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女の一生

母は綺麗だったし
戦前はお金持ちのお嬢様だった
戦争中に父親が亡くなり
戦災で財産を失った

だから
たぶん
世が世なら
みたいな
悔しい思いがあったのだろう

父と結婚して
子供が生まれて
商売もうまくいって
さぁこれから
という時に
父が亡くなって
幼い子供二人残されて
悔しくて悲しくて
それで
どこかでまた
心に
黒いものを
抱えこんでしまったのかもしれない

母は手仕事が好きで
読書も好きで
好奇心も大せいで
明るいし
人好きあいも上手だった
でも
満たされない何か
そういうものがあったのだろう
愛してもらいたかったのかもしれない
無条件に
いや、わからない

まるごと愛してあげられなかった
わたしが悪いんだろうか

でも
明るくふるまうその向こうに
どす黒いものが
ほのかに彼女から
漂っていた、のを
どこかでわたしは感じていた気がする

彼女は身近な人の幸せ
子供の娘の幸せを
よろこべなかった、

ようだ

娘に嫉妬を感じたりするのかな?
わからない

他人ではなく
娘の
足を
引っ張ろうとした

妹の最初の結婚は壊された
その要因の一つは
彼女の、母の噓かもしれない
今、そう思う
ほんとうのことはわからない

でも
わたしが結婚して
今の家を建てる前後
彼女と一緒に暮らした
1年、いや2年くらいだったのかな
わたしは
彼女が
夫とわたしを
喧嘩させるような
ふるまいをしているのを感じた
なんとなくそういうものを感じていた
余計なことを言うのはやめてと
母を叱ったこともある
でもそれを
わざとだとは思ってもいなかった
だけど
いまならわかる
夫にも確かめてみた

きのう夫が言っていた
一緒にいたころ
いろんなことを
母が言っていた、と。
どんなことかは
もう聞かなかった
夫も話したがらなかった

もう、忘れたほうがいいのかもしれない
死んだ人のことなのだから
でも
やはり
自分の中で
もやもやしたまま
生きていくのはイヤだとも思う

妹といつかまた
ゆっくり母のことを
話すべきなのかもしれない




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