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すっきりなんかしてないさ

 こんにちは、亀山真一です。
 すっかり更新しそびれていた昔の課題シナリオ12作目、ラストのお題は「再会」です。否、本当はもう1本書いたはずなんですが、最後の講義で提出した脚本には返却の機会がなかったんですよね。

 さて、20歳の僕にとって20歳の若者の肩書といえば大学生でした。けれどちょうどその頃、2つ年下の弟が大学なんか行けないし行きたくないと母とケンカし、専門学校へ行くことになりました。僕の高校の同級生は九分九厘進学したけれど、成人式で再会した小学校の同級生だと20歳で働いている人も結婚した人もいると知ります。
 というわけで、立場の異なる20歳を揃えてみたかったんですが、いかんせんバイトすらしたことのない大学生だったので詳しいことは書けずにこんな形になりました。

 もともとは手紙の内容に全く触れていなかったところを、あまり長さを変えることなくちょっとでも触れようと試行錯誤したところで、昔の課題シナリオシリーズは終了となります。
(尺が欲しいならもはや最初のシーンを全カットしても良かったのでは……と、思い始めたけれどもリライトがすぎるので残してあります)

『未来の私へ』

立波亮也(10)小学生
    (20)大学生
厚木優輝(10)小学生
    (20)フリーター
弓部奈緒子(10)小学生
    (20)会社員

〇小学校、校舎裏(夕)
   敷地隅の木の根元に立波亮也(10)と厚木優輝(10)が穴を掘っている。弓部奈緒子(10)が菓子の空き缶のタイムカプセルを抱えて立っている。
亮也「よし、できたぞ」
   奈緒子が空き缶を穴に入れ、三人でその穴を埋める。
優輝「十年経ったら開けるんだな」
奈緒子「うん」
   埋めた穴を見つめる三人。

〇コンビニ、店内(昼)
   優輝(20)がレジに立っている。ポケットに入れていたケータイが鳴り、隣のレジのスタッフに慌てて頭を下げる。
優輝「すみません」
   こそこそと確認した画面に映っていた名前は「立波亮也」

〇オフィス
   奈緒子(20)が仕事の手を止め、メール文を読んでいる。
亮也(声)「久しぶり。突然だけど、タイムカプセルのこと覚えてる? 明日でちょうど十年! 学校の方には俺が連絡入れておくから週末掘り起こしに行かない?」
   ケータイをしまい、眉をひそめる。
奈緒子「タイムカプセル……?」

〇校舎裏(昼)
   亮也(20)がシャベルを担いでいる。そこへ優輝と奈緒子が現れる。
亮也「目印なくなっちゃったけどさ、ここに埋めたはずだよな」
   亮也が指さした先の木がなくなっている。
優輝「ああ、そんな気はするけど……俺、タイムカプセルとかすっかり忘れてたわ」
奈緒子「あたしも。何入れたんだっけ?」
   亮也がさくさくと掘り始める。
亮也「未来の自分に宛てた手紙だよ。俺もぼんやりとしか覚えてないけど、確かサッカー選手になれる前提で書いた気がする」
優輝「なるほど。(亮也を手伝う手を止めて)……あ! 俺の手紙、ほぼほぼ奈緒子へのラブレターだったわ」
奈緒子「え?」
亮也「さらりとすごいことを」
優輝「まあ小学生の時の話だし(飄々と笑っている)」
   掘り進める二人。しかしタイムカプセルは出てこない。
奈緒子「ホントにここだった?」
亮也「おかしいな」
優輝「そもそも木がなくなってるんだろ。タイムカプセルがなくても仕方ないとは思うけど」
奈緒子「そっか、そうだね」
   穴を見つめる三人。

〇奈緒子の部屋(夜)
   奈央子が汚れた空き缶、つまりはタイムカプセルを手にしている。
奈緒子「危なかった」
   自分の書いた手紙を缶から取り出す。ちらと目を落としたそれはラブレターのように見えるが、すぐさま破り捨てられてしまい真相はゴミ箱の中。


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