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映画感想文「水深ゼロメートルから」女子高生にしか書けない今の葛藤を余すことなく表現

女子高生にしか書けない。

そんな作品だ。

徳島市立高校の演劇部の演目。文部科学大臣賞最優秀賞を受賞した作品の映画化。

粗さが目につく。でも、そんなことはさておきたくなる位に、良い。

登場人物は女子高生4人と女教師。たった5人しか出てこない。

8月のある日の学校。2年生のココロ(濱尾咲綺)、ミク(仲吉玲亜)は女教師の山本(さとうほなみ)から、体育の補習としてプール掃除を命じられる。

真夏のプールは水が抜かれ、隣のグラウンドで練習に励む野球部の放つ砂埃で汚れていた。果てなき掃除に真面目に取り組むミク。しかし、メイクとおしゃれにしか興味ないココロは文句たらたらで、サボってばかり。

そこに水泳部の部長チヅル(清田みくり)、3年生のユイ(花岡すみれ)も加わり、4人の会話が始まる。

自分の力の限界を感じ悔しさに身悶えする者。綺麗でいないと選ばれないという切迫感に苛まれる者。女になっていく身体を受け入れられない者。自分の甘さを理解し受け入れる虚しさを感じている者。

会話の中に見え隠れするそれぞれのキャラクターが、あるあるで秀逸。

あの頃に感じてた青年期ならではの閉塞感、更に女であることの窮屈さや戸惑い、余すことなく彼女たちの会話に表現されていた。

この空気感は当事者にしか書けないとしみじみ思う。しかしこれを高校生で書くって素晴らしい才能だ。

そして教師役のさとうほなみが良い。もともと女の嫌らしさみたいなものを演じさせたら凄くうまい。この役もそんな、どこにでもいそうな教師の葛藤がよく出てて良かった。これからも楽しみな女優である。

ということで、青さはあるものの観て損のない、群像劇であった。

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