映画感想文「12日の殺人」実際の事件を元にしたフランス映画。マッチョはなぜなくならないのか
フランスで実際に起きた未解決事件を元にした作品。
山の麓の小さな街、グルノーブルで焼死体が見つかった。殺されたのは、美人で賢くて気立の良い21歳の女の子。
彼女は誰になぜ殺されたのか?
異常な殺され方から、怨恨の線で捜査は行われる。そこで次々と明らかになる彼女の多彩な交友関係。「もの分かりのいい子だった」「ただ寝ただけの相手だった」と語る男達のセリフ。
こういう女性蔑視が(女性だけではない。弱いものに対して向かう征服欲が)結局は暴力に繋がっていくのだとしみじみと感じる。
そして被害者であるはずの彼女に対し向けられる「こうなっても仕方ない女の子だった」みたいな空気。その悪気なき決めつけが、胸を抉られるようでいたたまれない。
さらに、男ばかりのマッチョな警察の捜査チーム。彼らもまた無意識に彼女を軽視する。なにしろ悪気なくビール片手に語られる男同士の話題は女性蔑視に満ちているのだ。
彼らも彼らなりに悩みを抱えている。それはわかる。大変な仕事でもある。
それでもそういうマッチョさが彼ら自身をもより追い詰めている。なのに気付かず、そのループからなかなか抜け出せない。
愚かで悲しいことだ。
ハリウッド映画のように分かりやすい悪人はいない。だからモヤモヤする。それでも、実際にはそんなに現実は分かりやすくはないのだから、こっちのほうがリアルだ。
そしてモヤモヤの中、微かに明るさの見えるラスト。そこに希望の光が見える。
もう少しテーマを絞ったらもっと良くなったのに、少し拡散気味の感じはある。それでも、大切なことを訴えかけてる映画なことは確かだ。
それぞれが考えてね的な終わり方。これがフランス映画らしくて個人的には好みである。
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