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自分の書き口が見えてくる

 こんにちは、亀山真一です。
 昔の課題シナリオの6つ目、お題は「ラブシーン」僕の得意分野ですね。こいつは出来が良かったのか講義で取り上げられ、みんなの前で音読した記憶があります。しかもこの授業、入院休学明けの僕だけ半年遅れでみんなと違うお題で取り組んでいたにも関わらず、です。

 そしてその数年後、物書き学校のラジオドラマの講義で、クラスで一番良かったと褒めてもらえた作品がこちらというのはやはり得意分野だったんだなと思います。


『先生の餌付け』

竹中梨紗子(18)高校生
三坂務(29)教師

〇学校の屋上(昼)
   昼休み、入口の扉脇で竹中梨紗子(18)が弁当を広げている。
   扉が開いて三坂務(29)が現れる。
務「竹中、ここは一般生徒は入っちゃいかんのだぞ」
梨紗子「知ってますけど。あ、先生も食べます?」
   梨紗子は別に用意していた弁当箱を差し出す。務は促されて座る。
務「まるで餌付けだな」
梨紗子「ですね」
   弁当を食べ始める務。
務「これ本当に竹中が作ってるのか?」
梨紗子「作ってますよ」
務「うますぎるだろ」
   梨紗子は微笑む。務は食べ終えると一息ついて、
務「明日もここで食う気か」
梨紗子「はい、まあ」
務「じゃあ、俺は明日も来なきゃならんのか」
梨紗子「別に先生に来てほしいなんて言ってませんよ」
務「いや、屋上は立ち入り禁止」
梨紗子「追い出さないくせに」
務「言ったな」
   務は弁当箱を梨紗子に押し付ける。
務「ほら」
   梨紗子を連れ出す。扉が閉まる。

〇学校の屋上(夕)
   一人佇んでいる務。そこに梨紗子が現れる。
梨紗子「先生、何してるの?」
務「何って……ん?」
梨紗子「先生なら勝手に入っていいわけじゃないでしょう」
務「んー。今日は、昼来なかったな」
梨紗子「あー、理科の戸部先生に呼ばれたから。何、待ってたの?」
務「いや」
   二人とも黙り込み、空や校庭を眺めている。
梨紗子「意地っ張り」
務「どっちが」
   ふいに務が梨紗子の腕を掴んで引き寄せる。驚いて身構える梨紗子。
務「ちゃんと昼飯食ったか? 食えてないなら、どこか行く?」
梨紗子「……もう」
   どこか嬉しそうな表情で、梨紗子と務は屋上をあとにする。

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