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九州ツーリング その22 熊本


熊本のホテルにようやく着いた。
辺りはすでに暗い。

よく着けたなぁ。

雨の中、知らない道を走るのは大変だった。
こういう時、土地勘がないのは困る。

ホテルの中は別世界だ。
シャンデリア、敷き詰められたじゅうたん。

駐輪場を聞きに行かねばならない。

カッパを脱がずにロビーまで?

仕方ない。
雫がたれないようにひと通り拭いて
自動ドアの前に立つ。

扉が開いた。

恐る恐るだと怪しまれるので
背すじを伸ばして堂々と歩く。

ロビーに行き、予約していることを告げる。
駐輪場の場所を聞いた。

少し距離がある。
バイクの後ろに積んである
ずぶ濡れの荷物を背負って歩きたくない。

荷物を先に預けてもいいか聞いてみた。
笑顔で大丈夫ですと言ってもらえてホッとする。

よかった。

荷物を取りにバイクに戻る。

一日中雨に濡れていたバッグ。
完全防水だから、中は濡れていないはず。

装備は大事だなぁ。

タオルで雫を拭き取り、重たい荷物を背負う。

もう一度、優雅に休んでいる人たちの横を
雰囲気を壊さないようにそっと歩いた。


荷物をロビーに預けてバイクに戻る。

ここから二つ先の路地あたりに
駐輪場があるらしい。

地下と聞いて有り難いと思った。
ひと晩、バイクも濡れずに休めるから。

首元の濡れたヘルメットをかぶり
街灯の少ない裏通りを走り出す。

辛島公園地下駐車場

公園の下に停められるらしい。

教えてもらった入り口を探す。

前に間違えて自転車の駐輪場に
停めてしまった苦い過去を思い出す。

あの時は、出られないかと思った。

帰り、自転車用のスロープを
必死に登ったことを思い出して
「ここでいいのか?」と
入り口を凝視してしまった。

今回は幅が広い。
ここで合ってる気がする。

ゆっくりと地下に下っていく。
ゲートが現れた。

看板の指示通り、恐る恐る開ける。
バイクが通れるくらいの幅で開いた。

おじさんがいる!

管理室と管理人さんがいた。

こんな夜に。こんな地下に。
笑顔で誘導してくれる。

こわばっていた体から
ふっと力が抜けた気がした。


すでに停まっているバイクの
向かい側に停める。

目の前のバイクを見て驚く。
所狭しと色んなものがかけてあった。

カッパは干してあるし
ヘルメットもグローブも!!

あのおじさんたちは、見張っててくれるのかな?

カッパを干せるのは有り難い。

ポタポタ雫のたれるカッパを
ホテルに持ち込むのも
部屋で干すのも憂鬱だから。

有り難く、わたしも干していくことにした。

ヘルメットは悩んで、干さないことに。
盗られると走れなくなるから。

堂々とヘルメットも置いていける
勇気と根性に感服する。

『傘を貸せますよ。ロックも』

傘!!

そう。ここに停めた後
どうやってホテルに戻るか悩んでいた。

走ってる間はカッパとヘルメットがある。
どちらも脱いでしまったら…
雨を防ぐものがない。

有り難くロックと傘を借りることにした。
素敵なサービスだ。

重たいので置いてきたロック。
バイクが盗られないようにつけるもの。

これも借りられるなんて!!

さすが観光地。
バイクもたくさん来るのかなぁ。

ようやく血が通ってきたような
気持ちがほぐれてきて、心からホッとした。


バイクについている雫を拭いた。
そのバイクにカッパを干す。

ありがたく傘を借りる。
出口を教えてもらって地上に出た。

夜の街に出る。人通りはない。
元来た道を歩いて戻る。

道幅は広いけど、暗く街灯の少ない道。
周りは背の高いビルばかりだ。

今歩いている横が
ショッピングモールらしい。

明日、見に来よう。

静かな大通りを歩きながら
雨が小降りになってよかったと思った。


ようやくホテルへ。
今度は人の姿をしているから大丈夫と思う。

人が集まる場所は苦手なんだな。

いちいち緊張する自分に気づく。

意を決して自動ドアに近づき
ロビーを抜けてフロントに着く。

預かってもらっていた荷物を引き上げる。
部屋番号を聞き、部屋へ向かった。

鍵を開けて入る。
荷物をカーペットの上に置く。

着いたー!!!

やっとたどり着いた。
熊本まで来たのだ。

長かった。。

楽しみにしていた今日が
雨で終わってしまった。

阿蘇が一番走りたかった道なのに。

「いいや!」とベットにダイブ。

大の字に手足を伸ばす。
思い切り、伸びをしてみる。

目をつむる。

寝てしまいそうだな。

そう思っていたのに…

一瞬寝落ちしていた。恐ろしい。


とにかくお風呂。
風呂にだけは入らねば。

初日、徳島で風呂の水を抜いた時
部屋にあふれそうになったことを思い出す。

シャワーでさっさと入ろう。

お湯をためるのは諦める。
なにしろ、ためている間に寝そうだから。


風呂からあがり
何か食べるものはあったかな?と探すと
小魚チップスがあった。

土佐と書いてあるので
四国で買ったものらしい。

少しでも骨にいいものを。

長旅で無理をしている
左肩と肩甲骨を思う。

パリパリと食べながら
スマホを手に取った。


明日のルートはどうしようか。

いや。その前に洗濯だ。

洗濯物がたまっていた。

昨日、宇和島のホテルで
洗濯しておけばよかったと後悔する。

今いるホテルの近くの
コインランドリーを探す。

徒歩5分くらいのところにあった。

明日早起きをして洗濯に行こう。

借りた傘を使わせてもらって
できることはできるうちにせねば。


改めて明日のルートを検索する。

本当は天草からフェリーで
島原に渡るつもりだった。

が、明日も雨。

むやみに走行距離を伸ばさない方が
いい気がする。

途方に暮れて、また
はるかさんとgeekさんに聞いてしまった。

色々色々考えて…

《熊本港からフェリーで島原に渡る》
と決めた。

天草は諦めた。
雨の中、知らない道は厳しい。

最短ルートで次の宿、長崎に向かう。

天草を諦める代わりに
熊本を少し観光しよう。

ようやく明日の予定が決まり
ホッとしてベットに潜り込んだ。


翌朝、空は明るく見えたが
地面は濡れていた。

ホテルの窓から

朝食の会場へと向かう。

ホテルの朝はたいていバイキング。
好きなものを食べられるって嬉しい。

好きなものばかり

美味しかった♪

満足して席を立つ。

部屋へ戻るのにエレベーターに乗った。

エレベーターが空いて一歩踏み出したら…
目の前にランドリー室があった。

えっ!?

ビックリして立ち止まってしまった。

ホテルで洗濯できるの?

もう一つ驚いていたのは

ここ何回か通ってるよね。。

ふだんから周りは見えてないと自覚してるけど 
今回は自分に自分で驚いてしまった。

知ってたら、行きにまわして
帰りに回収できたのに。

行きに通った時
全く気づかなかった。

エレベーターの真ん前にあったから
今、嫌でも視界に入ったんだろう。

まぁ、いいや。

雨の中、洗濯物を抱えて
コインランドリーに行くことを思えば
天国みたいだ。

すぐに、部屋から洗濯物を持ってきて
ぐるんぐるん回した。


待っている間に
島原でのルートを考える。

熊本からフェリーで東側に着く。
半島の右側だ。

長崎は西の方にある。
半島の中心に普賢岳がある。

普賢岳と言えば、大噴火。

今は落ち着いているはずだが
土石流、火砕流という言葉をよく耳にした。

自然の作り出した景色は見られるだろうか。

島原半島横断ルート案


考えてみたルートをじっと眺める。

どのルートが一番いいのかわからない。

洗濯物が乾いても
結局決められなかった。


荷物を詰め、部屋を出る。

フロントでチェックアウトし
ホテルの外に出た。

雨は小降りだが、止んではいない。

重い荷物を肩に背負い
駐輪場に向かって歩き出した。





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