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映画感想文「ベイビー・ブローカー」家族って何?は永遠のテーマ

母性というものに懐疑的だ。

子を持たぬ身でこんなこというのは恐縮だが、「母性」は母であること(あるべき?)に人を閉じ込めてまう。おまけに時に排他的だ。

だから韓国の歌姫IU(イ・ジウン)演じる若い母親が「一人では無理だった」と呻くように声を絞り出す姿に、胸をつかれた。そして「開く強さ」を感じた。

泣く泣く赤ちゃんポストに子供を置きざりにする若い女性。

母親に置き去りにされた過去から逃れらない元孤児。

父親らしくあろうと躍起になるが成功とは程遠く、空回りで家族も遠ざかっていってしまう中年男性。

「歩いても歩いても」「そして父になる」「海街diary」「万引き家族」と、新たな家族の在り方を模索し続けてきた是枝監督最新作。

登場人物の辿ってきた背景と心情に焦点をあてたロードムービーで、さしたる大事件は起きない。その代わりにじっくりと、疑似家族それぞれの心の機微が描かれる。

母親だけでなく、家族だけでもなく、もっとみんなで子供を育てようという共助の精神にとても賛同する。

また「生まれてきて良かった」と誰もが思える後半のシーンが、こそばゆい。

それぞれの答えを探しながら観ると尚よし。

誠実な映画で好き。地味だけどおすすめ。

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