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書きたいものが見えないと

 こんにちは、亀山真一です。
 近頃は新刊のお知らせがとっても忙しかったのですが、夏からバンバン投稿していた昔の課題シナリオシリーズに戻ってみます。第9作目の「和解」から。

 こうして読み返してみると、何も考えずにサクサクと書いてしまった感があります。それができるスポーツが高校野球だということでもありますかね。
 当時の僕が楽しかったのならそれで十分……ということにしておきましょう。


『ラストボール』

藤川竜実(18)高校生
丹下綾人(18)高校生

〇野球グラウンド(昼)
   高校野球の地区大会、二死満塁の場面でマウンドには丹下綾人(18)が立っている。捕手の藤川竜実(18)のサインを見て綾人は頷き、投球する。バッターのスイング。カーンと音が響く。

〇教室(夕)
   竜実の他は誰もいない。窓から校庭を眺めている。そこに綾人が現れる。
綾人「まだ、残ってたんだ」
   竜実は外から目を逸らさずに頷く。
竜実「うん」
   綾人が近づいていき、一緒に外を覗く。校庭では野球部が練習をしている。
竜実「もし……」
綾人「もし?」
竜実「……ごめん。俺の方が引きずるって格好悪いよな」
綾人「いいとか悪いとかじゃないだろう」
竜実「でも、あそこで押さえてたら甲子園に行けたんだ。俺がお前を信じられたら」
綾人「直球勝負をしていたら? どっちにしろ打たれたさ」
竜実「そんなこと」
綾人「あの日、俺の球は走ってなかった。俺の球を捕ってたお前が一番それを感じてた。だから変化球でカウントを取りにいくのは当然の判断だった。違うか?」
   竜実は答えない。
綾人「それより竜実、勉強頑張れよ。俺は大学行っても野球を続ける。でも、お前が捕ってくれなきゃ」
竜実「ああ」
   竜実は綾人の方を振り返る。
竜実「綾人」
綾人「ん?」
竜実「グローブ持ってる?」

〇校舎裏
   軽くキャッチボールをしている竜実と綾人。ボールを投げながら、
綾人「なんか久しぶりだな」
竜実「じゃ、思い切り頼む」
   しゃがんで構える竜実。
綾人「ああ」
   綾人が渾身のストレートを投げる。バシッと、ボールがミットに収まる音が響く。

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