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【エッセイチャレンジ14】どうせ寝るなら岩盤浴。

30代も半ばになり、心身のコンディションにずれが生じやすくなったと感じている。

端的に言えば、身体は疲れているけど、心は元気という具合。これだけ聞けばさほど悪くないようだが、実は結構面倒。「寝たい」という肉体的欲求と「出かけたい」という精神的欲求が休みのたびに攻防を繰り広げてしまうのだ。
まるで昭和上司とマイペース部下の間に挟まれる中間管理職。妻と娘の喧嘩の仲裁をする夫。微妙にギスギスしている仲良しグループの一番気が弱い女の子。誰に味方しても不満が出る。
結局答えが出ないまま、流されるままテレビを見て時間を溶かす…ということも多い。


そんな問答を繰り返しているうちに、閃いたのだ。


そうだ、岩盤浴いこう。

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最後に岩盤浴に行ったのはいつだったか。コロナ前に行ったのが最後だから、3年ぶり。その前も6年ほど空いているはずだ。
しかし、一度足を踏み入れたらそんなブランクを感じさせないほど深く深く、ハマった。2週間空けずに再び足を運んだのである。


岩盤浴の魅力ってなんだろう。
まず単純に美容と健康に良いよね。特に夏は冷房ひえが深刻なので、マイナートラブルが増える。岩盤浴で芯から温まることで、ほとんど毎日悩んでいた腰痛や肩こりといったトラブルが改善した。
汗をかいたことで皮膚の老廃物が流れ出たのか、肌もトーンアップした。

次に、過ごし方が決まっていないということもマイペースな自分に合っていると感じる。
岩盤浴といえば、基本的には寝て過ごすが、私がよく行く施設は40度弱の低温房がある。本やスマホの持ち込みがOKなのだ。さまざまな形のクッションが置かれたその房では、みんなが楽な姿勢を保てるよう三角形や台形のそれらに脚を乗せたり、背中を預けたりして、受付でレンタルした漫画の一気読みに挑戦してたりする。
同じ空間にはいるが、各人が自分の世界に没頭し、あえて視線を交わさない。個人主義のようでいて、そこはかとない仲間意識に結ばれた、暗黙のルールを共有する者たちの織りなす空気が心地良いのだ。

コストパフォーマンスも高いよね。
施設にもよるけど、岩盤浴の利用料金はだいたい1500〜2000円ではないだろうか。スーパー銭湯の類だともっと安いかもしれない。
この金額で3時間過ごせるならば、カフェで1杯500円のコーヒー2杯で3時間粘るより、個人的には気楽だったりする。もちろんカフェの方が心惹かれる日もあるが、スッキリしたいときは岩盤浴に軍配が上がる。

***

以上の通り岩盤浴の魅力について熱く語ったが、こちとら生来の怠け者。疲れていると家の玄関から出るのも面倒なことがあるのだ。

だって、タオル用意しなきゃいけないでしょ、シャワー浴びるなら洗顔フォームとか化粧水とかも必要だ、ヘアゴムもいるな、飲み物は向こうで買おうかな、ロッカー用に小銭はあるかな、、、
あー、面倒臭い。

そんなときに心で呟くのがこちらのことわざ。「どうせ寝るなら岩盤浴」である。

【どうせ寝るなら岩盤浴】
家にいても寝るだけなら、岩盤浴で寝ようという意味。同じことをするなら、自分にとって心躍る環境に身を置きなさいという教え。

もちろん、というか当然、造語である。
でも、豊かに過ごすために大切な心構えをそれなりに言い当てていると私は思うのだ。

同じ仕事をするのであればブラック企業よりホワイト企業がいいし、食事をするなら愚痴っぽい人より朗らかな人とテーブルを囲みたい。
そもそも「選ぶ」という選択肢が自分に許されていると思わない人もいる。辛い環境に身を置き続けてしまうことが私にもあったから。

一歩踏み出すのは面倒だし勇気がいる。
だけど、どうせやらなきゃいけないことなら、幸福を感じられる場所でやりたいよね。

そんなことを思いつつ、自宅用岩盤浴マットについて調べる私は、やっぱり怠け者である。

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