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大阪府の吉村洋文知事は1月4日、石川県での巨大地震を受けて大阪・関西万博を縮小または延期することを否定。府庁で記者団に「二者択一の関係ではない。万博があるから(復興の)費用が削減されるものではない」と発言しました。


北陸地方での地震における被害はの甚大さは、すでに各メディアによって報じられている通りです。特に能登半島は、広い面積に山間部が多く、その中に集落が点在している状況のようです。行政機関自身も被災しており、被害状況の把握や、救助部隊の到着が難航しているのは、こうした事情があるように思います。一刻の猶予もありません。

さて、現在は人命救助に全力を上げるフェーズですが、やがてすぐに、生活インフラの再建が必要になります。建物、道路、上下水道やガス管も造り直さなければならない。液状化現象による被害も広範囲で多発しており、資機材とマンパワーが今後ますます必要となります。


国際カジノ研究所の木曽崇所長も指摘しているように、こうした資機材とマンパワーは大阪・夢洲の万博会場に集まっています。リソースは有限であり、優先順位を考えれば、北陸の被災者の生活再建にこれらを割くべきであることは言うまでもありません。


なお大阪市の万博・IRの工事の進捗の計画を示した表によれば、2023年から24年にかけて、今まさに、夢洲の北側のIR計画エリアにおいて、上下水道やガス管の工事をやっている最中なんですね。その他、夢洲全体にわたるインフラ工事も進行中です。

もし万博を延期すれば、2030年秋頃とされるIRの開業がさらに遅れる恐れがあります。万博の準備のための工事期間が長引くことや、開催期間中の会場へのアクセス道路確保のため、IRの工事を一時中止または縮小しないといけなるためです。

IRの開業が遅れれば遅れるほど、米MGMやオリックスなどのIR事業者は、投資回収が遅れます。ビジネスとしてのうまみが減じるため、今後の計画にますます二の足を踏むことでしょう。すでに、大阪府市に圧倒的に不利な解除条項を突きつけているくらいですから、彼らの撤退リスクがますます高まることになります。


維新の目玉政策である「大阪カジノ・IR計画」を是が非でも実現せんがために、海外パビリオンが少なかろうが、世論の賛同が得られまいが、被災地の復興に影響があろうが、万博は無理矢理にでも予定通り開催するーー。

大阪府市の行政を率いる人々が、よもや、そんな考えに凝り固まって身動きが取れなくなっているとは、私は考えたくありません。

困った時はお互い様。優先順位を考え、みんなで助け合うために限られたリソースを有効に活用する。そんなごく当たり前の政治を実現するための決断は、今すぐにでも可能です。