っておくと、「いやぁ~ん対応法」というのは私が勝手に編み出した方法なので、検索してもでてこない。ごめんよ。 やり方はいたってシンプルだ。たとえば満員電車で足を踏まれたのに、なぜかこちらが睨まれてカチンときたとき。「チッ」と思う代わりに「いやぁ~ん」。 クタクタに疲れて心と体を休めようと入ったカフェで乱雑な接客された時。「お前いったい何様だぁ?!」の代

会社のトイレでお尻を洗われ続けた話【ポレポレな日常/第2回】

あなたは、ウォシュレットを使用中に水が止まらなくなったことはありますか?私はあります。想像してみてください。トイレの個室の中で、止まらないウォシュレットにお尻を洗われ続ける自分を。 「おしりだって、洗ってほしい」 トイレでお尻を洗うという発想がない時代に、強烈な印象を残すコピーと共に登場したウォシュレット。今ではすっかり定着し、洗ってほしかったお尻たちも嬉しそうです。けれども、便利で快適なものには大抵落とし穴があるものです。 これは十数年前、職場のトイレでウォシュレットを