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ザ・外遊(前)

昔から日本の多くのメディアは閣僚をはじめとする政治家たちが外国を訪問することを「外遊」と呼びます。
この表現が「遊んでいるような印象を与えるので不適切では?」という議論はメディアで断続的にあります。私もNHK時代に同僚とそういう話をしたのを記憶しています。

一方で、辞書をひくと「遊」には「遊び」以外の意味もあることが分かります。例えば…

「遊撃手」→野球のショートストップ。守備の要(かなめ)ですよね。
「遊軍記者」→特定の記者クラブに固定されず柔軟に取材してまわる記者。
「遊弋(ゆうよく)」→艦船が水上をあちこち動き回って敵に備えること。

これらに共通するのは機動性に富んでいることです。組織にはこうした役回りを担う存在が重要なことが見えてきます。

というわけで、今回は政治家たちの外遊について。


ゴールデンウイークは外遊のピーク

円安が止まらない状況とはいえ、やはりゴールデンウイークとなると海外旅行に出かける人は多いです。仕事を長く休めるのですから、当然ですよね。
政治家たちも同じです。
ゴールデンウイークに首相はじめ閣僚らが外国へと向かうのは恒例行事です。コロナ禍ではさすがにそうもいきませんでしたが、今年はかつてと同様、いやそれ以上です。
以下は時事通信の記事。

これによれば、今年のゴールデンウイークでは首相・閣僚の3分の2以上が日本を離れるとのこと。かなり多い印象です。

花の都(もう今は使わないですかね)パリへ

岸田首相の場合、5月1日から6日にかけてフランス、ブラジル、パラグアイを訪れます。なぜその3か国なのかについて、外務省の発表を引用します。
まずはフランスについて。

本年は、日本のOECD加盟60周年に当たり、岸田総理大臣は、フランスにおいて、日本が議長国を務めるOECD閣僚理事会に出席し、国際社会が直面する経済・社会分野の諸課題の解決に向けた議論を主導します。また、日仏首脳会談を実施し、二国間関係や国際情勢について意見交換を行う予定です。

https://www.mofa.go.jp/mofaj/ecm/oecd/pageit_000001_00559.html

OECD(経済協力開発機構)の本部はパリにあります。日本がOECD加盟して60年というのは私も知りませんでした。節目の年で、しかも日本が閣僚理事会の議長国を務めているということで、首相がフランスに行く名目としては成立しているといえそうです。

ですが…

普段、日本政府がどれだけOECDを重視しているのか疑問です

というのも、韓国では政府もメディアも何かにつけて「我が国は■の分野に関してはOECDで■位だ」というふうに自国のOECD(加盟38か国)内での順位や、OECD平均と比べて上か下か、という紹介をします。それによって、客観的に自国の課題をみつめるわけですね。

日本で、OECDを社会情勢や経済の評価基準とすることは、アカデミズムの世界では珍しくはないように思えますが、政府やメディアでは少ないのかなと。韓国より少ないことは確かです。

日本、とくに政府は、G7が大好きです。7か国しかないので経済などの評価基準とするには無理があるのですが、外交問題を中心に「G7の一員として~」と日本の「立ち位置」とでもいうべき姿勢を示します。
「G7で連帯して…」といったフレーズが頻繁に政府から発信されるわけですが、それは往々にしてアメリカ追従と同義です。

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