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【読書感想文】何者

少し前に、朝井リョウの本「正欲」を読んでいたのだが
衝撃がすごくて、この人の書いた他の本も読んでみたくなった。
(正欲の感想文もそのうち書こうと思う)

書店で本を眺めていると「何者」というタイトルの本が目に入った。
正欲のときもそうだったけど、漢字2文字のタイトルに惹かれて
読んでみることにした。


あらすじ

就活を目前に控えた主人公の拓人。
同居人の光太郎。
光太郎の元カノの瑞月。
瑞月の留学仲間・理香。
理香と同棲中の隆良。
5人は就活対策をするために集まるようになる。

だが、SNSや面接で発する言葉の裏に潜む本音や自意識が、彼らの関係を次第に変えていく・・・

感想

拓人は、就活対策のために集まった4人と過ごしていき
その人達の行動や、SNSの発言に違和感を感じたり、内心馬鹿にしたりしていく。
(スーツを着ずに会場に行く隆良や、大学生なのに自分の名刺を作成する理香、等)

私も、拓人に感情移入して同じ気持ちになっていたのだが
終盤になって、理香が拓人に言った言葉により
拓人(とこの本を読んでいる私)は打ちのめされてしまう。

「拓人くんはさ、自分のこと、観察者だと思ってるんだよ。そうしていればいつか、今の自分じゃない何かになれるって思ってんでしょ?」

朝井リョウ 『何者』

拓人は、4人の行動やSNSを見て思ったことを裏アカに書き込んでいたが
理香にそのアカウントがバレていた。

理香に「誰かを観察して分析することで、自分じゃない何者かになったつもりでいる」と言われ、拓人は反論しようとするも声が出ない。

「自分は自分にしかなれない。痛くてカッコ悪い今の自分を、理想の自分に近づけることしかできない」
「ダサくてカッコ悪い自分を理想の自分に近づけることしか、もう私にはできることはないんだよ」

朝井リョウ 『何者』

理香は、カッコ悪い自分を少しでも良く見せようと必死に努力していた。

震えるようにそう言う理香の言葉を聞いて
拓人は、過去に瑞月が隆良に言ったセリフを思い出す。

「十点でも二十点でもいいから、自分の中から出しなよ。自分の中から出さないと、点数さえつかないんだから。百点になるまで何かを煮詰めてそれを表現したって、あなたのことをあなたと同じように見ている人はもういないんだって」

朝井リョウ 『何者』

理香の言葉に打ちのめされた拓人は、その場から逃げ出してしまう。

後日、面接会場で長所短所を聞かれた際に、拓人は
短所はカッコ悪いところ、長所は自分がカッコ悪いと言うことを認めることができるところと答え、この物語は終わる。

序盤に拓人に感情移入させてからのこの展開。
本当にすごい構成だと思う。
今後、SNSの投稿とかかなり意識することになりそう。

個人的には、「十点でも二十点でもいいから、自分の中から出しなよ」という瑞月のセリフがとても心に残った。

私も最近noteを始めて、こんなしょうもない文章を投稿しても良いのかという悩みをよく抱えていたりしているのだが、カッコ悪くても良いからどんどん投稿していこうと思った。

終わりに

朝井リョウの本はこれで2冊目だが、本当にすごい著者だと思った。
この人の本を読むたびに、考えさせられることが多い。

「何様」という、何者のアナザーストーリの本もあるようなので
そちらも買って読んでみようと思う。

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