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やまとやじろべえ
2024年5月30日 07:30
愛をする人 奥さんの一周忌をした。 主寺で読経をして貰い、墓所へ参り、会食会場へ向かい食事。 そこで義父の妹さん、叔母さん夫婦に「御相談があります。近いうちにお伺いして良いですか?」と尋ねた。 『良いけど、、、実家の事なら任せたからね。勝手に処分したらダメだからね。いつ帰っても良い様にしていて頂戴。』 【どうしろって言うんだ、、、、俺は単なる管理人かよ。しかも無報酬の、、、、】 また
2024年5月28日 07:30
もしかして 「なあ亜希子、、、俺がもしこの街にずっと住んでたら、、、お前と一緒になってたのかな」 「えっ、私と健夫が?、、、あんたも婿だったっけね。あの人じゃなく健夫だったとしたらか、、、」 「うん、偶然か、、、必然だったのか分かんないど、俺は奥さんの苗字にした。その前にお前が俺の傍に居たら、、、亜希子の家に入ってたかもしれないなって思う事があるんだ。」 「……無いね。多分、、、いや絶
2024年5月23日 07:30
答え合わせ それから亜希子とは2、3週間に一度会う。 いつもの公園駐車場だったり、ショッピングモールの立体駐車場で待ち合わせ、あのホテルへと車を走らせる。 食事でもしようか、直売所へ寄ろうか、映画でも行こうかと誘うも、「よっぽど遠くに行くなら良いけど、地元の人の生活圏ならやめておこ。」と言われ、コンビニで飲み物や食料を買う。、 「お互いに、人目を憚る事はもう無いんだけどね。他人を監視す
2024年5月21日 07:30
男と女の初めての夜 奥さんの葬儀の翌日、俺は葬儀屋への支払いや市役所、奥さん名義の口座の名義変更の為の書類を貰う為郵便局や銀行などを回った。 娘は今日一日休み、明日帰ると言う。夕食は最近嵌っているチャンポンを作るからと、俺の車の助手席に座りスーパーへ買い出しに付き合わされた。 夕方、娘が夕食の支度をしている間、奥さんの通帳を見た。 生活費などは、俺の給与振り込み指定の銀行口座があるので
2024年5月16日 07:30
別れ 引き寄せられる心 亜希子との初デートからはラインの交換も2,3日おき程度になった。 双方に気まずさが残ったせいなのか、これ以上の進展は望まないと言う表れなのか俺自身も分からない。ましてや亜希子の思いなど俺には分からない。 2週間位経った頃、夕方のネットスーパー配達の途中、携帯電話が着信を知らせた。 車を路肩に停め通知画面を見ると、登録していない携帯番号の表示。 俺は、勤務し
2024年5月14日 07:30
告白 思いの丈 無心庵でそばを食べた俺と亜希子は、近くにある滝の名所へ向かった。 滝を見たがる人の事を亜希子はこう評していた。 「滝って、マイナスイオンが出てて傍に居る人の心を落ち着かせるんだって、、、、悩んでるとか心がザワザワしてる時には冷静になれるから、良いんだって。 それにさ、、、、流れてきたもの、全部落としてるじゃん、、、、嫌な事、捨ててる様に見えるじゃん、、、自分に出来ない事
2024年5月9日 07:30
初めてのデート ライン交換した俺はその夜、逸る気持ちと相手は家庭のある身で誤解を与えてはいけないと言う自制とで、なかなか文字を打つことが出来なかった。 ようやく送ることが出来たのが、 ” 今日はありがとうございます。 また機会があれば、よろしくお願いします ” 家族がポップアップ通知を覗いても、出来るだけ不信感を抱かない様に、営業マンの様な文面で送った。 ポンっ、という通知音が
2024年5月7日 07:30
再開の後、手繰り寄せられた糸 同窓会の後、亜希子とは連絡を取り合ったりはしていない。 自宅の電話番号は覚えている。連絡しようと思えばいつでもできる。 それよりも、亜希子が俺を責めていない、怒っていない、嫌っていなんかいないと思える笑顔を向けてくれたのが嬉しくて仕方ない。 と同時にみんなの手前、嫌いな素振りは見せないでその場を取り繕い、本当は恨んでいるんじゃないかと思ってしまう事がある。
2024年5月2日 05:00
亜希子との再会 奥さんを、今住んでいる町の市民病院へ入院させた。 奥さんの両親も同じ病気で亡くなっている。 「遺伝だね、、、しょうがないね、、、後、頼んだわよ。」 奥さんは落ち着いた声で、俺を牽制した。 【実家にある家屋敷、田畑、山林、人に貸している土地、、、娘の名義にしておけ、、、、それしか無いってか。】 娘に連絡した。 「ママを入院させた。爺さんと婆さんと同じ病気だ。いつ迄か
2024年4月30日 05:00
18の春 高校生活も、残すは卒業式のみとなる頃になっていた。クラスの同級生らは6割方就職し、3割が専門学校、1割が大学へ進学するらしい。 俺は遠く離れた専門学校へ進む事にしていた。大学に行きたかったのだが、実家の経済事情と当人の学力面から熟慮の上、専門学校とした。 新たなる希望への旅立ちなのだが、気掛かりが一つだけ残る。それは亜希子の事。 何してやれていない。励ましてもいない。喜んでも
2024年4月25日 07:30
真夏の一夜が、あっという間に明けた30数年前。 世界で一番暑い夏の朝、今から面接へ向かう亜希子に伴い俺は、大通りのバス停へと歩いた。 まだ朝靄が漂っていそうな時間でも、すでに汗ばむ程気温は上がっている。 その中を競輪場へと向かう大勢の男たちの流れに逆らう様に歩く二人。 シャッターの閉まった商店前には、今日のレースの勝敗予想を記入したメモ紙を売るおじさんや、競輪新聞へ赤鉛筆で丸を記入し、
2024年4月23日 07:30
中学2年の頃、、、 「良いよね。ギター、、、弾ける人、カッコイイよね。」 本屋で偶然に会った亜希子からの一言で、俺は音楽教室へ通う事にした。週に一回、木曜日の6時30分からの30分。 ショッピングモールの一角にその教室はあり、ギターを持っていない人には貸してくれる。 何回か通った後、その音楽教室を主宰している楽器屋から購入すると、年一回の発表会へ参加できる特典が付いてくる。 得なのか
2024年4月16日 07:30
愛をする人 目の前にいる亜希子がどうしようもなく愛おしくなっている。 再び会えるまでの想像中の亜希子、この腕の中にいる現実の亜希子、、、どちらも俺にとっては大切な存在。 【最後に愛する人、、、亜希子。】 すっかり冬模様となって街中が賑やかになってきた頃の、いつものホテルの一室。 亜希子と30数年ぶりに再開し、その間ずっと抱き続けていた思いを打ち明け、今の関係になって1年半が経つ。