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枚数とシーン数

 こんにちは、亀山真一です。
 昔の課題シナリオ8作目、お題は「告白」でした。19歳か20歳の僕は幼馴染によるストレートなプロポーズを書こうとして、ちょっと勿体ない原稿用紙の使い方をしました。柱とト書きが多いせいで内容が薄くなってしまったのです。

 ちなみに数年後、物書き学校の課題で同じ「告白」のお題を原稿用紙2枚で書きました。オムニバス脚本『ちいさな世界』のシーン1「広田家の日常」がそれにあたります。このオムニバスは別々に書いた短編の寄せ集めなのですが、それぞれの短編が「一幕劇を」と思って書いているところがミソです。
 演劇をやっていると場面転換が大変なのでちゃんと気を使いますが、映像脚本でもバランスは大事だなと読み返して思いました。


『大きくなったら』

市橋輝(24)大学院生
   (5)保育園児
二条要(24)会社員
   (5)保育園児

〇公園(昼)
   砂場のへりに腰掛けている市橋輝(5)と二条要(5)が手を繋いでいる。
輝「僕、大きくなったら要ちゃんと結婚する」
要「あたし、大きくなったら輝ちゃんのお嫁さんになるの」
   笑い合う二人。

〇輝の部屋(夜)
   アパートの一室で輝(24)が机に向かっている。しかし、勉強が全く手に付かない。
輝「大きくなったらって……俺はまだ学生なんだよ」
   輝のケータイが鳴る。着信画面には「二条要」の文字。
輝「もしもし」

〇二条家、要の部屋
   電話中の要(24)椅子にきちんと腰掛け、指輪の入ったケースと対峙している。
要「もしもし、輝くん。あの」

〇輝の部屋
   電話中の輝。
輝「何? 今、勉強中なんだけど」
要(声)「あ、そうかごめん。大変だね、院生は」
輝「別に。社会人やってる二条の方がすげえなって俺は思うけど」
要(声)「そう? じゃなくて、その……実は今日ね、彼氏からその、プロポーズされたっていうか」
輝「良かったじゃん」
要(声)「いいのかな? 受けても」
輝「俺に聞くなよ。二条の問題だろう」
要(声)「そうだけど」
   電話の声が途切れる。輝は溜め息をついて、
輝「ごめんな」
要(声)「え?」
輝「大きくなったらって、ずっと思ってたけど。俺、もう二十四だけどまだ大学院生で、大人じゃなくて」
要(声)「輝くん、約束覚えてくれてたの?」
輝「そりゃ、もちろん。だから」
   輝は深呼吸。
輝「俺、やっぱり要ちゃんが好きだ。俺が大人になるまで、もう少しだけ待っててください」
要(声)「うん!」


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