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【サボテン日記】ひとり旅で凹んだ話 ~ 宮島 ~

ホテル選びに失敗した。「ちょっと料理がまずくて失敗したな」とかいうレベルではない。入室後1時間でチェックアウトするほどの「壮絶な失敗」。

50歳の記念に、ひとり旅に出た。この20年、仕事・家事・育児で忙しかったので、ちょっとひとりで、のんびりしたくなったのだ。

広島県の宮島に一泊する予定。いつもは家族でビジネスホテルに泊まるのだが、今回はひとりなので、奮発して小さな露天風呂つきの部屋を予約した。朝食つきで16000円。今思えば、露天風呂つきでこの値段は安すぎた。夕食は近くの飲食店で名物の「あなごめし」でも食べようと計画した。

田舎では車で移動することが多いので、電車に乗るのも久しぶりだ。窓を流れる景色にワクワクしながら、電車の旅を楽しんだ。宮島口駅で降りて、フェーリーに乗った。きらきら光る海を見て癒される。5分ほどで、厳島神社の大きな赤い鳥居が見えてきた。

宮島についてすぐに、まずは午後2時までしか営業していない、ネットで探しておいた「お好み焼き屋」へ直行。ひとりなのでカウンターに座る。残念ながら、期間限定の「カキ・あなご入り」がなかったので「エビ・イカ」を注文。目の前でジュージューと焼かれるお好み焼きを見ながら、ビールを飲んで待つ。至福の時。

しばらくして、お好み焼きができあがった!おいしい。青じそがいい仕事をしている。追いソースをしたいが、カウンターにはソースが見あたらない。「ソースをください」といえずに、がまんした。

いつも家では関西風のお好み焼きをつくる。そばは入れない。広島風のお好み焼きには必ずそばが入っているので、途中でおなかがいっぱいになってしまった。でも目の前で店主が懸命にお好み焼きを焼いているので、絶対に残せない。

キツイ!

「もうだめだ、残そうかな」と何度も思ったが、頑張ってなんとかビールで流し込んだ。「ごちそうさまでした」と会計を済ませて店の外に出る。苦しい!歩いて消化しよう。夕食の「あなごめし」は無理かもしれない。

厳島神社


厳島神社と弥山は世界遺産。

厳島は「神の住む島」と考えられ、鎌倉時代末期まで禁足地だった。平清盛が厳島神社の造営・増築をして、平家の氏神とした。

弥山の「霊火堂」には弘法大使が修行した1200年前から燃え続けている「消えずの火」や、「くぐり岩」「鯨岩」「船岩」などの巨石群があり、パワースポットとされている。

宮島水族館


小さな水族館もあり、ペンギンと記念撮影をするための行列ができていた。小さい子どもさんも楽しめるスポットだ。

ミズクラゲ


宮島を堪能したので、ローソンでお酒を買い込んでホテルへ向かった。のんびりお酒を飲み、露天風呂に入り、読書でもしようと楽しみにしていた。今回の旅のメインイベントだ。

ホテルの玄関を入り、フロントへ向かうと、外国人がチェックインの対応をしている。宮島は外国人観光客が多いので、英語が話せるほうがいいのだろう。日本語も上手だ。でも接客は日本人のおもてなしと比べるとイマイチ。

なぜか玄関で靴を脱いでくれといわれ、戸惑う。しかも部屋番号と同じ番号の靴箱に自分で靴を入れろという。こんなホテルははじめてだ。カギがついていないので、限定ものの靴を履いている人は靴箱には入れないだろうなと思った。

午後3時にチェックインすると予約したのに、まだ部屋の掃除が終わっていないらしい。ロビーで待つようにいわれた。歩き疲れてはやく休みたいが仕方ない。しばらく待つと「お待たせしました」という声が聞こえた。

顔を上げると、遠くでカギを持ってこっちを見ている。ここまで持ってくる気はないらしい。疲れきった足をひきずって、カギを取りに行く。エレベーターで3階に上がり、部屋に入ってカギを閉めた。

ホテルでは必ずドアガードをするのだが、ない!ドアガードがない!!(カギを開けてもドアが少ししか開かないようにするやつ)

フロントで「オヒトリサマデスカ」と2度きかれた。これはフラグか?

ドアガードがなければ、マスターキーで誰でも部屋に入れるはずだ。窃盗に入られても、盗まれて困るほどのお金は持っていないが、鉢合わせて殺されるかもしれない。人生でこれほどドアガードの必要性を感じた瞬間はない。

接客の不手際は許せる。しかし安全の不手際は許せない。どうしよう!

振り返って部屋を見ると、ホコリだらけで、写真で見たのとぜんぜん違う。畳にはひっかいたような跡がある。もしかして、空いていたペット同伴用の部屋に投げ込まれたのではないか?という不信感がうまれる。

嫌な予感がした。急いで一番楽しみにしていた露天風呂を見てみる。すでにお湯が入れてある。ゴミが浮いているので、一度お湯を全部抜こうとしたが、栓は鎖がはずされていて抜けない。しかたなく、お湯に手を突っ込んで栓を抜こうとした。

冷たいっ!水だ。

説明書を読むと「お湯は循環式で保温してあるので抜かないでください」と書いてある。保温されてないし、ただの汚い水なんですけど・・・

修行か!

浴槽ギリギリまでお湯を足してみたが、冷たいままだ。そもそも汚くて入る気が起こらない。もう一度栓を抜こうと頑張ったが抜けない。絶望だ!この部屋のイチオシポイントである露天風呂まで失った。

今すぐ帰りたい!

1ミリもくつろげないし、怖くて眠れない。宿泊費はもったいないが、このまま不安な夜を過ごすのは絶対に無理だ!

クレームをいう気力も勇気もないので、携帯を急速充電してチェックアウトした。逃げるようにホテルから出て、フェリーに乗り込む。

ホテルのレビューを見ると、星1つの酷評が並んでいた。今朝、レビューを見ずに急いで予約したのがいけなかった。このホテルはきっとつぶれる。でもしばらくの間は、一度きりの観光客があの写真にだまされ続けるだろう。レビューを見てくれることを祈るしかない。

館内の自販機は販売中止、リラクゼーションメニューも中止の張り紙があった。コロナ禍の影響や人手不足、経営は厳しそうだ。

今回のひとり旅で学んだことは「宿はレビューや口コミを見て、早めに慎重に予約を取るべきだ」ということ。女性のひとり旅なら、できればドアガードも確認しておきたい。写真にだまされてはいけない。実際に泊まったことのある「先人の知恵」をかりるべきだ。正直なレビューを書いてくれる人たちに感謝、参考になります。

「ひとり旅では、宿泊するホテルや旅館を慎重に選ぼう」

今回の失敗はそんな「あたりまえのこと」をおろそかにした末路だ。観光やおいしいものを食べるのが目的なら、ビジネスホテルで十分だ。しかし目的がリラクゼーションなら、適当に選んではいけない。ケチってはいけない。
この失敗を次にいかしたい。またいつか、ひとり旅に出ようと思う。「次こそは、いい宿を探そう」とかたく誓った。


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